三者三様(正帝+@) 初夏も入り始めの雨の合間の日本晴れ。 夏を感じさせる太陽の熱を浴びながら少年は高らかに宣言した。 「よし、デートしよう。しかもダブルデート!」 「?」 「は?」 「……他の人まで巻き込まないでよ………」 正臣に突然呼び出された面々…滝口と門田は呆けた顔をし、帝人はいつものことだと呆れたように溜息をついた。 社会人も学生もたいていは休みの日曜日。各々に休日の予定を作り過ごそうとしていた矢先の収集。なんだと思っていれば先の言葉に、帝人はすでに方向転換をしていた。 「待て待て待って!!どうして帰ろうとすんの!?デートいや!?俺とデート嫌!?嫌なのもしかして!?俺、いつから帝人に嫌われてたの!?正臣ショックで死んじゃう!!!」 帰る気満々の帝人の腕をつかんで正臣は引き止めた。口から出る顔を真っ赤にしたくなる言葉の数々に、実際帝人は顔を真っ赤にしながら口をパクパクと開閉させていた。そして一度深呼吸をするとポカリと正臣の頭を殴った。 「ちょ…滝口くんと門田さんがいるのに何をいいだすのさ!!!」 「別にいいだろー?学校でも公認の仲なんだしよー?」 「そういうもんだいじゃない!」 「何、照れてんの?照れ?照れなの?え、俺まだまだ帝人にラブラブちゅっちゅ??フォーリンラブ??」 「正臣、ちょっとコンビニでガムテープ買ってくるね?」 「ん?何するんだ?」 「ちょっとうるさい口を封じようかなって。」 目がマジだった。のちの正臣は滝口にそう語った。 帝人の発言を聞き、正臣は唇を引き攣らせた笑みを浮かべ、素直に、 「でも、実際帝人とデートしたいのは本気だし、口封じしてぇならすればいい。」 謝ることはしなかった。 清々しいほどまでに堂々とした立ち振る舞いに本気だった帝人も諦めた様に肩を竦めた。 「でもダブルデートって……どういうこと?」 「あれ、帝人しら」 「あー紀田。で、何処行くんだ?」 「……そうすうねーこれと言った予定はないっすけど……改装オープンでもしたサンシャインの水族館でも行きます?割引チケット持ってますし」 最早何を言っても無駄な正臣を見て自分たちの話題は終了させ、初めに浮かんだ疑問を口にすれば正臣が説明すると同時に門田が口を挟んでくる。 一瞬黙った正臣だが、何かを理解したのかそのまま話題を流す様に今日の予定を告げる。 返事を聞かないまま、正臣は帝人の手を取り、歩き出し、それに続くように門田と滝口も歩き始めた。 休日の街並み、逸れないようにと言うかのように控えめに、そっと門田は滝口の手を取って。 一瞬びっくりした滝口と目を合わせ互いに照れたように笑い、彼らもそっとダブルデートとやらを興じることにする。 そして各々、将又全員で会話に花を咲かせながら行きついたサンシャインビル。その中の娯楽施設へ彼らは足を運ぶ。 楽しそうに周りに溶け込む彼らの後を追う影に気付かないまま……。 着いた水族館の入り口。 受付でパンフをもらっている帝人と滝口の隙を見て正臣は門田に声を掛けた。 「門田さん、逸れたふりして帝人と二人っきりにしてもらってもいいですか?」 「あ?あぁ、別にかまわねーよ。けど、あんまうろちょろするなよ?」 「子供じゃないんですし大丈夫ですって。ありがとうございます!」 「門田さん、紀田。お待たせ。」 「お待たせ。」 戻ってきた二人を見て門田と正臣はいつも通りの笑みを浮かべ、それぞれの恋人の隣に立ち、歩き出す。 正臣は帝人の持つパンフを覗き込むように行先を吟味しながら、門田はどこに行こうか話しかけている滝口を微笑みながら見守りながら。 それぞれの想いを心に秘めながらデートは始まった。 館内の案内路順に歩きながら正臣は人の流れを利用しながら少しずつ門田達と距離を離していく。そのことに気付きながら門田は敢えて近くの水槽を指差した。 「滝口、これってなんていうんだ?」 「え、えっとそれは……」 水槽の前に足を止める門田と滝口。 門田の問いに滝口は持っていたパンフレットからその情報を探す。 水槽の中を華麗に泳ぐ小さな魚たち。色とりどりで日本の川や海などには生息しないであろう彼らの名前を水槽横のプレートに見つけて滝口は門田に指を指しながら答えた。 「熱帯魚か。」 「みたいっすね」 指差す方に書かれた文字を読み取りながらポツリとつぶやく門田に静かに滝口は頷いた。 それ以上何かを話すわけでもなく二人ただただ目の前の水槽の中で優雅に泳ぐ魚を見つめた。 時間だけがゆったりの流れ、周りの景色だけが変わっていく。魚の泳ぐ姿だったり、人混みの様子だったり。 ただただ二人は見つめていた。自由に不自由に泳ぐ魚たちを。 その沈黙を不意に門田が破った。 「紀田には感謝しねーとな。」 「え?」 「このデートに誘ったのもだが、あいつ『帝人と二人っきりにさせてくれ』って俺に頼んできたんだけどよ、どうせあいつのことだ。それだけじゃなかったんだろうな。」 「紀田らしいっすね。」 「……出口までまぁ………楽しむか…デート。」 「出口までなんですか?」 