[携帯モード] [URL送信]
憧憬と愛情(静正)



自分にはないものを相手が持っていた場合、大抵は妬み羨み憧れ欲す。
人間は同じ状況下でも様々な感情を抱くよね。
それを踏まえて彼の場合はどうだろう。
自分にはない強さを持つ化物なんかの君を、彼はどう感じ接しているか分かるかい?
憧れだよ。全くあの子も馬鹿だよね。化物に憧れるなんてさ…いや、だからこそなのかな。化物だから一種のフィクションと捉え、小さな子供がテレビの中のヒーローに憧れるように、君に対しても憧れている。
成る程、つまり彼にとって君は―…。




♂♀




ペコッ。
そんな軽快な音が夕暮れの公園に響いた。
それは過去に折原臨也に言われた言葉を思い出した静雄が持っていた缶を握り潰した音で、素材をスチールと示すマークが歪に歪み、残っていた中身が手の隙間から零れている。
人の力では大凡お目にかかることが出来ない光景を目の当たりにして、隣に座っていた少年は目を見開き固まっていた。

「し、静雄さん…?」
「あぁ、悪ぃ。掛からなかったか?」
「や、それは大丈夫っすけど…どうしました?」

今日はどんなことがあった、今度遊びに行こうなど話をしていた最中の出来事に少年―…紀田正臣は自分の話がつまらなかったか、何か静雄の琴線に触れるようなことでもあったのかと恐る恐る尋ねる。
正臣の言葉に我に返った静雄は溢れる液体を見て、何事もなかったかのように缶だったものから手を離し地面に置いた。
明らかに何かあるのに何でもないと言われてしまい正臣は何か言いたげだが下手に突っ込んだ事を聞き、静雄の機嫌を損ねてしまう訳にもいかず口を詰むぐ。
代わりというように正臣は静雄の手元に視線を移した。
未だコーヒーで手が濡れており、正臣はハンカチを取り出すと静雄の手を取り、拭いながら率直な感想を世間話をするかのように話し始めた。

「やっぱ静雄さんはすごいっすね。アルミならまだしもスチール缶をこんなぺしゃんこにしちまうんですもん。喧嘩もつえーし―」

自分の事の様に生き生きと語るその姿に静雄は大嫌いなこの力を認めてもらったような感覚にうっすらと頬を緩める。
そして同時に思い出した臨也の言葉にそっと笑みに影を落とし、再びマシンガントークとなっている正臣の話など耳に入らなくなっていく。
嫌いな嫌いな力を強さとして憧れてくれることは嬉しい。だけど、
うまくまとまらない感情に静雄は表情を歪め、その変化に気付かない正臣を唐突に抱きしめた。

「え?ええ??」

突如抱きしめられ呆然とする正臣をよそに静雄は何も言わずにただただ正臣を抱きしめる。
何も言わない静雄にどうしたらよいものかと正臣は宙を掻いていた腕をそっとその背中へ這わせた。
抱き合う形となった二人だが、その心は背を向けたまま。
憧憬と愛情を取り違えた者と愛と憧れを与える続ける者。
二人が互いの想いに気付くのは
二人が自分の思いに気付くのは
まだ少し遠い。





【憧憬と愛情】






「静雄さん―…」



もしかしたら少年は、








‐‐‐‐‐
前ついったーで、静雄に憧れて自分の中のヒーローみたいに見てる正臣っていいよなーって話してたら「静雄が正臣は自分を愛しているんじゃなくただ憧れてるだけと気付いて虚しさ感じているんですね」みたいな反応もらったから書いてみた。
うん、着地点見失った






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!