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きっかけ(静正)
※25歳な幼馴染コンビ



ふわっと白い煙が視界の端を上っていく。
帝人が何だろうかと視線を巡らせれば丁度友人が愛用している煙草に火をつけたのだと伺いとれた。
口元に咥える白く細長い葉巻から立ち上る白く苦い煙。
一度吸い込むと煙草を人差し指と中指で挟み口から離し、帝人に掛からない様に息を吐き出すように煙草の煙を吐き出す正臣。
見慣れたはずの友人が作る光景に思わず釘付けになる。
パソコンの手を止めて自分を見ている帝人に気付いたのか正臣は再び煙草を咥えたままどうしたのかと言う様に首を傾げた。
そこで漸く帝人は自分が正臣を凝視していたことに気付き恥ずかしさから頬を染めて慌てて顔を逸らすが、既に遅し。正臣が良いおもちゃも見つけたというかのように咥え煙草のまま口端を釣り上げると帝人と距離を詰める。

「どうしたよ、帝人。何々、この正臣くんの魅惑にノックダウン。ついつい見惚れちゃって惚れこんじゃったのか?」
「それはない」

けららと明るく笑いながらからかってくる正臣に見惚れていたことは事実だが、他は全くかすりもしておらず呆れながらばっさりと否定の言葉を紡いだ。
正臣に気付かれてしまっては何事もなかったように作業に戻る気にもなれず、作業内容を保存してからパソコンをスリープモードに設定にすると煙草の灰を灰皿に落としている正臣に向き直った。
仕事は良いのか、と尋ねてくる正臣に大丈夫と返しながら、煙草に視線を移す。

「正臣ってよく煙草吸ってるけどどんな感じなの?」
「どんなって言われてもな…吸って見るか?」

煙草を吸っている姿がかっこよくて、自分も吸ってみたいとは流石に言い出せず当たり障りなく尋ねてみるがそれを見越したのか、単なる偶然なのか、答えに渋った正臣は新しい煙草を取り出すと帝人に差し出した。
箱から一本だけ出る煙草を見つめながらどうしようかと悩む帝人。
もう学生でもなければ未成年でもないのだから留まる理由もないのだが、煙草を吸う姿がかっこいいからと言う理由で吸ってみるもの子供らしくて躊躇してしまう。
しかし断る理由もなければたどたどしい手つきで煙草を一本もらうと口へと運んだ。
煙草を咥えると正臣が火を点したライターを近づけてきており、そっと煙草の先端を近づける。
暫く火に当たった煙草は簡単に点火し先ほどの正臣と同じように白い煙が上り始めた。
正臣の見まねですぅっと息を吸う様に煙草の煙を吸うと喉に引っ掻かる煙に思わず咳き込んだ。

「大丈夫かよ」
「げほげほだい…じょ…」

胸を押さえて咳き込む帝人を見て正臣は予想通りと言ったように肩を竦めながら笑った。
友人の慣れぬ煙草に咳き込む姿を見ながら正臣は思わず過去へと思考をシフトしていた。
自分が煙草を吸い始めたきっかけを、思い出すかのように。



♂♀




仄かに鼻腔を擽る煙草の匂い。
この匂いが恋人を表す匂いであり、自分を安心させる匂いだと正臣は知っている。
その匂いに包まれながら正臣は部屋を見渡した。
眠気眼な視界には寝付く前に一緒だった恋人の姿は見当たらない。
薄暗い部屋にはリビングの明かりが漏れ見えているからきっと彼はそこにいるのだろう。
起きた時に傍にいないのが残念に思いながら寝返りを打つと正臣の視界に匂いのもとを見つける。
なんとなく、ホントなんとなくそれに手を伸ばして手元に引き寄せると手の平に微妙に収まらない小さな箱を見て中身をそっと取り出した。
いつもコレを吸っているであろう恋人の姿を、その横顔のかっこよさに何度見惚れたかを思い出しながら正臣はソレを咥えるとライターを点す。
きっと恋人に見つかればまだ早いと怒られるだろう。
背徳感を感じながら恋人の姿に憧れてソレに火を点そうとした瞬間、火のついたライターを横から取り上げられた。

「こら、ガキはまだ早ぇ。」
「静雄さん」

横から伸びてきた手を追い見上げるとそこには優しく怒る恋人の姿が目に映る。
正しく悪戯が見つかった子供のように苦笑いを浮かべていると咥えていた煙草も取り上げられた。

「そんなに口淋しいならこれで我慢しろ」

言うや否や正臣が何かを発する前に静雄は正臣の口を塞ぐようにキスをした。
驚き目を見開く正臣だが、そっと目を閉じると静雄の勘違いを否定しないまま甘い時間に身を委ねた。




【きっかけ】





「―っ」

そんな初めて煙草を吸おうと思った時を思い出しながら正臣は今必要ない場面まで思い出し、頭を抱えながら顔を真っ赤に染めた。
挙動不審な友人の姿を不審に思いながらも帝人はその理由に察しがついているのか何も言わない。
何も言われないのが余計に気になり正臣は変な間をどうしたものかとさらに挙動不審になる様子を帝人は楽しみながら

「そういえば正臣が煙草を吸い始めたのって静雄さんに憧れてだっけ」

と、火に油を注ぐように、いつもからかわれている仕返しをするように、正臣の羞恥を煽った。







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マゾたんが書いたら静正くれるって言ったから←
回想部分は高校生正臣。





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