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術を見失ったものたちへ(静正)



″今の状況を簡潔に説明せよ。″

そんな問題が出としよう。簡潔に言うならば俺は即座に『癒しと恐怖の最中にいる』と答えるしかないだろう。寧ろこれ以上にどう答えれるのか、誰か教えて欲しいものだ。
では″具体的に説明せよ″と問題を出されたら?
俺は『池袋最強と謳われる平和島静雄と一緒に猫カフェなる場所にいる』と答えよう。さらに″わかりやすく″となると『小さい毛玉が遊ぼうと頭を擦り寄せてくるのを気づきながらも、目の前の光景、可愛らしい子猫と戯れる平和島静雄を見て俺は見てはいけないものを見てしまっているのではないかという恐怖にさらされているため、そんな余裕がなく早く帰りたいと歎いている。』と答えよう。
つまり、そういうことである。

俺は今、丁度街で会った平和島静雄にお茶誘われ、言われるままについて来たら猫カフェに入り、早くも後悔しているところだった。



♂♀




「紀田?」
「は、はぃぃい!!な、なんすか…?」
「いや、なんか具合悪そうみてぇだけど大丈夫か?」
「や、あ、いえ、はい、大丈夫っすよ、」
「敬語」
「だ、大丈夫です!俺こういうとこ初めてでどうしたらいいかわかんないだけなんで…放っておいてもらえればいいですから!」

入店から数分。ずっと猫を放って固まっていることに気付かれたらしく静雄さんが覗き込むように見てきた。本人は具合が悪そうな奴を接するように見てきたのだろうが俺には逆効果で、思わず身を引いてしまった。何てったって俺はその本人に怯えているんだ。それがドアップで映れば驚きもするだろう。
俺の行動に驚いたように目を見開いた静雄さんを見て俺はしまった、と内心、冷汗をかきフォローを入れた。
途中敬語を使わなかったことへの制裁にビビりながら…。
なんで俺…茶の誘いに乗っちまったんだろ。いや、何もなきゃ静雄さんもぶちきれて暴れるような人ではないと分かっていたから、断るのも悪いと思って来たけど…俺、選択ミスったかな…。つか普通お茶=猫カフェっておかしくね?!おかしいよな!それならメイドカフェがいい…いや、平和島静雄にそんなとこ連れてかれた日には俺はマジでその秘密を死しても守らねぇといけない…。死亡フラグしか立たなくなるなら、こっちのがまだマシだと思うことにしよう。そうしよう。

「大丈夫ならいいが…アレルギーかとじゃないんだな?」
「あ、すみませ…えっと…」
「あ?あぁ、こいつら、小さくて丸くて触り心地もいいだろ?俺は猫より犬だけど周りに犬カフェはなくてよ」

勝手に状況の自己完結をしていると静雄さんが安心した様に笑っていた。裏もなく、ただ純真に子供の様に無邪気に。
その笑みに今まで自分が思い考え怯えていたことに罪悪感を覚える。
そんなことに気付かないまま静雄さんは俺の手をとっていつの間にか膝の上でくつろぎ寝ている茶トラの腹を撫でさせた。そして独り言のように語る内容に耳を傾けながら膝を占拠して毛づくろいをしている茶トラを撫で続けた。整えられた毛並みは柔らかく、膝から伝わる温もりは暖かく、気持ちいいのか喉を鳴らす小さな小さな生命に俺は小さく笑みを浮かべる。
こんな落ち着いた時間は久しぶりで、自由気ままな猫を見ていると羨ましく思う。視線の先にもいる子猫同士戯れる姿を見ながら俺は自然と笑っていた。

「やっと笑ったな」
「え…?」

ふと掛けられた声に猫に行っていた意識が隣の人物の存在を思い出す。反射的に隣を見れば満足そうに笑う静雄さんと目が合った。
掛けられた言葉はどういうことなのだろう。首を傾げながら問い掛ける前に答えが返ってくる。

「あの黄色いことだろ。今悩んでんの。」
「は…ぃや……」
「詳しいことなんか全く知らねぇから俺の勝手な思い込みでいうけどよ、最近黄色い奴らがまた増えたじゃねーか。そのことでお前は悩んでんのか?前にトムさんが…なんつったっけ…?…こ……ひょうきんぞく?…まぁ、あの黄色い奴らの名前出した時、手前、いい顔してなかったらしぃじゃねぇか。だからこれは俺の勝手な言い分だ。悩むなとは言わねぇ、けど一人で抱え込むな。何かありゃ言えよ。そのために大人がいるんだろ。甘えたり頼ることは子供の特権なんだ、存分に使っちまえ」
「………」

伸びてきた手が俺の頭に乗ると普段の行動からは連想出来ないほど優しく頭を撫でられた。
大きくて広くて優しい静雄さん。
ぶっちゃけ言われたことは間違っているけど、根本的なことは見透かされていて、どうしようか苦笑いで彼の言葉を聞いていく。
どうしてこの人は人を近付けさせないのに魅了していくのだろう。
どうしてこの人は会ってそんな経ってない俺を気にかけてくれるのだろう。

「こんな偉そうなこというけど俺のも受け売りなんだけどな。とりあえず手前はたまには肩の力を抜け。」

言葉の〆と同時に一度だけ力強く頭を撫でられる。少しだけ押し潰されるんじゃないかと思いながら静雄さんを見れば自信たっぷりで力強い笑みを浮かべていた。
この人みたいに俺も強ければ、この人が居てくれたら。
そんな考えを振り払い、俺は彼に応えるように今出来る最高の笑みを浮かべた。


「あざーす!」






【術を見失ったものたちへ】







「敬語」
「ぶぎゃっ?!」

気が抜けてタメ口きいたらデコピンされ、俺は大きくのけ反り壁に頭をぶつけた。
痛さから涙で歪む視界の中、静雄さんの頬が赤い気がしたのは気のせいだろうか。









‐‐‐‐‐
池袋で猫カフェ見っけて猫に興奮しながら静雄もこういう場所行ってたら可愛いなって書いてみた。CPにしたら静雄がただのフラグ建設士だった。おや。
でも正臣のことを心配して間接的に力になってあげようとか支えになろうとする静雄っていいよね!もちろん正臣が助け求めてきたりしたら全力で力なろうとするんだよね!
静正マジ癒し!







あきゅろす。
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