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思い出の場所(帝正)


「あれ、」

学校の帰り道。いつもの風景に違和感を感じた帝人は思わず足を止めた。
半歩先を歩いていた正臣が立ち止まりとある一点を見ていることに気づいて振り返る。
立ち止まる要素はない。それとも帝人だけが気付く何かを見つめたのだろうか。
正臣は首を傾げて「どーったの」と何気ない言葉を掛けた。

「あ、ううん。ここ…何か取り壊しているけど何があったっけなって」
「あー、確かラーメン屋じゃなかったけ。」

一瞬帝人の視線は正臣に向き、そして再び戻る。帝人の返答でどこを見ているか分かった正臣は、現在重機で家屋の骨組みを壊している様子を同じように眺めた。
普段は何気ない風景。しかし取り壊されていたり空き地になっていたりすると気に止まる。そして何があったのかとつい考えてしまう。
正臣は記憶を辿り以前中学の友達と開店当時に行ったことを思い出し答えると帝人は小さく「そっか」と納得したように呟いた。

「でも都会でも潰れちゃう店とかあるんだね。」
「そりゃ、激戦区ってほどではねぇけど人気なきゃ続けるのは無理っしょ。ぶっちゃけ特別うまくもなかったし」
「あ、そういえば正臣知ってる?よく遊んでた空き地に新しく家が建ったんだよ。」
「マジか?!あの木もか?」

連想と言う様に地元の様子を思い出し歩みを再開しながら正臣に告げると彼も習う様に歩き始め地元の変化に驚いている。
昔、正臣が引っ越す前によく遊んでいた空き地。中学の頃そこに新しく家が建ったのだ。そこにあった大樹。正臣はよくその大樹に登り帝人を心配させていた。遊ぶところが少なかった地元は例え空き地とは言え子供たちの絶好の遊び場だったのだ。その一つが消えた。例え残っていたとしても遊ぶ年頃ではないものの消えてしまうのは淋しい。
残念そうに肩を落としながら変わってしまった地元に思いを馳せる。

「あといつも行ってた駄菓子屋も潰れちゃたんだよね。あそこのおばあちゃんが足悪くしちゃってさ…正臣との思い出がどんどんなくなっていく感じ…」

消えていく思い出の場所。
仕方がないことだとは言え正臣との共通の思い出が色あせていくのがとても悲しい。
目を伏せる帝人に正臣は肩を組んだ。

「街が変わってくのはどうしようもねぇって。昔は昔、今は今。この街で新しく思い出の場所をつくればいいじゃん。」

満面の笑顔で諭されてしまう。
確かに正臣の言う通りだと帝人は思った。場所はなくなってしまったかもしれない。しかし記憶はある。それに一緒に過ごした人物がもういないわけでもない。

「そうだね、この街で…たくさんの思い出を作ろう。」
「そうと決まれば駅前に新しい店出来たんだとよ。言ってみねぇ?」

帝人の返事を聞く前に正臣は手を引いて歩き出す。
昔と同じ様に、変わらず…。




【思い出の場所】






「あ、」
「どうしました?」

粛正の帰りにふと目についた光景に帝人は足を止めた。それに釣られる様に後ろを歩いていた青葉も足を止める。
帝人の視線は閉店と札の掲げられたアイス屋に向けられていた。
そこはよく正臣と一緒に買い食いをした店でもあった。
数か月前の会話を思い出して帝人はクスリと笑う。

「早くまた新しい思い出作りたいな。」

呟いた意味がよく理解できない青葉は怪訝な表情で帝人を見るが帝人は気付いていない。
そして

「そのためにもちゃんと協力してね、青葉君。」

青葉を見て屈託のない無邪気な笑顔を浮かべた。










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お久しぶりでーす。昨日外出たら昔たんぼだったところに家が建っててあー変わっていくなぁと思ったら思いついた話。こんなことやっている場合ではない。





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