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田舎に泊まろう(静正)



池袋駅からぶらり、何度か電車を乗り継いで訪れたのはビルの森を抜けた先にあるのどかな平野。
田や畑を懐かしみながら、そこに点在する家屋を認めて正臣は隣にいる静雄を見つめて楽しそうに笑った。

「今日、どこに泊まりましょうね」



事の始まりは数日前まで遡る。
発端は何気ない静雄の一言だった。

「あぁいう田舎っていいよな」

正臣が静雄の家に泊まりに来た晩のこと。夕食を食べ終えた二人がまったりとテレビを見ていたとき、その見ていた番組のロケ地がとある田舎で、画面に映る田舎ののどかな雰囲気、緑、町の人々に静雄はぽつりとそう漏らした。
それを聞き逃がさなかった正臣がその数日後、静雄の休みを確認したかと思うと手を引いて半無理やりといった体で聞いたこともない駅名まで連れ出したのだった。

計画的に無計画に、緑の多そうな場所を選んでどこで降りようかと考えながら、適当に降りた場所はそんな田舎。
正臣にとってはどこか故郷を思い出す何もなさで、静雄にとっては馴染みのない光景。
畦道を歩きながら正臣はちらりと静雄を見た。
正臣の視線に気づかず静雄はどこか表情を和ませ景色を楽しみながら歩いている。
静雄は都会より田舎のほうが好きだと言っていた。土手など日向ぼっこするものいいと聞いた記憶がある。
いきなり連れ出したことは怒られた。でも、最後には仕方がなさそうに許してくれる。
正臣は先ほどまでのやり取りを思い返し、視線を前へ滑らせ幸せそうに微笑んだ。
自分たちを先導するのはどこに泊まるかと話していたときに静雄と口喧嘩になった時に成り行きで話を聞いていた老女だ。泊まる場所がないならうちに来ればいいと言ってくれた。
ただで泊まるのは悪いので断ろうとしたとき老婆はそれなら代わりに畑で採った作物を運んでほしいと言われれば言葉に甘んじた。
泊まるところを決めなければいけないのは確かだったし、頑固に突っぱね優しさを無下にするもの気が引けたのだ。
そうして静雄と正臣は老婆の家へと泊まることになった。


そして夕食と風呂をもらい夜。
老婆が使うといいといっておいて行ったものを静雄は首をかしげて見つめていた。
静雄の目の前にあるのは網のようなもの。見たことがなければ使い方もわからない。
なんだろうと思案しているところに風呂から返ってきた正臣はそんな静雄の背中を見て覗き込むように声をかけた。

「どうしたんですか?」
「紀田。これなんか知ってるか?」

正臣を認めた静雄は正臣が風呂に行っている間のことを簡単に話しながら目の前の網のようなものを指さして聞いた。
視線を静雄から指されたものへ滑らせた正臣はその先にあった網のようなものを見つけて合点がいったようにうなずいた。

「あぁ、蚊帳っすね。聞いたことないっすか?蚊よけに寝床に吊るすんですよ。ほら、梁に突起があるでしょ、そこにこうやって…こうやって…」

蚊帳を広げながら正臣は説明するように蚊帳の端を持って壁際に移動するとその視線の先にある釘に腕を伸ばした。
見本のようにそこに蚊帳の端をひっかけようとするが釘が高い位置にあるため幾分身長が身長が届かない。
背伸びをするがあと少し足りない様子の正臣の手から静雄は蚊帳を奪うと聞きながら蚊帳を設置していった。

「ありがとうございます。ってまぁ、こんな感じに張ってその中で寝るんですよ。戸とか開けておけば風も入って涼しいですし、蚊帳があるから虫に刺される心配もないんです。」
「蚊帳ってそう使うんだな」
「そうっすよ。昔祖父母の家に行ったときとか使ってたんすよね。」

出来上がった蚊帳の中に入り敷かれた布団に寝転がる二人。
思い出話に花を咲かせるように正臣は子供のころの話をはじめ、

夜が更ける頃には二人とも寝息を立てていた。




【田舎に泊まろう】





次の日、老婆の手伝いを少しして、昼過ぎには二人は街へと帰って行った。
またこんな無計画の旅をしようと話しながら、今度はどこに行こうかと相談しながら。








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炬燵さんがいきなり要求してきたんだ。
蚊帳の中でタオルケット一枚かけて寝てる静正みたいって
妄想したら萌えたんだ、だから炬燵さんは責任とってそんな静正くれるべきだよね


あきゅろす。
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