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放課後パニック!(正臣総受け)


「よーし、月一恒例クラス内バトルロイヤル始めるぞー!」

俺の掛け声にクラスの皆は一斉に声を上げる。
月一恒例バトルロイヤルとは俺と何人かの同志達が決めたクラスの親睦を深めようと言う建前の罰ゲーム有りのちょっとしたお遊びだ。放課後を利用するから教師からのお咎めはナシ!つか、時たまサトチーが交じっているんだよな。今日は居ないみたいだが。
まぁ、強制じゃねーし俺達同志がテキトーに日取りを決めるからバイトで出れない奴もいる。そんな奴らは「くそっ今日かよ!出れねぇ!」と悔しがっている奴もチラホラ居る。結構人気なんだよな、このお遊び。ガキかっつーの。ま、俺も楽しんでやってるから人のこと言えねーけどな。
さぁ、今日の内容と罰ゲームは…


♂♀



嘘だと言ってくれ、神よ!
今回のゲームはクラス総勢25人の大富豪。クラス全員じゃねーのが淋しいぜ…じゃくて、その大富豪に完敗した俺こと紀田正臣、は…自分で用意した罰ゲームをすることにナリマシタ。

「紀ー田、観念しろよ?」
「だが断る!」
「させるか!」

ソレを持って近付くかつて同胞だったダチ。くそっ自分の身が大切で友達を売るのか!
踵を返して逃げようとしたが既に遅し。後ろから別の野郎に拘束されそのまま俺は尾縄頂戴!になった。
そ し て …

「紀田、似合い過ぎ!」
「紀田くん、可愛い!」
「なぁ、『お帰りなさいませ、ご主人様』とか言ってみてくれよ。」

無理矢理生着替え☆
俺の姿を見てはクラスの女子からは黄色い声に男子からは笑い声。冗談を言うやつまで現れる。
今、俺はメイドさんになりました…。
女の子が着たら可愛いだろうなとか考えて用意したメイド服。まさか自分が着ると誰が思う?!
くそっ…こうならミニスカで露出が激しいやつを選ぶんじゃなかった…!かなり恥ずかしい。
そして俺にとっての死刑宣告。

「じゃ、そのまま帰って明日何があったか報告な。」

ゲームでの勝者は敗者に一つ罰ゲームにちなんだ命令が出来る。つまりそれはこれで…このまま帰れと?!最悪過ぎる。
知り合いに会うことがないことを願いながら帰宅することとなった。

一番の難関はまさに今だと思うんだ。この来良学園、校内でバレるとなると卒業までの話の肴だ。いや、下手をすると一生…それだけは避けたい。どの順路で校門を向かうかとシミュレーションをしてみるが部活も終わりに近付く時間帯、裏門も正門も帰宅する学生ばかりだ。つまり、逃げ道はない。

「紀田、帰らねーの?」
「そのまま学校に泊まるのはなしな。」
「わかってる!さっさと帰れ!」

ゲームも終わりクラスのやつらも帰る仕度を終え、教室を出ていく。その際に掛けられる言葉が一々頭にくる。絶対来月はリベンジしてやる…!
決意新たにいざ試練の道。教室を一歩出た所で声が掛かる。

「あれ、紀田じゃん。どうしたの、その格好?」

聞き覚えのある声、それもそうだ。最近良くつるむ様になったD組の友、滝口亮がそこには居た。
マジマジと見られ、俺は冷や汗と苦笑いを浮かべる。
帝人達は先に帰っているはずだかダチには会わねーって思ったのが一生の不覚だった!流石に無視することも出来ずどう答えようか迷う。クラスの罰ゲームだって言えば早いのは分かる。だが僅差で負けたならまだしもこてんぱんにやられた。それを言うには少しだけプライドが許さない。

