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レッツ スタディ!(臨正)



「ここ、間違ってる」
「…っ」

手元のノートに臨也さんの細長い指が這う。
先ほどまで解いていた問題を指摘され俺は反射的に臨也さんを睨み付けていた。




高校を中退し、臨也さんの下で働くようになって早一か月。
仕事にも慣れ始め、臨也さんの嫌味にも大分耐性が出来てきた筈のそんな頃。彼は唐突に高校2年生の教科書を俺の目の前に置いてこう言った。

「勉強を教えてあげる」
「いえ、結構です」

満面の笑みで甲斐甲斐しいお兄さんを装って、かの野郎は有無を言わせずに俺にノートと筆記具を渡すと教師さながらに授業を始めた。
普段は掛けないメガネを掛けて教科書を開くその姿は本当に若手の教師か、大学生にいるような家庭教師のようで思わず物珍しげな視線を向けてしまう。
臨也さんはそんな視線に気づいていないのか、スルーしているのか教科書を片手に対面の机の角に軽く寄りかかり、「英語から始めようか」と口にすると英文を読み上げる。その口から紡がれる英語は発音も完璧で傍から見ればむかつくほどにかっこいい。

「今の、和訳できる?」
「『マークはアメリカへ』…って俺、一言も勉強するとか言ってませんけど?」

やる気のない俺は適当に聞き流していたが、質問を振られ思わず答えそうになる。
そんな俺を口元を歪め見てくる臨也さんを黙殺し、ぶっきらぼうに勉強などする気がないことを伝えると予想通りというように臨也さんの笑みが深まった。

「だけど勉強は大切だよ。いまどき高卒は当然の時代だ。君もずっとここで働くつもりはないんだろう?なら最低限の知識はつけておいても損はないと思うよ。まぁ、君が俺のところに永久就職したいって言うなら止めないけど」
「すみません、勉強教えてください」

反射的に紡いだ言葉を受けた臨也さんの表情を見て乗せられた、と気づいても後の祭りで、そんなこんなで勉強会は幕を開けた。




それから数時間。
英語が終わり、国語へ移り日本史、世界史、化学と経て次は数学を教えてもらっていた。
時折挟む豆知識や雑学や歴史の側面の話などは興味をそそるもので正直に言って学校の授業よりも面白く頭に入る。
臨也さんにもこんな取り柄があったんだなと素直に関心しながら教科書の問題を解いていると間違えを指摘された。

「ここ、計算ミスしてるよ。使う公式はあってるから凡ミスに注意しようか」

指摘された箇所を見直してみるという通り計算ミスをしており、消しゴムをかけて問題を解きなおす。
ふと去年のテストでよく凡ミスをしていたことを思い出し、その時に交わされた会話も過り眉を寄せた。もうあの日常には戻れない。
浮かんだ気持ちを振り払うように滑らした視線は目の前の臨也さんを捉え、思いっきり表情を歪めた。

「人の顔見ていきなり嫌そうな表情を作るのはどうかと思うよ」
「臨也さん」
「人の話も聞こうか」
「いつまでこの暇つぶしは続くんですか?」

どうして臨也さんがいきなり勉強を教えてくれるなんて言ってきたかなんて想像がつく。
単なる暇つぶしで、気まぐれだ。
ちょっと時間が空いたから、暇になったから。俺はその暇つぶしにつき合わされ、そうだとわかっていて俺は暇つぶしに付き合った。
ただそれだけ。
唐突な俺の質問に臨也さんは少しだけ驚いたような表情を作った後微笑んだ。

「暇つぶしなんてひどいな。まぁ、否定はしないけど。…でも、君の将来を案じているのも確かだよ」




「だって絶対君は      」




その予言めいた言葉に俺ははっと息を飲んだ。







【レッツ スタディ!】









いつかあの場所へ戻れるだろうか。
その心を見透かすようにあの人は言った。

それは予言であり近い未来訪れる事実。


「さぁ、未来の君が困らないように勉強を再開しようか」

にっこりと笑う臨也さんは何を企むのだろうか。












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遅くなってごめん!そして意味不でごめん!書いてる本人も何を書きたかったのか途中で行方不明になった!






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