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正誕カウントダウン3

6月16日。

今日もまた、正臣は一人で池袋の街を歩いていた。理由は簡単だ。いつも一緒に行動している帝人と杏里、二人揃ってクラス委員を務めている。今日はその活動があるらしく先に帰っていてほしいと言われたからだ。
一人ですることもない、昨日のように狩沢と遊馬崎に絡まれるのも控えたく真っ直ぐ帰ろうとしたその時、後ろから呼び止められ、何だろうと言うように振り返る。

「よう。一人か?」
「あ、静雄さん。」

振り返るその先に居たのは平和島静雄。池袋の喧嘩人形と有名で、人々はあまり関わりを持ちたがらない人物でもある。
しかし正臣は静雄の優しいところもあると理解しており、何事もなければ名前の通り平和で静かな好青年と知っている為、時折話をしたりご飯を一緒に食べたりしている。
笑顔で相手の名前を呼べば前触れなく手が伸びてきて正臣の頭上に置かれ、それが左右に揺れる。撫でられている、そう自覚するころには手は引かれ、定位置というようにポケットに収まっていた。

「それで今日はお仕事休みすか?」
「…あぁ…手前は暇か?早ーけど晩飯一緒にどうだ?」

勿論、元気よく答えれば二人は近くのファーストフード店へ入って行った。学生の下校時間とも重なり始めているため中は多少混んでいたが暫くもしない内に二人はバーガーのセットを持って客席へと落ち着いた。それからたわいのない話が始まり小一時間。

「そういえば最近帝人と杏里の付き合いが悪いんすよね…」

ここ二日続けて一人のけ者にされている正臣。仕方がないことだと分かりながらも弱音と愚痴をついつい吐いてしまう。
特に何も言わず耳を傾ける静雄は一つの理由が心当たりがあり、言うべきか言わずにいるべきかを思案し、後者を選ぶ。内緒、と話を聞かされた時にした約束を思い出したからだ。
その変わりと言うように慰めるように頭を撫でた。

「暇なら俺の所来い。話し相手ぐらいにはなってやる。」
「…ありがとうございます。」

要らぬ心配を掛けたか、正臣が顔を上げ静雄を見つめて苦笑を零しす。何か言葉を発しようとした瞬間それは音楽によって遮られた。悪い、と一言掛けながら懐から携帯を取り出し操作をし、耳に当てる静雄。どうやら仕事の電話らしく、何度か言葉を交わした後「すぐに行きます。」と通話を切り、正臣に向き直る。

「悪い」
「仕事なんでしょ?しょうがないですって。今日はありがとうございます。」

気にしなくていいと言葉にする正臣に静雄の表情はとても申し訳ないと語っている。キレやすくよく喧嘩する静雄からは中々見られない表情だと笑みを深くしながらまたな、と去る静雄を見送った。

「あ、紀田。猫と犬、どっちが好きだ?」
「…?」

そして去り際に残した静雄の言葉が疑問となり正臣の頭を巡ることとなる。





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