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どうも、珍客です(静正)
※静雄さんとまさにゃんこのお話。正臣はにゃんこ。




見つめ合う一人と一匹。
一人と一匹の時が止まったように微動だにしない。
見つめ合ったままの一人と一匹。

ここは静雄の部屋。
仕事が終わり一日の疲れを癒す為に帰宅した静雄が目にしたものは部屋の中で静雄を見て固まる一匹の子猫。
どうやら閉め忘れた窓から侵入したらしいまだ一歳にも満たないであろう子猫は驚きで尻尾を膨らませながら硬直していた。
目は見開かれ、さしずめ悪戯が見つかった子供のようで、そんな子猫を見てまず静雄が思ったのは侵入してきた怒りよりも猫でも表情が分かるんだという関心だった。
ドアを開けたままで停止する静雄。
部屋でゴミ箱を漁る格好で硬直する子猫。
両者、一歩も…身じろぎ一つすらない。
この静寂を破ったのはピッピッピッという電子音。
静雄の携帯の着信を知らせる電子音だったのだが、そんなこと知る由もない子猫は今まで硬直していた分の緊張が解かれた様にパニックに陥り暴れだした。
自分でもどこに行こうとしているのか分からない考えていないようで、ただ一直線に走っては壁にぶつけ、くらりとよろめきながら進行方向を変えまた壁に頭をぶつけている。
その途中でゴミ箱をぶちまけ、畳んであった洗濯物に足跡をつけ、目覚ましを飛ばし…部屋の中が荒らされていく。
数瞬遅れて静雄が状況を理解したときには子猫は暴れまわり部屋は悲惨な状況になっていた。
「あ、何してやがる!!!」
そう静雄が怒鳴りを転機に子猫のパニックは最高潮を迎え、入ってきた窓から逃げていくことも忘れて子猫は隠れる場所として数センチ開いていた押入れへと逃げ込んだ。
静雄は逃げ道として玄関のドアをほんの少し開けたまま部屋へと上がり、押入れへと近づく。
その気配がわかるのか中からはガタッ、ゴトッと子猫が怯えている気配が伝わってくる。
なんだか虐めているみたいだと罪悪感を覚えながらも静雄は子猫を追い出すために押入れの戸を開けた。
モノが溢れる押入れ、開けただけでは子猫のいる場所は当然分からない。
立てる物音を頼りにモノをどけていくがどう移動しているのか右側で物音がしたのでそこのモノを移動させていると今度は左側で物音がする。逆に左側のモノを移動させていると右側で…と一向に見付けれそうにない。
そしてもともと気の短い静雄はそんなちまちました作業に限界を迎え、押し入れの戸を外し一気に中のモノを掻き出した。
押入れ内のモノが外へ掻き出され子猫の隠れる場所もなくなっていく。
段ボールを移動させ、ついにその子猫の姿が見えた。
小さな体を端へ端へと寄せ、壁にぶつかっても後ずさりできないかともがいて怯えるその姿。
小さな瞳が静雄を捉え、小さな体は恐怖からか震えている。
そんな子猫の姿を見た静雄は無理矢理追い出すのも可哀想な気がして一つ溜息をつくと押入れから出したモノで窓までの通路を作って出ていくまで気長に待つことにした。

それから数時間経っても動こうとしない子猫に静雄は寝ている間には出ていくだろうと窓は開けたまま眠りに就いた。
しかし朝になっても押入れからは子猫の気配を感じ、様子を見てみると昨日と同じ格好のまま子猫と目が合う静雄。
「どうすっかな…」


こうして静雄と子猫の奇妙な同居生活が始まった。







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