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二人揃えばいつでも春(正帝)




プスン…プスーッ…………。

「げ…」

2月も中頃、暦の上では春とは言え、まだ雪もちらつくこの季節。
正臣の家の唯一の暖房器具であるストーブが、御臨終なされた。

「どーすっかな…。新しく買うにしてもバイトの給料日はまだ先だし……うし、」

ストーブの様子を見て、何度か電源を入れたり切ったりして見るもうんともすんとも言わないそれに正臣は肩を竦めた。
ちらり窓の外から見える景色には白いものが舞っており、これは今夜も冷えると苦く笑う。
どう給料日…新しく暖房器具を買うまで過ごすかを考え正臣は荷物を纏め家を飛び出した。




正臣は真っ直ぐにある一点を目指す。
閑散とした住宅街…そこにひっそりと建つアパート。
その一角にある部屋の戸を正臣は思いっ切り開け放った。

「みっかどー!暫く泊めろ!」
「な、正臣?!」

正臣の突然の訪問。帝人はパソコンに向かっていた体を彼に向け、何事かとまじまじと見る。一方正臣はそんな帝人にお構いなしとでも言うように部屋へと上がり込み、荷物を部屋の隅に置いて寛ぎ始めた。
部屋の真ん中で横になり、予め持って来た雑誌を広げる。まるで自室にいるかのような振る舞いに帝人はいつものことだとは思いながらすっと立ち上がると正臣を、踏んだ。
無防備な背中に軽く体重を掛ける様に踏み、それはもう満面な笑みを浮かべて。

「―!?ギブギブ!帝人さん!ギブ!つか、え、何?!何がお気に召さなかったの?!」
「何がって行きなり尋ねてきて何も言わず我が物顔に寛ぐ正臣にムカッてきただけかな。」
「つまり全部と、」
「簡単に言えばそうかな。」
「別にいいじゃねーかよ。俺たちの仲なんだし。」
「親しき仲にも礼儀ありって言葉知ってる?」
「帝人は俺と居たくねーのかよ?」
「ん……。」

体重をかけて踏まれていると言っても手加減はしているので痛みがあるわけではない。単なる戯れに、正臣は答えるかの様に大袈裟なまでにじたばた手足を暴れさせる。暫くしてとりあえず足を退けると帝人は再び正臣の横に座り直す。そこで正臣からの言葉の反撃に言葉を詰まらせてしまった。
別に前置きなく泊まりに来たことには怒っていない。いつものことではあるし、今更なことでもある。何より一緒に居たいこともあるので嬉しくなっても怒りはしない。しかし、自分を無視して雑誌に意識を集中させるその姿にむっとしたのだ。まぁ、普段は帝人がネットに集中して正臣を放って置くのだが、それを棚に上げ。

「そもそも、いきなりどうしたの?今晩だけならまだしも暫くって…今は一人暮らしだから家族と喧嘩ってこともないでしょ?」

正臣の反撃に素直に答えることに照れを感じた帝人は話を逸らすように話を戻した。
正臣はあぁ、と思い出したかのように寝ころんだまま帝人に向き直る。しかしその前に一瞬表情に影を落としたが、帝人を見ると満面の笑みを作った。

「や、家のストーブがイカれてさ、寒いんだわ。つーことでしばらくよろしくな?」
「はぁ…なんて勝手な…。でもさ、僕の家もそう変わらないよ?」

帝人の家にさも当然の事の様に暖を取りに来たという正臣。しかし帝人の家には目ぼしい暖房器具はない。PCのほかに帝人の家にある電化製品と言ったらレンジだけだ。流石にレンジでは暖は取れない。
普通に自分の家に居た方がまだましなのではないのかと帝人は首を傾げた。自分はもう寒さに慣れたのでどうってことないが正臣もそうだとは思えない。寧ろ寒いのが嫌だと帝人の家に乗り込んできたわけで。
結局は変わらないではないか、帝人が不思議そうに思っていると正臣はその腕を引いた。
強いその力に油断していた帝人は抗う隙もないままに正臣の腕の中に向かい合い、覆いかぶさる形で倒れこんだ。
息が掛かるほどの近さ。無意識に帝人は頬を赤め、正臣から離れようとするが正臣は離さまいと帝人を強く抱きしめた。

「ちょ、正臣離してよ。」
「んーでも、ほら。」
「?」
「一人じゃ寒くてもこうやって二人くっついてればストーブなくてもあったかいだろ?」

無邪気な笑みを浮かべながらぎゅうっと抱きしめる正臣に帝人は赤くしていた顔を更に赤くして、それをからかわれないうちにポスンと胸へ顔を埋めた。

「馬鹿臣…」

すりっと一度正臣に擦り寄りながら帝人は小さく小さく、最後の抵抗と言うかの様に悪態をつくも、その腕は正臣の背中に回されており、正臣が自分にしてくれるように帝人もまた、彼を強く強く抱きしめた。







【二人揃えばいつでも春】







暫く互いの体温を確かめるように身体を寄せ合っていた二人だが正臣が唐突に口を開いた。

「なぁ、帝人。…もっと暖かくなるようにうんど」
「それ以上言ったら女の子にするよ?」
「スミマセンデシタ!!!!!」

親父の様な下ネタを全て口にする前に正臣は帝人の笑顔と握られた大事な箇所に最大級の身の危険を感じ、すぐさま身を引いて土下座をしたとかしなかったとか。








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正帝になると正臣が軽く臨正の時の臨也になる不思議。
『宙変地異の前触れか』のそら様が2/18に誕生日だったと言うことで、かなりの大遅刻ながらに誕生日プレゼントとして書かせてもらいました!甘い正帝なら何でも!とリクを承ったのですが…甘い?正帝?どう見てもみかまs…な品物に…。スミマセン、愛だけはたっぷり詰めたので許して下さいorz
それではそら様に捧げます、お誕生日おめでとうございます!







あきゅろす。
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