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ジュリリン5


男がその光景を目の当たりにしたのは決して偶然ではなかった。
赤いエフェクトはまるで血のように霧散し、腕や足だけと四肢が転がり、胴には穴が空いているモノまで。破損し今にも消えかかっているプログラム。
それは一つ二つではない。
そして倒れている顔は親しくはないものの見覚えのあるものばかりで、その損傷は誰の目にも『破壊された』ことが伺える。

「何が……起こってんだ……?」

彼がここに辿り着いたのは偶然だが、この光景を目の当たりにしたのは偶然ではない。
予め何かあるとは予想し、ソレが何かを確かめるため奔走しているなかに見つけた光景。
数十分前に彼に語る「こんなところで油を売っていていいの?楽しい祭りの始まりだよ」と言う男の声が、ここに導いたのだ。
交流こそは殆どないが、同じ顔の天敵の兄、『八面六臂』からの言葉。
しかしはじめからそうプログラムされているのかのように彼は六臂の言葉に嫌悪感と嫌な予感を覚え、その言葉を無視も笑い飛ばすことも出来ずに知人達を訪ね歩いた結果がこれだった。

広がる破壊痕。そこにある顔は知人達の兄姉やその友人のもの。
そしてその中心に立って笑うのは、

「ジュリア……手前、何してんだ」

片想いに等しい恋慕を向ける相手。
呟きに気付いたジュリアは彼のものへ満面の笑みを浮かべて近付いた。

「アのね、あノ人がこウスればお兄チゃんはオれのものダって!オれだけのモノにナるって教エてくれたんダ!」

無邪気に、幼子のように語るジュリア。
彼ーー『ルビーの指輪』は嬉しそうに語るジュリアの頭を撫でるとにぃっと口端を吊り上げた。

「そうカ、なら俺モ手伝ッてやルよ」







あきゅろす。
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