[携帯モード] [URL送信]
Thank you Dear Best Friends!(正臣誕生日)

最近どうも様子が可笑しい。誰の、つーより俺の知り合い全員のだ。
帝人と杏里は放課後遊びに誘っても付き合い悪いし。
仕方がなくサイモンの所で寿司でも食おうとしても「今日ハ店ジマイネ」と入店拒否。
街で門田さん達に会っても遊馬崎さんと狩沢さんが何か言いかけると即座に車に乗って用事があるからって何処かに行ってしまう。
静雄さんは相変わらずだったけれど、何処か話がちぐはぐだ。皆が可笑しいって話すと何か隠しているように言葉を濁す。
セルティさんは表情が読めないから微妙だけど様子が変だ。
臨也さんは…まぁいつも通りにウザい。唯一この人だけいつも通りというか可笑しいのはいつものことだから変化ないというか。
とにかく俺の知り合い全員の様子が可笑しい。
まるで俺だけ仲間外れにされているような、そんな感覚に囚われる。

違和感を覚え始めて早3日。昨日の一件もあり、そろそろ帝人を取っ捕まえてあれやこれやと尋問してやろうかと考えながら放課後、帝人のクラスを訪れる。しかし帝人の姿が教室にはなく、他の奴に聞けば「先に帰った。」と返ってきた。
よし、帝人の秘密を杏里にバラしてやろう。
そんなどうでもいい決意をしながら杏里の姿も今日も見えず、仕方がなく一人で帰ることにした。
本当、付き合いが悪い。臨也さんに会ってから膨らむ思い。二人で遊んでいるのだろうか。実は俺に内緒でもうあの二人は付き合っていて、デートでもしているのだろうか。
二人がくっつくことは俺だってそう仕向けて、事あるごとに二人っきりにしていた。
けど、この数日でそれは淋しいものだと気付いた。

「…はぁ、馬鹿だな。」

自分勝手、とも言えるか。よし、明日、帝人の家に押しかけて問い詰めて肯定したらそのまま盛大に祝ってやろう。
新たな決意を心に決めていると校門前で見たくないものを見た。黒いファー付きコートがちらちらと、臨也さんだ、と気付くと直ぐに踵を返す。裏門から帰ろうと決めたその時背後から声がした。

「まっさおみくーん?」

勿論俺を呼ぶ声だ。無視を気付かないフリを決め込み歩を進めていると臨也さんが尚も叫ぶ。

「正臣くん?正臣くーん?あれ、聞こえてないのかな?」

はい、そうです。だからいい加減その恥ずかしい行動は止めて下さい。軽く注目を浴びているのが気付かないんですか。

「…さっさと来ないと正臣くんの恥ずかしい秘密バラしちゃうよ?例えばあれは出会って間もな」
「臨也さん、何の用ですか?」

無視を決め込むはずだったけれどこの距離でも聞こえる小さな声に脅しかと聞き流そうとしていたが本格的にあのことをバラされそうになり直ぐに振り向いた。悔しいけれどこれが正しい選択だ。
反応を見せて仕方がなく近付けば臨也さんは何時も通りのムカつく笑顔でまるで逃げられないように肩を掴みこう言った。

「さぁ、行こうか。」

何処に?そんな言葉は無視されてエスコートされるように歩き始めた。


♂♀



何度か逃げる隙を伺うが流石臨也さんと言うべきか、肩を掴まれていた手は俺の指を絡めとり、いつの間にか恋人繋ぎをしていた。それを解こうとしても無理だと悟り、そんな頃には目的地へと行き着いたらしく臨也さんの足が止まり、半歩遅れて俺も足を止めた。

