[携帯モード] [URL送信]
はじめまして(月リンろぴ)




蹲る人影を見つけてリンダは思わず足を止めた。
調子が悪いのだろうか。
命を持たないプログラムだとしてもウイルスやバグによって調子を崩すことはある。
誰のソフトだろうかと思いながらリンダはその影に近づいて行った。
現実世界で目にする服装だとしても、個性的で色々な衣装があり世間の目など気にしなくてもよい電子世界では逆に普通の服装が珍しいそんな服を身にまとう青年。
いやしかしよく見てみると少しちぐはぐかもしれない。
モノクロのバーテン服に大きな肩掛け鞄、首には巻いてもなお余る生成色のマフラー。
見慣れてしまえばどうってこともないだろうが初対面では少し目を引く。
それでもリンダの知るもっと個性的な面々の服装と比べれば普通と言い切れる。
リンダは蹲ったままの件の青年に近づくと初対面故の警戒した声音で声を掛けた。

「…どうしたんだ?」
「!?」

覗き込むように身体を折り、様子を伺う。
対して青年は声を掛けられるとビクッと身体を跳ねさせ、恐る恐ると言った風体で声がした方、つまりリンダを方へ顔を上げた。
自分より年上で、だが何処か庇護欲を掻き立てられる弱弱しい表情。目には溢れんばかりの涙を浮かべている。
今にも泣きそうな表情で見上げてくる青年に思わずリンダは自分が何かしたのかと焦る。
だが自分は声を掛けただけで、それ以外に何かした覚えもしようとした覚えもない。しかし相手からすればいきなり声を掛けられ驚きと恐怖を感じてしまったのだろうか。
リンダはどう対処したものかと決めかねているとふと視界の端が陰る。
瞬時にそれは目の前を覆い、同時にリンダの鼓膜を震わせ体には衝撃が伴う。

「リンダ!」

視界は暗がりでさっきまで下方向にあったモノクロが覆っている。
抱きつかれたと咄嗟に判断できず、リンダの頭には疑問符が何個も浮かんだ。しかし抱きつかれていると自分の体勢を理解出来ても次に何故という疑問が浮かび、そして名を知っている疑問を通り過ぎる。
次々と浮かぶ何故に支配されるリンダに気付かない青年は迷子になった子供が母親に漸く会えたかのような甘えっぷりで弱音を吐き出している。

「リンダ、よかった、会えた。知らない道に出ちゃったときはもうだめかと思った。ろっぴにまた迷惑かけるし怒られるとこだった。」

こちらの状況などお構いなしに語る青年を思わず宥める様に背中を優しく撫でてやるリンダ。
どうやら彼は六臂の知人で自分に用があることがその泣き言から伺いとれる。
いくつかの疑問は解消されたのだが、抱きついていることはまだ解せなかった。
抱きつくほどまで不安だったと言われてしまえばそれまでだが、迷子ぐらいでそこまで不安になるものだろうか。
流石にそこは個人差があるので彼はそうなのだと結論つけることにした。

「で、なんか俺に用みたいだけど何?あと誰?」

いつまでたっても泣き言を繰り返す青年に伺い立てると泣き言をぴたりとやめて、青年は微笑んだ。
リンダよりも明らかに年上の容姿で、何処か幼児交じりの無邪気な笑みで、起動してあまり日が経ってないのか拙い物言いではっきりと。

「あぁ、あのな。嫁に貰いに来た!」

リンダが耳を疑いような返答を。
そして青年は月島静雄と名乗り、それがさも当たり前かのように、茫然自失なリンダに触れる程度のキスをした。
まるで誓いのキスの様に優しく無邪気なキス。
雪崩込む状況に頭を真っ白にしたリンダは口を開閉させ「意味わかんねぇ!」っと叫ぶしかなった。





【はじめまして】






そして再び何故と何が起こったのか分からない思考の迷宮に囚われたリンダを心配そうに見つめる月島の頭に鈍い衝撃が走った。
ゴンッという重い音の割には頭を殴られた本人は気にも止めない雰囲気で振り返るとその先に居た知人に表情を明るくした。

「ろっぴ。迎えにきてくれた?」

拙いどころか日本語すら怪しい言葉づかいで月島はにこにことお花を飛ばず様に笑みを浮かべて首を傾げている。
対して急にいなくなった月島を心配して迎えに来た六臂は睨むように月島を見ている。
どうしてそんな表情をしているか一瞬分からなかったが思い当たる理由に気付いた月島は叱られた子犬の様に肩を竦めて自分より低いはずの六臂を見上げた。

「急にいなくなったこと怒ってる?」
「そんなこと今はどうでもいい」

思いついた心辺りを弱弱しい声音で問うそれを六臂はばっさりと否と切り捨てた。
ならば何故、と月島は首を傾げた。

「リンダに何したの。月。」

次がれた言葉に合点がいったらしい月島は満面の笑みで頷く。

「嫁にもらうんだ。ろっぴがどんなに彼を好きでも俺は知らない。俺がそう決めたから。」

頭を抱え蹲り状況整理をしているリンダに歩み寄る月島はその小柄な体を抱きしめて堂々と六臂に宣戦布告をした。
つまり恋仲とまではいかないものの、長い付き合いで、思い合っている六臂に向けて。

自分をめぐる火ぶたが切って落とされたことに未だ気付かないリンダはまだぐるぐる悩んでいた。
そこに答えが見つかるはずもなく。ぐるぐると。







−−−−−‐−−−−
朔くんパッピーバースディ!
と言うわけで朔夜様に送る戦争サンド小説。
行き詰っていたら趣味に走りました、ごめんなさい。でも楽しかったの。分かって?←
リンダは津軽サイケコンビ相手のが好きだけどたまに他のコンビと絡ませるのも好き。
最近はシンデレラの義姉正臣が派生してきて、自分の中ではデレ臣ちゃんと姫臣ちゃんの双子になってます。いつか日々デリコンビでこの双子ちゃんを絡ませた話を書きたいなー(なんでここで言った)






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!