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ジュリリン11




「フ、ハ、アハハハハハハハハ!!!!!」

切られた啖呵。買われた喧嘩。
無条は一瞬目を丸くしたが、直ぐに高笑いと共に笑みに塗り替えられた。
腹を抱え身をよじり心底可笑しいと。
こいつは本当にそう思っているのかと。
自分にはその責がないのかと。
笑い、嘲笑い、冷笑い、失笑う。

「『売られた喧嘩』か、確かに売ったのはこっちだが原因を作ったのは誰だろうな?」

一頻り笑い終えると訝しむリンダに顔を寄せ、笑みを貼り付けたまま怒りのままに睨んだ。

「知ってるか?手前がジュリアを壊したんだ!色恋沙汰は当人の問題だと思うけどな、けど、手前がその引き金を引いたんだ。壊れかけていたあいつを壊した引き金を!」
「俺が、何をしたって、」

揺れる瞳、リンダは意味が分からないと無条を見つめ返すがその真っ直ぐさ、無自覚さが更に無条を苛立たせた。

「これは俺の我が儘だ。けど、思わずにはいられねぇんだ、手前がジュリアと出会わなければ!手前がジュリアをフラなかったら!!!」

起きた出来事にもしもなんて詮無きこと。
それでも願わずにはいられない。
もしも、あのときあぁではなかったら。
それが好いていた相手に起きたことなら尚更。

『もしも、リンダがジュリアをフラなかったら』
『もしも、ジュリアが惚れたのがリンダじゃなかったら』
『もしも、ジュリアとリンダが出会わなかったら』

無条の叫びにリンダは震える声で答えた。

「何、言ってんだ……?

そもそも、俺はジュリアをフッてなんかいない」



「はぁ?それはどういう」
「リンダ、見つけた!」

リンダの答えに納得いかないと詰め寄る無条だったが、一つの無邪気すぎる声がそれを止めた。
二人が揃ってその声の方を見ればバーテン服にマフラー、一つのメモを片手に男。
彼は無条のことなどお構い無しに底抜けに明るい笑顔を浮かべるとリンダの手を取った。

「リンダ、帰ろう!みんな待ってる」

彼こそ学人と六臂の言っていたお迎えーー『月島静雄』
ハッキングやプログラミングを得意とするサイケや学人ですら手出しの出来ない無条の作り出した空間に唯一侵入出来る来訪者。
月島はリンダの返答も聞かずに空間に穴を開けると自分達の箱庭へ空間を繋げた。

「あ、おい!話はまだーー」

我に返った無条が彼らを引き留めようと手を伸ばすが寸のところで月島とリンダを飲み込んだ穴は消え、そして繋がった先でリンダは目にする。

小高い音と共に目の前で頭を撃ち抜かれる最愛の弟。

「ぁ、、、」

倒れる瞬間合った目は果たして誰を映していたのか。

「ジュリア!!!!!!」

幸せそうに微笑むジュリアを抱きしめ、リンダの悲鳴が響き渡った。








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