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ジュリリン8


不自然に雪人の足元へ転がり込んできた頭部。
それはまるで意思を持っているかのように。
そしてそれは『意思を持っているかのよう』ではなく、ちゃんと『意思を持っている』ことに気付き、雪人は語りかけた。

「いつまで寝ているつもりですか。あなたたちの大切なお古の始末をちゃんとつけてください」
「寝ているとか酷いなぁ、君たちの我が儘王子様が俺達をこうしたんでしょ?」

そして帰ってきた声は勿論、足元の『顔』から。
壊れたはずの、ジュリアによって壊されたはずの『サイケデリック臨也』は無邪気に笑って見せた。
雪人は一度視線を落とすもすぐに眼前のジュリアへと戻し温度のない声音で答える。

「元を正せばリンダのせいでしょう」
「根拠は?」
「彼がルールを破り、手順を踏まずにジュリアに会ったこと」
「だからリンダのせいだと?」
「そう。だからジュリアは壊れた。リンダのせいで。まだ僕たちは貴方たちに会うべきではなかった。まだ会うには早すぎた。貴方たちから掛かる負荷が僕らを狂わせている。中古の癖にまだのうのうと稼働し続けて僕らのデータを圧迫し、負荷をかけていく。そもそも中古の貴方たちと僕らでは大元の造りが違う。貴方たちから送られるデータは僕らにはまだ対応出来ない。僕でそうなのに、ジュリアに掛かった負荷はもっと酷いものです。それに気付かずジュリアに会っていたリンダのせいでなくて誰のせいだと貴方は言うつもりですか」
「なるほど、君達にとって俺達の送信するデータは負荷がかかりすぎ、バグを生む。少々なものならまだ耐えられるレベルだが初期に接触したリンダのせいでジュリアに掛かった負荷やバグはそれを超えるものだった。だから処理しきれないバグのせいで狂い俺達を壊しに掛かったジュリアを救え、と君は言うのかい?」
「それが当たり前だと言っているのです」

なるほど、と雪人の言い分は分かったと、答えるようにサイケは頭部しかないにも関わらず頷くような動作をした。
そして、是とも否とも答えずサイケは一つの質問を唱えた。

「ところで、俺達のお姫様を何処に隠したの?」

その声は先程まで会話していた足元の頭部からではなく、雪人の後ろから。
雪人が睨むように振り返れば満面の笑みを浮かべた五体満足のサイケと目があった。
しかし微笑んでいるのは口元だけで、目も雰囲気もどこも笑ってはいない。
返答によっては襲いかかりそうな雰囲気のサイケに雪人は無邪気に笑った。

「さぁ?」








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