仄かに顔を赤らめる門田にクスクスと悪戯めいた笑みを浮かべる滝口。 そっと伸ばされ握られた手を握り返し、すでに見えなくなっているカップルに感謝しつつ歩き出した。 ♂♀ 一方片思いの様で熟年カップル。 帝人の手を離さぬまま正臣はそそくさと足を進め、巨大水槽の前まで来ていた。 「門田さんうまくやってかな…」 「え?」 「うーにゃ、何でもねー。」 二人で手を繋いだまま壮大に泳ぐ魚を見つめながら正臣はポツリとつぶやいた。 門田が察した通り、正臣は彼らを二人っきりにするため、自分たちを話題に上げて彼らを二人っきりにしたのだ。 ひょんなことから彼らの関係を知った正臣。時折滝口からその様子を聞かせてもらっているのだがどうもデートらしい、恋人らしいことはしてないという。ならばお節介だと自覚しながら正臣は今日のデートを企画したのだ。 その成否を気にしながらも、自分も楽しむことにする。 そうして呟いた言葉に反応する帝人を抱きしめ、真っ赤になった恋人に幸せを噛みしめながら、頬に平手をもらうのだった。 「全く油断も隙もないんだから!」 「別にいいじゃん、手は繋いでたくせに」 「公私をわきまえてってこと」 「弁えればいいのか?」 「え?………ま、まぁ」 「そうか」 本気では叩いていないのかそれとも我慢してるのか正臣は大したダメージも感じさせない平気な顔をしながら頬をさすっていた。 顔を真っ赤にした恋人を見ながら不服そうに唇を尖らす。 正臣にとってはほんのスキンシップ。それすらもノーと言われ子供の様に拗ねていた。 しかし帝人の『公私をわきまえて欲しい』と言う言葉に正臣は悪戯を思いついた子供の様ににやりと笑みを浮かべる。 そして帝人の肯定を聞くと手を取るとその場から帝人を連れ出した。 半ば引きずられるように歩く帝人は正臣が何を考えているのか分からず焦ったように何処に行くのかと声を掛けるが正臣からは何もかえって来ない。もしかしたら怒らせたのかと不安になるが、正臣の顔には笑顔が張り付いている。その事実に少し怒らせたとは違う別種の不安を覚えた。 その不安が的中するように帝人が連れてこられたのは水族館内に設置されたトイレ。そこの個室に連れられたかと思うと鍵を閉める音が帝人の耳に届く。 「ねぇ、なんのつもり?」 「簡易的に公私をわきまえてみようかと。」 「殴るよ?」 「殴って気が済むならどうぞ?」 「〜〜!」 苦笑を浮かべたまま帝人が尋ね、その返答に溜息をつきながら冗談を言った。正臣の答えが既に分かっているかというように。 帝人の予想通りの言葉を返し、そして覚悟を決めるように目をつぶる恋人を見てだから好きなのだと再確認する。 変なところで素直で真っ直ぐな紀田正臣の事が。 ここで本気で嫌がれば冗談だと笑って解放してくれるだろう。だからずっと親友として恋人として付き合って居られる。 「正臣、覚悟はいい?」 「ん、いつでも来い。」 低く、なるべく低い声を出しながら、自分の心中を悟られない様にする。 このドキドキとうるさい心臓の音を。真っ赤になっているであろう顔を。 帝人はそっと顔を正臣の頬に近づけて ちゅっ っと軽いリップ音を立ててすぐに離した。 頬に温かいものを感じ、瞼を上げた正臣が見たものは顔を今まで以上に真っ赤にした恋人の姿。 その愛らしい姿に正臣の理性が切れそうになるのをぐっと押さえながら幸せそうに破顔した。 「な、何……」 「んー幸せだなって。」 「よかったね。ほら、行くよ。門田さんたちきっと探してる。」 しっかりと正臣の手を握り締め帝人はトイレの個室から出て行った。 来たときとは逆に帝人に引きずられる様に歩きながら二人は水族館を楽しむ人の波に戻っていく。 【三者三様】 トイレから出てくる正臣と帝人を見つめる二つの影。 彼らに気付かれないようにそのまま後を付ける姿はまさにストーカーの様。 黒いコートを纏う青年と、童顔の少年。 「帝人先輩…何していたんだろう……」 「デートねぇ、どうして正臣くんは俺を誘わないんだ。全く。」 「どうして誘われるとおもっているんですか。」 「だって俺たち恋人だし?」 「自己演乙wwww」 「……でもさ、ねぇ青葉くん」 「気安く呼ぶな」 「なんかこれ、デートみたいだよね」 「死ねばいいのに」 こそこそと隠れながら彼らは彼らのデート(?)を興じる。 ‐‐‐‐ 陽斗様ぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!! お誕生日おめでとうございまするぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううう!!!!!!! というわけで、びっくりさせようと、書いてみました。一応正帝、門滝、臨青トリプルデート。某カップルはデートと言っていいのか疑問ですが…wwww いつもお世話なってます美味しいものをいただいています。これからもよろしくお願いします!!!! ではではお粗末さまでした。こんなものよりもっといいもんよこせやと言われればまた書き直しますので☆ |