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周知の事実との温度差(静正)




夕刻、学校帰りの正臣は帝人と杏里と別れ帰路についていた。しかし帰っても一人、何もすることが無ければナンパでもしようかと駅前まで足を運ぶ。すると目の前に見知った姿。こっそり背後まで近付けばちょんちょんっと肩を叩いて振り向く恋人に笑顔を向けた。

「お兄ーさん。俺とお茶しない?」
「…紀田?」

金髪、サングラスにバーテン服。池袋に住む者なら言わずと知れた有名人。平和島静雄を誘い、正臣は少し早めの夕食へと出掛けた。


そしてその帰り道、正臣はふと思い出した様に呟いた。

「『平和島静雄』って結構合ってますよね。流石静雄さん、名は体を現すって言うことだけある。」
「…は?何言ってんだ。手前が知らねー訳ねーだろ?名前負けしてるって言われてんの。」

何の前触れもない呟きとその内容に静雄は訳が分からないと言った表情で正臣を見るが正臣は至って本気だ。からかっている様子も見受けられず、怒りはしないものの戸惑いを見せている。そんな静雄に気付いてか気付いてないのか正臣はなおも話しを続け、真っすぐな眼差しで静雄を見た。

「そいつらの目こそ節穴っすよ。ちゃんと静雄さんを知らない証拠です。」
「いや、だから…」
「確かに静雄さんは怒った時はそりゃ静かで平和ではないと思いますよ。」

適当に歩いている内に行き着く公園。何処からか餌を求め静雄の足元に近付いてきた猫を正臣は抱き上げる。

「でも、怒ってない時の静雄さんは誰よりも静かで平和な人だと思うんす。そりゃ誰でも怒ってない時はそうなんでしょうが、でも怖い人に動物は懐きません。」

ほら、と足元に来た猫を見せるとタイミング良く猫はにゃーと鳴いた。それから体を動かし正臣の手から離れると猫は再び静雄の足に纏わり付き、餌をねだるように頭を擦りつけている。

「実は俺、その猫に良く静雄さんが餌やってるとこ知ってたり。」

小さく舌を出して笑顔を作ると屈み猫の頭を撫でる。ゴロゴロと喉を鳴らす猫に笑みを深めた後静雄を見上げる。

「静雄さんは誰よりも優しくて、暴力が嫌いで、…『平和島静雄』の名前がピッタリな人ですよ。」
「…良くもま、…んなこっぱずかしい事素面で言えるな。」
「俺、軟派野郎っすから。」

気恥ずかしさからか口元に手を当てる静雄を見ながらニコッと笑顔を作ると伸びてきた手が正臣の頭に置かれ、優しく、優しく、壊れ物を触る様に優しく動く。嬉しいのか気持ちいいのか、目の前の猫の様に正臣も目を細め頬が綻んでいく。
そっと正臣が立ち上がると頭を撫でていた手は下降していき頬を包み込む。同時に近付く静雄の顔に正臣はゆっくりと目を閉じた。
そして唇が触れる直前、声が降る。

「熱いなあ、もう。そういうことは余所でやってくれるかな、シズちゃん?」

いつの間にか横に立つ平和島静雄の天敵、折原臨也。場の空気も読まず手団扇で熱いとジェスチャーしながら恋人の時間に水を差す。そうしなくても出会えば喧嘩沙汰の二人。静雄が臨也の存在を認識するや否や殴り掛かった。

「いぃぃぃいざぁぁああやぁぁああ!!」
「えー今日は勘弁してよさあ?俺も暇じゃないんだし。」

走り去る臨也を追い掛ける静雄。そして二人の喧嘩に気付く通行人は口々に静雄がまた暴れていると呟いている。置いてきぼりを喰らう正臣だがやれやれと肩を落としつつ、周りの呟きに笑みを作った。

「…まぁ、静雄さんの事は俺だけが気付き知ってればいいか。」

遠くから聞こえる破壊音に当分終わりそうにないなと思いながら同じ様に置き去りにされた猫に笑い掛けた。

「だからお前も静雄さんの事は内緒な?」



【周知の事実と温度差】


でも、埋める必要はない。


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『Poissond avril』のノヅ様に捧げます、相互御礼の静正です!名前の話が書きたくて、こうなりました。お待たせした割にはヘボくてすみました!
ノヅ様のみお持ち帰りや苦情や書き直し受け付けてます。これからもよろしくお願いします!






あきゅろす。
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