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ショタみかまさとおにいちゃん六条





これは過去の物語。
とある出会いの物語。



          ♂♀



壁がある。
少年の前に立ちはだかる壁。
そうとしか言いようのない壁に彼は囲まれていた。

小学生でも低学年に位置する彼にとって自分の目の前に居る上級生はもはや壁と言っても差支えがない。
逃がさないと言う様に囲まれ、下級生の少年ーー帝人はただただ困った様に怯えたように身を縮こまらせていた。

「いいもんもっているじゃねーか、俺達にも貸してくれよ」
「少し借りるだけだって」
「そうそう、すぐ返すって」

ガキ大将じみた典型的なセリフをする上級生たち。
彼らは帝人の持つ携帯ゲーム機に目を付けたようだ。
友人とこの公園ですれ違い通信をしながら協力プレイで遊ぼうとして、その友人を待つ間少し一人プレイをしようしていたのだが、丁度時を同じくして入ってきた上級生たちにそれを見止められてしまったようだ。
カツアゲと言うには優しいものだが、幼い少年にはさして変わらない。
ゲーム機をよこせと迫る手に帝人は「嫌だ」と否を唱えるも上級生たちが聞くはずもない。
ついに伸びてきた手に帝人はゲーム機を取られまいと抱える様に身を丸めた。
奪おうと襲ってくるであろう手に恐怖し、しかし奪わせないと身構えていた帝人だったがそのような衝撃はいつまで経っても来ない。
このあたりで有名ないじめっ子たちなので手を出さないなどと言うことはありえない。
帝人はどうしたのだろうかと丸めていた身を起こし、恐る恐ると上級生たちの方を見やれば自分を守る様に向けられた背中を見つけた。
遊ぶ約束をしていた友人が到着して守ってくれたのだろうか。一瞬そう思い安心しかけた帝人だが、上級生たちに話しかけている声が聞き慣れたものではないことに気付き、再び身を固くした。

「はい、ストーップ。男を進んで助ける趣味はないけどさ、けど大勢で一人をぶちのめすってかっこ悪いよな」
「何だよ手前」
「お前には用ないんだよ」
「ん?だたの通りすがり。だけどこのまま見て見ぬふりして見過ごすのもかっこ悪ぃだろ」

知らない背中、知らない声。しかしわかるのは自分を助けようとしてくれていること。
どうしたらいいのか分からずおろおろと様子を伺っていたがそのうち上級生たちが助けに入った少年に殴り掛かった。
しかし簡単にあしらわれ、返り討ちに遭っていた。
いつも力任せに暴れていたのだろう、敵わないと見るや否や上級生たちは「覚えてろよー!」と古典的なすて捨て台詞を残して去って行った。

「大丈夫か?」

向き直る少年はやはり見覚えがない。
年頃は自分より少し上のようだが学校でも見たことがないので他の地区の子どもなのかもしれない。
ちゃんとお礼を言わなければと、姿勢を正し、少年の方を見つめる帝人だったがその大きな瞳からはぽろりと涙が零れた。
怖かったからか、それとも安心したから、帝人の瞳からはぽろぽろと涙が溢れ始めた。

「え、あ、その」

自分でも訳が分からず、戸惑う帝人に少年は安心させるように笑みを浮かべて頭を撫でてくる。
「どこか痛むか」とか「家まで送るか?」とかあまり年も違わぬはずなのに気遣う言葉に帝人は大丈夫だと首を左右に振る。
暫くそうしていた二人だが、突如少年の背中に衝撃が走った。
先程の上級生達が早速仕返しに来たのだろうか。
少年は睨むように振り返るとそこに居たのはまた別の少年。

「アンタ、何帝人を泣かせてんだよ!」
「ま、正臣……!」
「…………知り合い?」
「友人です」

きりっと怖気もせずに少年を睨む友人の姿に帝人はいつの間にか涙も引っ込んでいた。
少年から引き離すように帝人の前に立つ正臣はまるで先ほどの光景の再現のようで、そして勘違いをしている。
それに気付いた帝人は慌てて友人の誤解を解きにかかり、中々信じてくれない正臣に何とか勘違いを解いた頃にはその少年は姿を消していた。




          ♂♀



それから数年後。
高校生になった帝人は再び絡まれていた。
池袋に越してきて数か月。そろそろ街にも慣れてきたと思った矢先のカツアゲである。
どうやって切り抜けようかと思っているといつかを思い出すセリフが飛んできた。

「あーカツアゲとかだせぇことやってんなよ」

カジュアルな服装でスローハットをかぶる青年。彼の周りには何人かの女性がたっている。



このあとまるで再現かと思うぐらいにいつかと同じ結果をたどるのだった。








あきゅろす。
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