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ジュリリン9

「さて、そろそろ閉幕かな」

灯也は語る。誰に聞かせるわけでもなく。
襤褸紙にこれまでの事を物語として書き綴り、これからを創造し、
灯也は現実を物語へと昇華する。


『実の兄に一目惚れをした少年は溢れだした想いをついに告白と言う形に吐き出しました。どんなに兄を好きなのか愛しているのか、自分の持てる限りの言葉を使って愛を囁きました。
しかし、フラれてしまったのです。兄弟だからというただそれだけの理由で。

そこで少年は一つの歪みを抱えました。これまで兄から受け取ってきた様々な情報がついにバグを生み出したのです。
元より彼と兄との間にはまだ互換性と言うものが出来ていなかったのです。
本来受け取れるはずのない視野・言語・接触などの様々な情報。会うだけで話すだけで触れるだけで生まれる様々な情報は受け取ったとしても正常に理解することは出来ない情報群。
兄を想う心で何とかして受け取ってきたそれはついには毒となり少年を蝕み始めたのです。
抱えきれない想いと言うエラーを抱え、少年は傷心に泣いていました。
めそめそと、しくしくと。
どうしたら兄に振り向いて貰えるだろうか。
どうしたら兄と一緒にいられるのだろうか。
どうしたら兄を自分だけのものに出来るだろうか。
兄の全てを手に入れられるだろうか。


そして彼は聞いたのです。

「世界に君と彼だけになれば、もしかしたら彼は君に振り向いてくれるかもね」

その声はなんだったのか。これまで出会った誰のものでもなく、しかしとある兄弟達にも酷似した声。
その姿はなく、声は空から降ってきます。

「だからさ、君の本気を彼に見せてあげなよ」

めそめそと泣いていた一つのプログラムはその瞳に狂気を宿し立ち上がりました。
その様子に姿なき声はにぃっと楽しげに笑うのです。 』



一頻り書き綴ると灯也はペンを置いた。

「この物語は如何にして始まったか。そして何処へ収束されていくのか。それは俺も知らないなぁ」

彼は書き綴るだけ。
起こった出来事を喜劇に悲劇に書き綴るだけ。

「でも、俺が作者だと誰が決めた?」

そう、これまでは。








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