「…そういえば今日は紀田のクラスはクラスゲームの日だったらしいね。もしかしてその罰ゲーム?」
「当たり前だろ!じゃなきゃ誰がこんな格好…。」

察しが言うというかバレているならもう隠す必要がなくなる。つか、まともな解釈で良かった。これが普通だよな、うん。俺の周りにはおかしな思考の奴らばかりだから最近感性が狂ってきた気がしていた。

「似合うね。」
「…へ?」
「あ、いや…。送っていこうか?校門まで人気のない抜け道知ってるから。」
「頼む!」
「了解。」

一瞬滝口まであいつらと同じかと思ってしまった。いけない、いけない。汚染されすぎだぞ、俺!
緩く考えを振り払う様に首を振っていると滝口からの申し出。校門までどう人と接触せずに行こうか考えていただけに有り難い申し出だった。両手を掴み、藁にも縋る思いで滝口を見れば了承の笑みと共に指に口付けられた。
…た、滝口?
まさかな、と思いつつ、気にしない事に決める。それ以上何もないしな、うん。こんな格好だから女子の扱いと間違えたに違いない。
手を引かれ滝口が言う様にそれから先生とすら会わずに裏門まで辿り着く事が出来た。そこからは滝口には用があるらしく解散だ。
一人にして欲しくない気持ちも合ったがさっさと帰ればいい話だ。頭の中で帰宅ルートを浮かべながら街へと出た。



………。
人気のない道として裏道を選んだのがいけなかったのかこの格好がいけなかったのか、軽くデシャブ感がある光景を目の当たりにする。

「なぁメイドさん。こんなところで何やってんの?」
「こんな格好だから営業じゃね?」
「え、なら御主人様になって御奉仕して貰うか。」
「ギャハハハッ!それいいな!な、メイドさん。御奉仕してくれよ?」
「ほら、御主人様のめーれー、聞けなつー訳にはいかねーよなぁ?」

三人組の如何にも という野郎に囲まれました。
こいつら見る目ないのか?俺は男だってのに…あぁ、殴って黙らせるか。どうせ俺、メイドじゃねーし、いかがわしい事考えてるこいつらが悪ーし。
対処を決めた所で隙を伺う。すると男達の背後に影。反射的に顔を上げるとバーテン服に金髪、サングラス。まさか、と思う頃には俺の目の前に立っていた男の一人が俺にとって前方、男にとっては後方へと飛ばされた。

「手前ら…何やってんだ?」

地を這うような低い声。多分俺には向けられていないと分かっていても全身から冷や汗が流れてくるほど怒気を含んでいる。
仲間の一人が訳も分からないまま一瞬にして再起不能に追い込まれたんだ、相手も確認しないで残りの二人がこの池袋で最も喧嘩を売っていけない奴に、

「あぁん?!何だよ、てめ…」
「いきなり喧嘩つーのは…」

喧嘩を売った。

「「平和島…静…雄……」」

相手を確認して凍り付くバカ二人。次の瞬間には慌てて走り出して行った。あ、おーい、一人忘れモンだぞー。流石に放っておくのは酷くね?
まぁ、俺には関係ねっか。

「大丈夫か、紀田?」
「あ、はい。助かりました。ありがとうございます。」
「しかし…どうしたんだ、その格好…」

怒りはどうやら収まっているらしい。いつもの穏やかな表情で俺を見る。うん、そこは見て見ぬフリの方が有り難かった。疑問に思うのは無理ないとは思うけど…。とりあえず変な誤解も面倒で嫌なのでクラスゲームの罰ゲームと簡単に説明した。完敗のプライド?もうそんなモン捨てた。今は如何に早く家に帰るかが最優先だ!

