ろっちーえろっちーばかろっちー 適度に日に焼けた引き締まった身体。 無駄なく筋肉のついた身体に浮かぶ汗とも水ともつかないソレが身体を動かす度に肌を滴り落ちる様子は連想の波紋を投じる。 その波紋が広がらない様にと視線を上げればしんなりと水で湿った灰青の髪が先に雫を作り、髪を煌めく姿に目を奪われる。 普段はさらりと滑らかな髪は湿り気でその柔らかさを半減させつつも、美しさは一時も失わない。 煌めく髪先に溜まる雫は自らの重量を支えきれなくなると一滴となり肌を滑る。 思わず視線でその様子を追えばその道すがらの頬で視線が止まった。 暑さなのか別の理由なのか紅葉する頬に浮かぶ水滴は再び追いやったはずの波紋を起こし、心を乱した。 煩い心音が鳴り響くにも関わらず聴覚は微かな吐息を拾いいよいよ平常心が破られようとした時、その見つめていた相手から声を掛けられる。 「正臣、」 強さを優しさを揺るぎ無さを秘めた黒緑色はやっと俺を映し捉え、低く甘い声で名前を呼ぶ。 水音を立てながら移動してくる千景さんは俺の顔を覗き込むように少し屈み、そして長く細くも儚さより力強さを感じる指を俺の髪に絡めた。 「顔真っ赤だぞ、逆上せたか?」 「平気…で、す」 心配げに曇った顔はすぐに安心した優しげな笑みに変わり、髪を弄っていた指が惜しげもなく離れていく。 名残惜しげにそのあとを追うと千景さんの自信満々で心強い笑みが映る。 「んじゃぁ、桃源郷探索続けるぞ」 そして幻想は無に還り砕け散る。 目の前に映るのは壁一枚隔てた向こうにある桃源郷基女風呂を覗こうとするバカ一名。 「…千景さんのえろっちー!」 そんな罵声を後に俺は浴槽から飛び出すと浴室を後にした。 「…ばーか」 だからか、最後に小さく呟いた彼の言葉の意味が分からないどころかその内容さえ俺は知らない。 |