「露西亜寿司?」
「さぁ、中に入ろう。」

臨也さんは俺を待ち伏せてまで寿司を食べたかったのだろうか?変な違和感を隠しきれないまま臨也さんに促されるままに戸に手を掛けた。臨也さんがやけに楽しそうに笑っていて、何か裏があるんじゃないかという錯覚に襲われながら、警戒するように戸を開けた。
パンパンッ、と軽快な音と共に紙吹雪が俺に降る。何事かと目を丸くしているとクラッカーを持つ帝人と杏里と狩沢さん。
狩沢さんの近くには遊馬崎さんと門田さんと渡草さんが微笑みながら立っていて、帝人と杏里の近くには静雄さんとセルティさんと新羅さんが居た。
カウンターにはサイモンが居て、そのテーブルの頭上には『正臣誕生日おめでとう!』の垂れ幕。
後ろから肩を抱かれ、振り返ればここに連れてきた臨也さんが皮肉げに笑みを浮かべている。

「もしかして今日が何の日か忘れていたの?」

その通りで、言葉を返せないでいると帝人が抱き着いてきた。

「正臣!誕生日おめでとう。本当は日付変わると同時とか朝一番とかに言いたかったけれどさ、正臣を驚かせたかったから黙っていたんだ。」
「紀田くん。誕生日おめでとうございます。」

早口に言葉を紡がれキョトンとしていると杏里が近付いてきて微笑みながら祝われ、この歳になってこんな誕生日会が開かれるとは思わず照れ臭くなる。
そして、仲間外れにされていて一人やきもきしていた自分が恥ずかしくなり、馬鹿だと思った。
こんなにも、俺を大事にしてくれる奴がいるんだ。

「…っ。サンキュー。みんな。」

発案者は多分帝人と杏里だろう。こっちで俺の誕生日を知ってるのは帝人ぐらいだ。二人で計画して、聞き付けた他のメンバーが集まったってところかと予想していると大体同じ事を帝人の口から聞かされた。

「さぁ、主役はこっちだよ。」

未だ背後にいた臨也さんの言われるままにボックス席へと案内されるとそこには既に料理が並んでいた。寿司屋なのに色々な料理が。まぁ、ちゃっかり寿司もあるわけだが。

「はい、紀田くん。」

席に着くと狩沢さんに飲み物を渡され受け取る。辺りを見るとそれぞれグラスを持っていて、

「「「「「「「「「「『
 Happy Birthday!!
』」」」」」」」」」

乾杯の要領で全員に誕生日を祝われて、笑顔を作る。
こんなにも、素晴らしい誕生日は初めてだ。
此処にいる全員に感謝をしつつ、楽しむことにした。


それからそれぞれ個性豊かな誕生日プレゼントを受け取り、料理でお腹を満たしたころ、帝人と杏里の姿がないことに気付く。何処に行っただろうかとボックス席から顔を覗かせていると「ちょっと待ってろ。」と静雄さんに中に引き戻された。
まだ何かあるのかと首を捻りながら数分、帝人と杏里の声が聞こえ、静雄さんに少し目を閉じるように指示をされて大人しく従った。

「正臣、もう目を開けていいよ。」

今度は帝人の声が聞こえてくるとそっと目を開けるとそこには大きめなホールケーキがいびつな形をして机の上に置かれていた。不格好なケーキと書かれている文字と温かさを醸し出す雰囲気に手作りだと気付くのにそう時間は掛からなかった。

「…お前ら、俺を何処まで喜ばせるんだよ。」

苦笑と笑顔を浮かべて、思惑通りだと笑い合う帝人と杏里に手を伸ばす。

「感謝してもしきれね!ってことで、」
「「?」」
「お前らの誕生日も覚悟しておけよ?しかも生涯!」

肩を抱き寄せて、笑い合う。

本当こんなにも笑い合ったのは何年ぶりだろう。こんなにも幸せなのは初めてだ。




Thank you Dear
Best Friends!





俺は最高の友達に恵まれた。
一生忘れることのない誕生日会。






‐‐‐‐‐‐‐
Happy Birthday正臣!
正臣の誕生日ということで色んな方に祝ってもらいました。実施喋っているのはいつものメンバーですが…。
来良組中心、と言っておきます。
正臣誕生日企画、『愛しの将軍様』に提出させてもらいました!






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!