「なんつーか、楽しそうなクラスだな。」
「えぇ、馬鹿ばっかで楽しーすよ。これが他の奴だったら更に最高!だったんすけどね。来月はリベンジしますよ!」

自分の学生時代を思い出しているのか懐かしげな表情をした静雄さんが居た。目が合い、満面の笑みを浮かべ決意を拳を作り語っていると頭を撫でられ「けど似合ってる。」と微笑み掛けられ驚きと予想外の言葉に頭が一瞬真っ白になる。
いやいやいや、静雄さんだけはまともだと思っていたのに、へ、ちょっと待て。空耳だよな。それか別の言葉と聞き間違えたに違いない。そうだ、静雄さんはまともだ。

「っと悪い。」

ほら、静雄さんもきっと言い間違えたんだ。

「野郎に言われても気持ち悪いだけだよな。」
「…いえ。」

言い間違えでも空耳でも無かった。出来ればその言葉自体を訂正して欲かったです。でも、裏も無くからかう訳でも無く、素直な感想に嫌な気分にはならなかった。

「ありがとうございます、って言うのも変ですが…」

だから俺も素直な礼が言えたのかもしれない。

「そうか。…また変な奴に絡まれっと面倒だろ。送ってく。」
「え、」

迷惑か?と驚いていると聞き返され直ぐに違うと否定した。失礼な話、静雄さんが居れば変な輩は近寄ってこない。つまり俺の身の安全は保証されたようなもので。

「お願いします!」

本日二度目の救いの手となった。

静雄さんと並んで歩き、今度時間が会う時にでもお礼にご飯を奢らせて欲しいと頼むが静雄さんは中々了承してくれない。静雄さんは自分がしてやりたかったから礼はいらないと言うが俺だって自分がしてやりたいからだと説き伏せてみるも上手くいかない。話が平行線のまま進む中、前から門田さんが歩いてくるのが見えた。

「よう、静雄に…紀田か?どうしたんだ、その格好…。まさかまた狩沢と遊馬崎か?」
「あ、これは」

俺の格好を見て直ぐに狩沢さんと遊馬崎さんが出て来ると言うのもどうなんだろうか。良く被害には遭っているけれど…。そんなことを思いながら違うと否定してから簡単にクラスゲームの罰ゲームだと伝えた。すると静雄さんの時と似たように頭を撫でられる。
こうも似たような反応だと二人の学生時代が気になるな。こんな馬鹿げた事も出来ないくらいカッチカチに校則に固められていたのだろうかと思い、同級生に静雄さんの天敵である臨也さんの存在を思い出し何と無く納得してしまう。きっと二人が出会ったら即喧嘩だ。それでは平穏な学園生活を送るのは難しい。
だから俺達がやってるみたいな馬鹿げた事が出来る学校になったことを微笑ましく思っている…とか?そんな勝手な解釈をしていると門田さんの後ろから人影が見えた。

「門田さん!そこの可愛いメイドちゃんは何すか?」
「ドタチン、まさか紀田くんからその娘に乗り換えちゃうのー?」

聞き覚えのある声、と言うが今3番目に会いたくない二人組だ。まだメイド=紀田正臣だと気付いていないらしい。しめた、これはチャンス!

「門田さん、静雄さん、俺これで!流石にあの二人に捕まるのは避けたいので!」
「あ…あぁ。」
「気をつけろよ。あいつらは油断出来ねーから。」

門田さん、そんな怖いこと言わないで下さい。
苦笑いを浮かべつつ、近寄ってくる二人とは逆方向へと走り出した。あ、そういえば静雄さんに助けて貰ったお礼言いそびれている気がする…。くそっ、すみません、静雄さん。今は自分の身が大切なんです!

「あー逃げちゃった。ねー、ドタチン。あのメイドさんとは知り合い?」
「そういえば紀田くんに似てませんでした、彼。」
「えー、ちょっと何それ!紀田くんがついに自らメイドになっちゃったの?あ、それでドタチンに御奉仕に来たとか?あーごめんね、私達邪魔しちゃった?」
「人違いだろ…。単に道を聞かれただけだ。」
「門田ァ…もう行くわ。」
「あ、あぁ。キレんなよ。」

背後に聞こえる声に門田さんナイス!と思ったのは言うまでもない。

そして走ること数分、追って来ている訳ではないのでもう良いかと足を止めた。適当に走っていたせいで最短帰宅ルートから外れた。ここからだとどう行った方が近いか周りを見渡し自分の居る位置を確かめる。

