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笑って?(帝正)


※小説8巻ネタバレ捏造&妄想。



































力いっぱい殴る音がした。強く強く、握り締めた拳で、大切な友人を殴る、切ない音がする。
受け身も取れないまま殴られた衝撃で倒れ込む少年は殴られた事に呆然としていた。どうしてこうなったのだろうか、何故殴られているんだろうか、分からない。そう言った表情で、少年、竜ヶ峰帝人はへたり込んだまま、自分の頬を押さえながら目の前の金髪の少年を見つめた。
ずっとずっと会いたかった、会うために、居場所を帰ってこれる場所を作るためにダラーズを良くしようと頑張っていた、目の前の友人の為に。
その友人に、帝人は思いっ切り殴られて呆然としていた。
振りかぶったまま、暫し停止していた友人は覚悟をしたように顔を上げ、帝人に歩みよる。未だに座り込む帝人の胸倉を掴み息が掛かるほど近くで怒鳴り付けた。

「お前…今、自分がやってること、本当に分かってんのか?!力でどうにかしようとして、そんなの昔のお前じゃねぇだろ?!」
「正、臣…。でもこうしなきゃ…僕がちゃんとダラーズを良いチームにしないと…」
「帝人…」

殴られた帝人よりも殴った友人、紀田正臣の方が今にも泣きそうな表情で帝人に怒鳴りつける。自分が離れたことを、あの時会うことが出来なかったことを、帝人があっち側まで行ってしまったことを後悔しながら。

「それに、正臣が帰ってくる場所も守らなきゃ。安心して帰ってこれる場所を。」
「…馬鹿野郎。逃げた俺の言えることじゃねぇことも分かってる。けど、これだけは言わねぇと気が済まない。俺の帰ってくる場所はお前だ。竜ヶ峰帝人という俺の大切な幼なじみで、友人で、恋人の…。だから」
「うん、分かってる。」
「!」

掴んでいた胸倉を離し、いつの間にか抱き着く形となり正臣は帝人の胸に顔を埋めた。その背中に回された腕に微かな期待を抱き、そして次の言葉に全てを打ち砕かれた。

「だから、僕がちゃんとその居場所を作るんだ。正臣も園原さんも笑い合える、暖かい居場所を。だから正臣、」
「みか…」
もう少し待って?

力強く抱きしめられ、正臣は呆然と立ち尽くす。帝人にはもう自分の言葉は届かない。帝人は変わってしまった。そう現実は告げていた。だけど正臣は諦められない。

「帝、人…」
「うん、正臣。愛してるよ。だから」


【笑って?】



引き止めるように強く強く服を握り締める正臣を、宥める様に額に口づけてから引き離し、帝人はその場を後にした。
優しく、酷く残酷な言葉を残して。
帝人が願うそれは自分が奪い去っているとも気付かずに。
帝人はただ一つの目的の為に、自分を満たすだけに、友人を恋人をも犠牲にする。






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やっちゃった、8巻から妄想。
正臣が殴っていた場合を書いてみた。結果は変わらないけどね!
あぁ、臨也とは別の意味で帝人を殴ってやりたいです。





あきゅろす。
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