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今日も、変わらない日常(青正)



「紀田先輩!」

来良学園の校門。
既に授業も終わり、部活動や委員などの用事で残っている生徒以外は校舎に残っいない。そのため正門付近も生徒は疎らで各々の目的をもって歩いている生徒をちらほらと見かける程度だ。
その門に背中を預け、携帯で時間つぶしをしている私服にジャケットを羽織る少年に制服を着こなした少年が駆け寄った。
茶髪にピアスといったちゃらい恰好の少年に比べ、彼は髪も染めておらず目立った装飾品もつけていない純真な童顔少年。
一見接点などなさそうな二人だが、共通の知り合いを通じて顔見知りになった。今はその共通の知り合いはいないものの互いの性格もあり、お互いにも仲良くなっている。いつもは彼らの他に二人を加え、下校など一緒にする姿もよく見られるのだが今日はいないようだ。
後輩の童顔の少年がそのことに気付き首を傾げて先輩を見る。

「あれ、帝人先輩と杏里先輩は来てないんですか?」
「あー帝人と杏里は放課後デート。誰も居ない教室で愛を育んでる最中さ。まぁ、彼女のいない俺ら二人は蚊帳の外。淋しく帰れってさ。どう、ナンパでも行く?」
「最近多いですね。忙しいんですか?」

正臣の茶化した言い方も慣れた様にスルーし、真意をくみ取っては反応する青葉。
自分たちの共通の知り合い、自分の幼馴染、帝人に似てきたと苦笑を浮かべながら正臣は歩き出した。ちゃんと青葉がついてくることを確認しながらその足は繁華街に向う。

「んーほら、俺らってもうすぐ修学旅行だろ?それの話し合いが白熱してるだとよ。他にもその雑用もあるみたいでさ。手伝ってもいいけど…ま、つまりは二人っきりにしてくっつけてやろうという正臣キューピットの出番ってこと。俺は俺で世界中の女の事よろしくやるってゆ用事もあるわけだな。」
「そういって淋しいからナンパとかしているんじゃないんですか?」
「おいおい。何を言っている少年よ。そこに女の子が居たら迷わず声を掛ける。お茶に誘う!それが紳士たる者の常識だろ。あ、おねーさん、一緒お茶しません?あ、いい。じゃ、待たねー!」
「……幸せそうですね。」
「まぁな。可愛い後輩とも仲睦まじくて不満なんてもんはないよ。」

歩きながら声を掛ける正臣に呆れたように隠そうとせず堂々と溜息をつく青葉。それに気付きながらもわざとやっている節のある正臣は笑みを深めるだけで何も言わない。
そのまま女の子語りへと入る正臣に青葉を彼の制服の裾を引く。呼び止められた正臣は歩みを止めて振り返ると、そこには青葉の顔がアップに映り、そして己の唇に温かさを感じた。
数秒触れ合った唇はすぐに離れていき、正臣の視界には悪戯が成功したような無邪気な笑顔を浮かべる青葉が居た。

「女の子に縁がない紀田先輩に俺のモテオーラのおすそわけです。実はこの前女の子からキスされたんですよね。二人から。」
「な、いつだ、いつされたんだ!先輩にもちゃんと紹介しなさい!」
「入学式の次の日だったかです。」
「一か月も前…だと!?よし、今からその後輩ちゃんを呼びなさい。先輩のおごりで遊びましょう。」
「つか、キスはスルー?先輩そっちもイケる系?」
「女の子との間接キスなのでノー問題です」
「なんですかその俺様ルール」

くすくすと笑いながら青葉と正臣の先輩後輩コンビは池袋を歩く。
いつもと変わらず適当に遊んで、適当に時間を潰して、時間になったら分かれる。

今日も変わらない日常。




【今日も、変わらない日常】




















なんて言う日常もあったのだろうか。
出会い方、過去のあり方が違えば。



目の前の状況を見ながら青葉は静かに考える。
自分の仲間に押さえつけられて身動き一つ取れなくなっている年上の少年を冷めた目で見つめる。
地面に這いつくばるように背中から押さえつけられている紀田正臣の目の前に屈むと青葉をその顎を捉え、上向かせた。
恐怖がないまっすぐとした強い強い瞳。
睨むつけられる視線を受け流しながら青葉は苦々しく口端を釣り上げた。

「アンタがいると帝人先輩の邪魔になるんですよね。ですからちょっと俺の友達と遊んでてください。」

絶対に手に入らないもの。
青葉は心の奥で手を伸ばす前に諦めた想いを押し込みながら静かに静かに言い放った。

「時間はたっぷりありますし……そういうの好きでしょ。紀田先輩?」









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よくよく考えれば青正書いてないなーっと思って書いてみた。いや、ツイッターで青正書いたら挿絵描くよ!って言ってくれた人いたら(忘れてたけど)
青正かーって考えてたら、正臣と普通に学校生活で先輩後輩として過ごしたかったとか思っている青葉がいたら萌えるなと思ったんだ。それがこれだよ。
出会いが違ったらこんな未来もあったのかな、なんて。




あきゅろす。
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