「まっさおみくーん!」

キョロキョロと辺りを見渡していると後ろから思いっ切り抱きしめられた。超御機嫌で、ウザったい声。さりげにスカートを捲り侵入してくる手。こんな変質者は一人しかいない。最も会いたく無かった人物。

「臨也さ、ん!いい加減にしてください!」

折原臨也。過去の事もあり関わりたくないのだが本人はそれを許さず事あるごとに俺にちょっかいを出してくる。気合いを入れて肘打ちを腹に食らわそうとしたがその前に身を引き避けられた。伊達に静雄さんと喧嘩をしていないと言うわけだ。難無く避けられる。

「ねえ、それよりなんでそんな格好してるの?君にそんな趣味が合ったなんて情報はまだ手に入ってなかったなあ。」
「は…違います!これはただの」

真実を言いかけた所で臨也さんの人差し指が唇に触れる。小さい子供にしーっと諭す様に。

「いいよ。俺は君がどんな格好だって、どんな趣味を持っていたって愛する自信はあるからさあ。だから皆まで言わなくても大丈夫。」

あぁ、好き勝手言わせて置けばいけしゃあしゃあと!誰がそんなこと言いやがった?!

「人の話は最後まで聞きましょうと幼稚園で習いませんでしたか?」
「習ったよ?でも分かっている事をわざわざ言わせる必要もないだろ?」
「勝手な自己解釈、自己解決は止めて下さい。これはただのゲームの罰ゲームですよ。」
「…あぁ、完敗したんだっけ?」

この人は…!知りながら俺をからかっているのか!
沸々と沸き上がる殺意に一度この人を再起不能までに殴り倒したくなる。

「しかし…似合うね。いっそうずっとそういう格好してればいいんじゃない?勿論、ご主人様は俺で。」
「死んでも嫌です。」

顎を囚われ無理矢理目線を合わせさせられる。臨也さんの目付きは肉食獣のソレで、睨み返していないと雰囲気に飲み込まれる錯覚がしてしまう。離せと手を振り払う瞬間、俺達の横をコンビニのごみ箱がスライディングしていった。
…後少しで俺にも当たり掛けたんだけど。
視線をごみ箱が飛んで来た方、つまり臨也さんの背後へ向けると予想通りと言うか静雄さんが額に青筋立てて立っている。あれ、手に持っているのはもしかしなくても標識ですか?

「心配になって来てみりゃなーにやってんだ、臨也くんよぉ!」
「シズちゃん、空気ぐらい読もうよ?今、俺達は愛を確かめ合っている所なんだからさ?」
「臨也さん、寝言は死んでから言って下さい。」
「正臣くん、死人に口なしって言葉知ってる?」

静雄さんと臨也さんの喧嘩に巻き込まれない様に距離を置いていると本当、あの口からはろくな言葉が出て来ない。否定しても無視しても結局は臨也さんに乗せられる事となる。

「臨也…今日と言う今日は死ね!」

静雄さんの言葉で始まる常識外れな喧嘩。俺は慌ててその場を去る。
破壊音が聞こえるけど、慣れてしまった感覚にどうしようかと思いながら道を歩いていると前方に見える人物に足を止めた。幸いまだ俺には気付いていないらしい。ぼーっと間抜け面で道を歩いている。しかし俺の背後から聞こえる音に気付いたのだろう、こちらを向き、目が合う。

