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ジュリリン10


紙束を万年筆をしまい、歩き始めた灯也を見つめる影が2つ。
彼らはことが起こった広場とは少し離れた場所に家一つ分高い空間の中に潜んでおり、誰にも気づかれてはいない。

「ついに創作者まで動きましたね」
「いずれは動くだろうさ、彼もまた失恋者の虜だからさ」

灯也の行動を観察する少年は己の得意とするプログラミングで作り上げた狙撃銃を構えた。
少し視線をずらせば自分達の屍の中心に立つジュリアとルビ雄や会話を続けるサイケと雪人、それを静観するシャラ葉まで見え、彼がその気になればその場にいる全員狙撃が可能だ。
勿論、可能だけで済ますつもりはない。

「さて、問題は彼だけど……出てきたらすぐに仕留めてね、隠れられたらまた面倒だし」

この場に居ないプログラム。
一つは先程仲間の手でとあるフォルダーへ隠され、もう一つは己の意思で雲隠れをしている。
そして渡来者と呼ばれたプログラムはその名前の通り空間移動を得意とするため捕捉が難しい。
故に姿を現したら優先的に仕留めろと、青年は
注意を促した。

「? リンダは渡来者のもとですよね。撃っちゃっていいんですか?」
「問題ないさ。お迎えはもう出してある。ただ、時間は掛かるだろうけど」
「あぁ、月島さん方向音痴でしたね……」

気掛かりを口にした少年だが青年からの返答に納得すると狙撃銃のスコープを覗き直した。
その中心に捉える標的となるこの騒ぎの原因。
迷うことなく少年は引き金に手をかける。

この二人の一連の会話や行動はまるでこの出来事の全てを把握しているかのようで、何が原因で、そのためには何を成せばいいのか知っているかのようだ。

「ところでさ、学人くん」
「なんですか」
「どうしてリンダに弟のこと話したの?」

青年ーー『八面六臂』の質問に少年ーー『学園天国』は答えないまま口元に悲しげな笑みを浮かべ、
そして引き金を引いた。
狙撃銃の、そして終わりへの引き金を。

その一発で全てを終わらせるために。
自分の過ちを清算するためかのように。









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