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どんな姿でも愛してる(帝正)


「帝人、帝人?」
「ん…」
「大丈夫か?」

パチパチと軽く頬を叩かれ僕は意識を浮上させた。可笑しいな、僕はいつ寝たのだろう。疲れていた記憶もないはずだ、だから気付いたら寝ていたということもないはず。
自分を呼ぶ声にゆっくり瞼を上げれば僕の顔が飛び込んでくる。あれ、こんなところに鏡なんかあったっけ?

「帝人?」

それにこれは僕の声だ。僕は何も喋ってないのにどうして?そもそも自分で『帝人』なんて言うはずがない。それにこの鏡…僕はこんな顔をしているのだろうか。意識がはっきりとしなくてぼーっとしているのに鏡の僕は眉尻下げて不安げにしている。

「…れ、正臣…は?」

今は自分の事は放っておこう。体を起こし寝る前に一緒にいたはずの正臣を探す。僕が勝手に寝ちゃったから帰ったかな?それならメールか置き手紙ぐらいあるかなと考えた所で思考を止めた。
あれ、今、正臣の声がした気がする。でも何処から?ワンルームのこの部屋に隠れられる場所などトイレか押し入れぐらいだけどかなり近くから聞こえたから隠れているとも思えない。

「帝人!いいか、驚かずに聞け。」

そして何度も僕は僕の名前を呼ぶ。肩を掴まれ鏡がどうして僕に触れられるのだろう。

「俺達、なんか入れ代わった見たいだぞ。」
「は…?」

♂♀


何の冗談かと思った。正臣の説明を聞きながら見せられた鏡に映る姿は正臣の姿で、自分の意志と同じように動く体。
精神が入れ代わるなんて何処の漫画だって言う話だけど現に事は起きている訳で、現実だと思い知らされる。
正臣の推察だけど原因はアレだ。天井からぶら下がる電灯。電球が切れそうだと伝えたら正臣が変えてくれると言う話になって、作業中にバランスを崩した正臣が僕の上に倒れて来た。それが原因だろうと。

「それは良いけど戻るの…って何見てるの?」

今日は土曜日だから学校もないし家に引きこもれるから良いけど明後日には学校だ。互いが互いのフリをして登校しても良いけど正臣のテンション何て演じれる自信はないし、正臣に僕のフリをさせて変な事をしないとも限らない。出来ればさっさと戻りたいと正臣を見るとじっと見つめられていることに気付き、怪訝な表情を作り首を傾げる。
するとふむ、と笑い満面の笑顔の僕がいた。いや、姿だけどね。

「やっぱり俺は端から見ても俺はカッコイイなと自覚していたわけよ。悩ましげな表情も冷めた表情も…俺はこうして知らずに世界中の女の子を虜にしてしまうんだな。罪な男、それが俺。紀田ま」
「ナルシストはいいから真剣に考えなよ。」

というか僕の姿と声でその発言は止めて。正臣だから許せるいつもの発言も僕の姿じゃ気持ち悪い。

「…帝人が冷たい。」
「平常運行だけど?」

帝人ーと何時も以上にベタベタとしてくる正臣。暑いから正直離れて欲しい。
無視を続けていると近付く顔にパッと正臣の口を塞ぐ。

「キスも禁止?」
「戻るまで禁止。」
「何で!?」
「いくら精神が正臣だからって正臣以外とする気はない。」
「体は帝人と俺でいつもと変わらない。」
「僕は正臣みたいにナルシストじゃないから無理。」

帝人のケチ!って言われても無理なのもは無理だ。僕はナルシストじゃないし正臣が好きなんだ。心が正臣なら良いじゃないかというのもあるけど、自分の顔じゃそういう気も起きない。
だけど拗ねる様に部屋の隅で体育座りをする姿は流石に言い過ぎたかと近寄るとギュッと後ろから抱きしめた。

「帝人?」

振り向く頬にキスをして耳元で囁く。

「だからって言って正臣を嫌いになった訳じゃないんだし拗ねないの。キスとかは無理だけどこうしててあげるから。」

甘える様にこちらに振り向く正臣を正面から抱きしめて早く戻れと願う。もう一度強い衝撃でも受ければ良いのかな…。でもなるべく正臣の体は傷付けたくないし。

「帝人、ナルシスト?」
「正臣…階段から突き落とすよ?」
「ゴメンナサイ」
「まぁ、ナルシスト…かもね。自分を好きじゃなきゃ他人(正臣)も好きになれない訳だし…」

正臣の顎を捉えてこちらを向かせてそっと顔を近付ける。何をされるか分かった正臣はゆっくり目を閉じた。

「好きだよ、正臣。」

返答を聞く前に、優しく唇を重ねた。


【どんな姿でも愛してる】



ちなみに一晩すれば自然に元に戻っていた。






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帝人と正臣の入れ代わりってさ…見た目、正帝で中身、帝正で一粒で二度美味しい事に気づきました。でも文章だから美味しさも半減…誰かイラストで描いてくれませんかね?
さて、27つ目のフリリクは七子様の『体入れ代わりパロ。帝正or静正。』でした!静正の正静でも良かったかなと思いましたがもう脳内が正帝正っていたのでこうなりました。
平凡な文章になりましたが七子様のみお持ち帰り、苦情、書き直し受け付けています。
企画参加ありがとうございます!






あきゅろす。
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