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アイドル六条とアマチュア正臣


仕事でミスを連発してしまったとある夜。
ソレは何でも耳障りに聞こえていた苛立った俺の耳にすんなりと侵入してきた。
力強く、凛としていてどこか危うさを秘めた歌声。
演奏として使われてるはずのギターの音すら素通りして俺の耳はその歌声だけを捉えていた。
足を止め、顔をあげれば俺とさほど変わらない……寧ろ年下であろう少年が元気よく楽しそうに歌っている姿が目に飛び込んできた。
金に近い茶髪を揺らし蜂蜜色の瞳を細めて、友人なのだろうか、何人かの同じ年頃の少年と楽しげに笑いながら歌っていた。
そこだけ街の喧騒を忘れたように楽しげな空気に包まれていて、そこを中心としてその楽しげな空気が広がっているようだった。

歌い終わり、少年が「ありがとう!」と俺と同じように足を止めて彼の声に聞き入っていたであろう人々にお礼の言葉を掛けていた。
沸き上がる拍手と掛けられる声。
楽しげに言葉を返し、友達に弄られ、弄る少年。
心底歌を楽しんでいて、歌で楽しませている。

同じ歌を食い物にするのに、彼と俺とではどうしてこんなにも違うのだろうか。
と、何故か柄にもないことを考えていた。

それが、俺ーー六条千景と少年ーー紀田正臣の出会いだった。







あきゅろす。
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