「正臣、何その格好?」

うん、予想通りの言葉が我が友人から降ってきた。

「よお、帝人!今帰りか?」
「話を逸らそうとしても駄目だよ?それ、詳しく教えてくれないかな?」

俺の存在に気付けば方向転換。スタスタと軽快な足どりで近付いて来る帝人に話を逸らす事に失敗した事を悟る。

「えっと…これはク」
「それってこの前ドン○ホーテで買ってたメイド服だよね?何、実はクラスの罰ゲーム用とか言いながら自分が着たかったって言うオチ?スカートもこんなに短くしてさ、正臣は本当馬鹿で無自覚だよね。」
「帝人、かなりの誤解が生じてる!つか無自覚って何が?!」
「今日だって一人で帰らせるし、正臣がこっち来たならずっと一緒に居たいのに正臣はいつもナンパナンパでどこか行っちゃうし、オマケにそんな格好で街歩いて静雄さんや臨也さんをたぶらかしているみたいだし…」
「み、帝人…?話が見えない。」
「正臣、そろそろ気持ちに気付いてもいいんじゃない?」
「え…」

つらづらと俺への不満を言葉に乗せる帝人。焦点が合わない程顔が近付き、じっと見透かされる様に真っ直ぐ見つめられ、からかっているわけでも無いことを知る。気持ちってなんだよ。というか帝人、普段からそんなこと思っていたのか…?

「なんて、本気にした?正臣がいつも僕をからかうからお返し。」
「…へ?」
「ゲーム、完敗らしいね。用事でまだ学校に残っていたからさ、帰る時間が合うなら一緒に帰ろうかなって正臣のクラス尋ねたらそうやって聞いたよ。正臣、変な格好。」

クスクスといつもの様に笑う帝人に拍子抜けした。今までのは嘘?からかっていただけ?…でも、俺には全部が嘘の様には聞こえなかった。
しかし、そこに深く突っ込むのは何かが崩れそうな気がして、何も言えなくなる。

「…へ、変なのは承知の上だっての。まさか自分が着るはめになるとは思わなかったぜ。一生の不覚!」
「はいはい、変な人に絡まれる前に…帰ろう?」

いつもと変わらない会話。差し出された手を握り、どちらともなく歩き出した。

「あ、でも一緒に歩くのは恥ずかしいから離れてね。」
「帝人。本当何気に酷いよな、お前。」

手を繋いでいたのも一瞬で、離れた温もりに何故か淋しい気もしながら同じ帰り道を歩く。いつもと変わりなく並んで歩いていると何とも無情な一言が。俺だって好き好んでこんな格好をしているわけじゃない!誰かこいつに優しさを教えてやってくれ!
しかし口ではそういうものの離れて歩く気配はない。それはこいつの優しさか、将又別の理由か、どちらなんだろうかと帝人を伺い見ていると鳴り響く音楽。どちらの、じゃなく双方のだ。同時に着信なんて珍しいと思いながらお互いに謝りながら携帯を開く。新着メールが一件来ており開いて見て固まった。

『短髪で茶髪のメイドさんが危ない人に狙われているんです!保護して下さい!』

添付された写メに映る人物は紛れもなく俺で、何時撮られたんだろうと考える。いや、その前にこの差出人は…?ダチに進められ入るだけ入ったダラーズからのメーリングからのメールで誰かと断定することは出来ない。
ちらりと帝人を見る。帝人も驚いた様に携帯画面を見ているがどうしたんだろう。…とにかく、このまま居たらきっと勘違いしたダラーズのメンバーの巻き添いを帝人が食う。帝人にはこっち側に来て欲しくない。
すぐに適当な理由を付けて離れようとした直後腕を捕まれた。

「?!」
「この写メ、君だろ?こっち!」
「え、あ…正臣!」

反射的に手を掴んだ奴を見るが知らない奴で、でも見せられた携帯画面の写メにダラーズの一人だと核心する。振り払う前に引かれ走り出され、遠くなる帝人の声を聞くしか無かった。

