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興味のその先(静正)

※学生静雄×闇医者正臣




そいつは圧倒的で、常識破りなやつだった。



「臨也さん。生きてます?」

買い物に出てたら街がまた騒いでいた。
その理由を確信しながら確認するために急いだ時には既にその騒ぎは終わりを迎えており、標識と接触した知り合いを見つけて声を掛けた。
心配してではなく、珍しく貴重で小気味いいものを満喫し馬鹿にするために。
満身創痍で地面に這い蹲る臨也さんの傍らで膝を折り、見下ろして携帯で写真を撮りながら臨也さんの様子を見る。
常識はずれな喧嘩で怪我を負わされた割にはその程度は掠り傷程度のもので、喧嘩相手を嫌い化け物と称しているが俺に言わせればそんな臨也さん本人も五十歩百歩だと思う。

「ねぇ、臨也さん。」
「何。」

空を仰ぎ見る様に真っ直ぐ空を見つめるその瞳はきっと今まで喧嘩していた相手に向けられているだろう。
また無視されるかなと思った呼びかけは今回は律儀に返って来て、でも視線はそのままで悔しさと憤りを極限に押し込んだ淡々とした声音だった。
相当悔しいんだなと思いながら俺は気遣う気もなくずけずけと臨也さんの傷を抉る。

「解剖していいっすか?あの人と喧嘩して掠り傷ってどんな身体してるんです」
「俺がシズちゃんと同等な様に聞こえるからその言い方やめてくれる?」
「だって最後の標識まともに受けてましたよね。それまではどんな喧嘩してたのかは結果しか分からないので想像するしかないっすけど…、まぁ最低でも最後のをまともに喰らって生きてるって俺としては結構不思議なんですよ。骨とか逝きました?」

トンっと胸を軽く叩いてやれば「…っ」っと臨也さんの無表情に近い苛立たしさを浮かべていた表情が苦痛に歪んだ。
肋骨の何本かは持ってかれたようだ。だから起き上がるに起き上がれないのか。
いつまでも地面に寝ころんでいる理由に納得し、だからと言って手を貸すわけでもなく会話を続けた。

「で、どんな喧嘩だったんですか?あの人はどんな喧嘩をしたんです?何を持ち上げ放り投げ、何で攻撃したらどうなった…自販機を持ち上げた時、腕の筋肉はどんな感じでした?ポストを間違えて殴った時、その手の骨はどうでした?標識を振り回した肩は持ち上げたごみ箱を支える足は…ナイフを投げたらあの人の身体にどんな傷がつきましたか?そもそも傷なんてつきましたか?刺さりましたか?ねぇ、臨也さん。教えてください。貴方、情報屋でしょ?」

知りたいことはまだまだあった。でもうまく言葉にできなくて、くみ取ってくれないかなと都合がいいことを考えながら臨也さんを見つめながら笑う。
そんな笑みを見てなのか、それとも俺の言葉に気分を害してなのか、臨也さんの浮かべる表情は苦々しい。
さっきの喧嘩を思い出して、平和島静雄という理不尽で常識はずれな暴力の化身を思い出して苛立ってるのかもしれない。
でも、俺にとってはどうでもいい。

「臨也さん」
「そんなの俺が知るわけないでしょ。」
 
急かすように名前を呼ぶと睨まれる。むぅっと唇を尖らせる俺を気にも止めずにまだ起き上がるには辛いだろう身体を起こし、軽く身体を抱きながら危うげな足取りで歩き出した。

「そんなにも知りたいならいつも俺に言う様にシズちゃんにも頼んだらいいじゃないか。『解剖させてくれ』ってさぁ」

皮肉たっぷりの笑顔で提案してくるその内容に今度は俺がイラつく番だった。
臨也さんは分かって言っている。
俺があの人にそんなことを言えないことを。
自分の保身を図り、遠くから観察するしか出来ないことを。
何も言い返せなくて唇を噛む。
最後にしてやったりと言う様に満足げに口端を上げると臨也さんはそっと耳元で囁いた。

「あの化け物の事はさっさと諦め忘れたら?そうしたらその動悸もなくなって君を悩ますものはなくなるよ。」
「なっ」
「そもそも自分はお高いとこから観察するだけの興味本位なら、興味を持つことからやめないとその事実に失礼だ。あぁ、俺のは客観的に知りたいから敢えて関わらない様にしてるだけだからノーカンだよ。」

誰にも言ったことない事実までも囁かれ俺は弾かれた様に臨也さんを睨み付けた。
ニヤニヤとした笑みがそこには張り付いており、俺は何か言おうかと思考を巡らせるが反論が浮かばない。
何を言っても口先だけはうまい相手の方が上手だし、臨也さんの言っていることが根底から間違っているとも思えない自分がいる。
口ごもっていると興味をなくした様に臨也さんは背中を向けて歩き出した。
その背中から視線を外し、ぐるりと見慣れた街並みを見渡す。
先ほどまでいたであろう少年を探すために。
臨也さんと同じ黒の学ランを羽織る金髪を目印に。




【興味のその先】





平和島静雄を探し、池袋中を歩き回り東池袋公園へ差し掛かった時、目当ての人影を見つけた。
適当な段差に腰を掛け、足元に居る猫と戯れているところだった。
とてもほのぼのとした風景。
とても先ほどまで臨也さんと街を破壊しながら喧嘩をしていた人物と同一人物と思えない穏やかな表情。
猫に微笑むその姿を見て、トクンとまた動悸がする。
俺はゆっくりと近づき、先に戯れていた猫が気付き、猫の視線に釣られる様に平和島静雄が俺に気付いた。

「あ、なんだよ。」

よく見ればその服はボロボロでそういえば臨也さんと喧嘩した後だっけ。などとどうでもいいことを考えていた。
こちらを見る表情はどこか苛立った雰囲気で、俺は一度息を飲み込んでから口を開く。

「勝手で悪いんだけどさ、……少しの間だけで良いから付き合ってくれね?」

平和島静雄という暴力の化身を知るために。
常識破りな力を発揮するメカリズムを知るために。
そして、俺のこの動悸の意味を知るために。









‐‐‐‐
ついったでチセちゃんが「闇医者正臣」っていうから詳しく話してたらこんな妄想してた。
年下×年上とか美味しいよ。
分かりにくいけど臨也も静雄も学生で正臣は成人。






あきゅろす。
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