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「プレゼントは勿論君だよね。」(臨正)


家に帰ると誰かが入った気配があった。今日は波江には休みを言い渡してある。泥棒だろうか、疑問は直ぐに打ち消される。そもそもマンションの入口で部外者はシャットアウトされるセキュリティで易々と入る訳がない。まあ、泥棒ならばお手の物だろうが、部屋を荒らされた形跡も、泥棒が入ったと言う情報も、何も俺の元には届いていない。更に計画的犯行ならば俺みたいないつ帰ってくるか分からないフラフラした人間の住む部屋など選ばないだろう。
総合して、侵入者は泥棒ではないと結論つける。
理由はもう一つ。何時も仕事をしている机の上にあるメモ用紙。泥棒がわざわざこんな物を残す筈がない。メモ用紙にはこう書かれている。『左を見ろ。』
さあ、何があるのだろうか。何が起こるのか楽しみだなあ。楽しみだなあ。楽しみだ。
左を見れば本棚に整列される本に紙が挟まっているのが見えた。手に取り二つ折にされた紙を開いて見れば同じメモ用紙に似たような言葉。『上を見ろ。』
何かのゲームみたいだ。さあ、今度は何が出るだろうか。
上を見上げれば器用にも手摺りから吊された紙がヒラヒラと空調に合わせて動いていた。少し面倒だな、と思うが此処まで来たなら遊戯に付き合ってやろう。ここからでは書いてある文字が読みにくい。階段を登り、2階へと着けば手摺りから伸びる糸を引き寄せて紙をゲットする。しかしまあ、よくもこんな手の掛かる事をする。さて、次は何て書いてあるだろうか。
『馬鹿は見る。』
あーあー、もう終わりか。つまらない、実につまらない。そもそもこれに何の意味があるんだ。もう少し面白いゲームだと思っていたのにもうエンドロールか。もう一ひねりも二ひねりもして欲しい。
用済みの紙を破り捨ててやろうかと紙を二つに割いた所でまだ続きがあることに気付く。丁度手で隠れていただろう箇所に小さく、見過ごしてしまいそうなほど小さな文字で『冷蔵庫』と書かれている。
冷蔵庫?どういう意味だろうか。冷蔵庫とはあの冷蔵庫、一般家庭に実に幅広く浸透し、その機能性優れる電化製品。主に食物を冷やし保存に欠かせないあの冷蔵庫と言うことでいいのだろうか。
冷蔵庫、冷蔵庫…考えながらとりあえず簡易キッチンへ足を運ぶ。料理と言う程料理をしないキッチンには少し大きいだろう冷蔵庫を前に首を傾げる。来てみたものの先程のようなメモ用紙は見当たらない。冷蔵庫に貼付けてもないしそのあたりにも貼付けて、または置いてある様子もない。
さて、行き詰まる。ゲームセット?いや、まだ探していない場所がある。そう、冷蔵庫とは何だ?食物を冷やし保存する為にある。つまり、ただ突っ立たているだけのモノじゃない。
戸を開けると想像通りそこにはメモ用紙がある。何々…
『馬鹿は開ける。』

「…アハハハハハハハッ!もうエンディングか。」

文字の書かれたメモ用紙を貼付けられた箱ごと取り出す。小さな箱、近くの有名なケーキ屋のロゴが側面に描かれたそれを持ってソファーへ座る。箱を開くとショートケーキが2つ。
茶色いケーキを手に取り、仕事用の机を見た。

「君も一緒に食べようじゃないか。

紀田正臣くん?

ビクリと体を跳ねさせる姿も実に可愛いなあ。バレていないとでも思ったのだろうか。

「残念ながら、…窓に反射してるよ。君の姿。」

種明かしをしてやれば観念したように姿を現す正臣くん。どうしたのかな、少し顔が赤いよ?熱でもあるんじゃない?
凄いふて腐れた顔で隣に座る正臣くんの肩を抱き寄せ口付ける。

「ねえ、君の口からちゃんと聞かせてよ。」

このメモ用紙に書いてある言葉をさあ?

「…っ!………………Happy Birthday!」

ぷいっと頬を膨らませ顔を背けるけど、そんな姿も愛おしい。



【「プレゼントは勿論だよね。」】




「…黙れ。」
「照れ屋さんだね、こんな回りくどいやり方をするなんてさあ。そんなにも俺を祝うのが恥ずかしかった?机の後ろに隠れてこっそり様子を伺うぐらいだもんね。本当君は素直じゃなく、ある意味素直だ。」
「…煩い。」
「顔、赤いよ?」
「死ね!」




‐‐‐‐‐‐‐
というわけでリアルタイムでは祝えませんでしたが(だって発表過ぎてるんだもん)
臨也、Happy Birthday!
こう臨也視点で書くのは楽しいんですがウザいです。正直な話。
いつ頃の誕生日でしょうね。正臣が1年の時かな。正臣が来良去った後だと臨也刺されて居ませんもんね。その話でも良かったかなと思ったのは此処だけの話。

一応6月過ぎまでフリー。
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あきゅろす。
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