「ちょ、タンマ!俺は…」
「良いから!君、さっき路地裏でも絡まれていただろ?」
「あ…」

確かにそうだけれど、でもあれはもう解決した訳で大丈夫だと言おうとした所でまた着信が。

『メイドさん、無事保護しました!追っ手は今の所なし。』

同じダラーズのアドレスで、目の前のこいつからだと核心した。だけど、追われる覚えもなく、俺は手を振り払う。

「俺は追われても狙われてもねぇ!だから保護される理由もない!」
「あ、君!」

一度足を止め、言いたい事を吐き捨てれば走り出した。一度帝人の所に戻るか、いや、まだ収拾出来てない事態に巻き込む訳にも行かない。とりあえず何処か身を潜められる場所を探すべく走り出す。
その間も似たような光景に巻き込まれた。ダラーズから逃げているようなものなのにダラーズのメンバーに助けられる、奇妙な光景。その度に誤解を解いて、走り出す。正直この発端を文句を言ってやりたい。


♂♀


その頃帝人は一人の人物に電話を掛けていた。正臣を追うにも体力的には無理だと判断し、この事態の発端を叩こうと言うわけだ。
数コールもしない内に通話となり、相手が口を開く前に冷たく冷静な声で核心めいた問いを掛ける。

「臨也さん、どういうつもりですか?ダラーズを使い正臣をどうしようと言うんですか。返答次第では」
『許さない?そもそもなんで俺だと思うんだ?このメーリングはダラーズのメンバーなら誰でも使えるだろ?』
「こんな写真を撮れるのは貴方だけです。写真の背景、さっき静雄さんと喧嘩していた場所に良く似ています。」
『とんだ推理だ!まあ、間違えではないけどさあ?』
「…ダラーズは貴方の玩具じゃありません。」
『勿論、君の、もね。別に正臣くんを傷付けるわけでもないんだ。いいじゃないか。』
「迷惑です。今後こんなことは止めて下さい。」


返答を聞く前に通話を切る。通話画面から待受へと切り替わるディスプレイに映し出される新着メールの件数。それを開く前にダラーズ全員に創始者としてメールを送った。

『今の情報は偽物です。惑わされないで下さい。』


♂♀



ダラーズの一番新しいメールが届いた頃。俺は黒バイクとツーリングしていた。
理由は簡単だ。ダラーズのメールを見たらしい黒バイクに保護された、という感じだ。
車道に止まる黒バイクにメールの事で大丈夫かと聞かれ、あれは誤解で、逆にダラーズに保護されるために追われていることを伝えると一先ず家に来て事態が落ち着くのを待った方がいいと誘われたからだ。誰か知らない奴に『保護』されるよりはと思い了承すると黒バイクは何やらメールを打ち俺を乗せて走り出した。
暫くすると黒バイクのマンションに着いたらしく一室へと案内される。
黒バイクに先にどうぞと促されてドアを開けると、

「セルティ!お帰り!」

と白衣の男に抱き着かれた。黒バイクと間違えたらしい男は可笑しいなと身体中をベタベタ触り、黒バイクに蹴飛ばされた。
南無…。

『済まないな、正臣君。馬鹿な同居人で。』
「いえ、俺の方こそなんかすみません。」

この白衣の人にも。

『構わないよ。自分の家だと思ってゆっくりしていって。』
「あ、はい。」

そのまま家に上げられ、俺は暫く黒バイクの世話になることになった。お礼にと晩御飯を作る事にして、料理を振るえば、白衣の人から「家の子にならない?」と冗談を言われ、黒バイクに黒い霧の様なもので口を塞がれていた。
楽しい家族になりそうだと笑いながら「いいですよ。」と冗談で返しながら忙しなくも楽しい一日が過ぎていく。



【放課後パニック!】



余談だが次の日このことをクラスメートに話したら労る表情で無言でポンッと肩を叩かれた。




‐‐‐‐
終わっ…た。
フリリク、23つ目は名無しの正受大好き様の『クラスの罰ゲームな災確定正臣』でした。オチがセルティ、新羅ということで正臣のピンチを救ったのはセルティ!ってアニメを参考にして書いて見ましたがどうでしょうか…。あまりセルティと新羅の場面が作れず…(だってこれ以上行くと終わりが見えず長くなるorz)すみません…。
苦情受付ます!企画参加ありがとうございました!





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