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「出会い?それは正に運命!」(臨正)
けも臣ver.にゃんこ









どこの街にも猫は居る。
この池袋でもその例外ではなく、住宅街へ入ると目に入る。
白、キジトラ、ブチ、ミケ、靴下を履いた様な柄だったり眉毛のような柄だったり。
何匹かで集まって猫会議でもしているのだろうか。
そこで俺は運命的な出会いをした。



     ♂♀



「あーあー、また逃げてる」
荒らされた室内にその犯人の気配はない。
何をひっかけ倒したのか小さな犯人の透明な足跡は先ほど俺が通って来た道、つまり玄関へ向かって次第に薄くなっていく。
鍵は閉めていたが扉の開閉の隙をついて逃げ出したのだろう。
もう何度目のことだろう。帰ると部屋は荒らされ本人は逃げた後、その犯人を回収に再び出かけることは。
ひとまず荒らされた部屋を簡単に片づけるべく散らばる紙類を拾い集める。
荒らされるといっても紙類は折り目こそついているが汚れや破れていることはない。
PC機器も無事だし何をしていいのか、駄目なのかの判別はついているようだ。
この些細な散らかしは野良からくるプライドの彼なりの反発なのだろう。
数か月前、瀕死の彼を拾うことになった俺への、



     ♂♀



簡単に言えば一目ぼれだった。

しなやかな身体。
すらりと細長い尾にぴんと張った大きな耳。
真っ黒いで茶色い目で俺を見るその表情は警戒。
人に媚びない孤高の気高さが見え隠れしていた。
野良猫というには毛づやもよく、綺麗だ。

その猫に惚れて俺は彼のことを調べ始めた。

人に媚びないと思った猫は公園で餌をやる老婆に身を許す様に触ることを許し、
繁華街のその裏路地では飲食店の女性店員に身体を摺り寄せ、残り物を頂戴し、
同じ猫の仲間から慕われているのか彼の周りには何匹の猫がいた。
このあたりのボス猫なのだろうか、喧嘩も負けなしでその度に彼の周りを行く猫の数が増えていく。

そんな彼を手に入れるべく俺はちょっと手を加えた。

まず、公園へ赴くと猫に餌をやる老婆に近づくとその作業を手伝い始めた。
少しずつ餌やりを引き受けそして老婆が来れなくなると作業を放棄する。
次に彼の行きつけの店を調べ上げ、そして保健所へ連絡する。
『店の裏で野良猫に餌をやっているみたいですが衛生面からみてどうなんでしょうか』
気付くとその店は姿を消していた。
必要以上に野良猫を増やさないように去勢避妊しているボランティアに猫の集まる場所を教え彼を慕う猫を減らしていく。

餌場を潰し、仲間を奪い、独りになった彼。
お腹を空かせ、路地裏で倒れる彼を俺は快く向かいいれた。



     ♂♀



彼が俺の家に来た経緯を思い出し、そっとこみ上げる笑みをかみ殺した。

俺が何をしたのかを彼はまだ知らない。
彼はただ野良だったプライドがこの狭い部屋に閉じ込められることを良しとせずに些かな抵抗をして逃げ出しているだけだ。
もし俺が彼を手に入れるためにしたことを知ったとき、彼はどんな反応をしてくれるだろうか。

「あぁ、楽しみだなぁ」

一通り片づけを済ますと俺は彼を迎えに行くべく部屋を出た。



「将君はどこにいるかな」






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あきゅろす。
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