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笑顔の訳(沙正)



いつもと変わらない朝。
正臣が沙樹に見送られながら家を出て行こうとしたとき、その裾を握り引き留める力が加わった。

「何、どーしたんだ、沙樹。一時も離れたくない?けど男には」
「そうじゃなくて、」

いつもと変わらない儚げな、表情の読めない笑みを浮かべながら正臣を見つめる沙樹に彼は軽く言うが全てを言い終わる前に否定される。
冗談なのでそれを再び話題に出すことはせず、何の用だろうかと沙樹からの言葉を待つ正臣。
だが沙樹は何かを言うわけでもなくじっと正臣の顔を見つめたままだ。
その沈黙が正臣には少し苛立たしかった。
少しでも時間が惜しい。少しでも時間を彼のことに割きたかった。
そんな正臣の心境を表すように表情は少しずつ険しくなっていく。
するとやっとというように沙樹が動いた。
沙樹は右手を上げたかと思うとぐいっと正臣の額を人差し指で押した。
思いもよらぬ沙樹の行動に正臣は驚き呆気にとられたように数度瞬きをしてから「え?」っと声を漏らした。

「え、なに、どういうわけ?」

訳も分からず首を傾げながら沙樹に問うその表情に先ほどの険しさはない。
それを認めると沙樹は満足そうに口元に弧を描いた。

「いつまでも眉間に皺を寄せてるといつか取れなくなっちゃうよ。正臣が遠回りして勝手にややこしい道と状況を選んでお友達を助けようとして大変なのはわかるけどさ。」
「それは馬鹿にしてんのか応援してくれてるのか…」
「どっちもだよ。あ、バカにしてるのかな」
「そこは普通応援してるほうだろ」
「だって正臣はバカだもん。ちゃっちゃと会っちゃって解決しちゃえばいいのにそうしないんだもん」
「出来ないから」
「うん、知ってる。正臣は臆病でバカだけど友達思いで仲間思いで逃げ出しても困難な道を選んで戻ってきちゃうようなドエムさん。」
「ひでぇ言われよう…」
「だから困難でも眉間にしわ寄せてたらいつか消えなくなっちゃってお友達と笑いあえないよ」

そんなの嫌だな。っとまるで自分のことのように困ったように笑う沙樹を見て、正臣はいかに自分に気持ちの余裕がないか自覚した。
気持ちに余裕がないから表情にも出る。表情に出てしまっていたら一緒に行動してくれる仲間たちにも心配をかけてしまう。
ふうっと一つ長く息を吐き出した正臣は、前のような明るい笑みを浮かべて沙樹の頭を優しくなでた。

「そうだな、サンキュー沙樹。」
「うん、いってらっしゃい」

雰囲気からぎすぎすした険しさが見当たらなくなると沙樹は今度こそ正臣を見送る。
彼女に見送られながら正臣は青く広がる空を見上げ、勝気に微笑んだ




【笑顔の訳】





「早く…正臣の笑顔が見たいな」

見えなくなった正臣を未だ見つめながら沙樹は薄く笑いながら呟いた。

いつか、彼が笑っている場所に自分がいればいいと思いながら。










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「沙正早く結婚しろぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!」っと深夜仕事中にこんな話を考えながら心の中で叫んでました。そうしたら「あ、まだ正臣18才未満まだできねぇ!」って本気で悔しがってた馬鹿が通ります。
時間軸的にたぶん9巻から11巻のどこか…ろっちーに会う前の話かなーって思ってます、けど、まぁ、いいいよね、どうでも




あきゅろす。
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