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正誕カウントダウン4

6月15日。

「あー!いたー!」
「目標発見。直ちに捕獲せよ、ですねえ!」

街中、今日は帝人達は用があるからと一人ぶらついていた正臣。背後から叫び、多分己に向けられているだろう声に驚き足を反射的に止める。振り返るべきかと思案しているうちに肩をがしりと掴まれ選択肢は既に一つしかなくなる。

「狩沢さんと遊馬崎さん、今日和す。俺に何か用ですか?」

緩く振り向き己の肩を掴んでいる青年と女性に声を掛ける。街中でバッタリと出くわすならいい。こう意図を持って探され、出会うとなるとオタクの趣味を持つ二人、過去に何度かその趣味に付き合わされた正臣は何事もないことを祈るがそれはすぐに打ち砕かれる。

「あるから探していたんだよ。」
「そうそう、ささっ、主役はこちらに」
「…は?え?」

状況把握出来ないまま正臣は遊馬崎に背中を押され強制的に歩かされる。向かう先にあるのは二人が良く一緒にいる渡草のワゴン車だ。主役とは何か、また狩沢脚本のぼーいずらぶと言うものをやらされるのかと後ろから急かすように押す二人を見つめるが答えが返ってくることは当然なく、早く終わればいいと最早諦めた雰囲気を漂わせた。
ドアが開き、中へ促される様に入る正臣。珍しく渡草も門田も居ないと中の様子を伺いながら適当に腰を下ろした。渡草が居ないのならば異動することはないだろう、ならばすぐに解放されるかと僅かな期待を胸に正臣は二人を見る。

「それで、今日は何を」
「さぁ、ちゃちゃっと脱いじゃおうか。」
「え?」
「ゆまっち、ヤっちゃ…あ、間違えた♪やっちゃって☆」
「了解っす、隊長!」

どんなことに付き合わされるのか、尋ねる言葉の前に答えられた言葉に正臣は耳を疑う。
かなり際どい、寧ろアウトに近い狩沢の言葉を合図に遊馬崎は正臣に迫る。剽軽な表情を携えて正臣を押し倒し、そのパーカーに触れると捲りあげようとした。
やめろと言うように正臣も抵抗するが慣れているのか遊馬崎はその手を絡めて頭上に縫い付けた。

「え…は、遊馬崎さん、正気すか?!」
「正気も正気。これは萌えの為っすよ、紀田くん。」

動きまで封じられるとまでは予想していなかった正臣。目を見開き目の前の楽しげに笑う青年に幾許かの恐怖を覚える。このままでは遊馬崎に好きな様にされる、しかし力では敵わない。隣に居る狩沢は遊馬崎側でこの場に味方はいないことになる。どうしようも出来ない現状に正臣は心の中で助けを呼んだ。

「手前ら、ふざけるのもいい加減にしとけ。」

その叫びが聞こえたかの様にワゴンの戸が開く。日をバックにそこには門田が立っていた。助かった、と安堵する正臣は遊馬崎の拘束が緩んでいることに気付くとそのまま門田へと抱き着いた。

「門田さん」
「すまないな。馬鹿が暴走しちまった。」
「い、え。」
「門田さん、これからがいいところだったのに。」
「ドタチンとゆまっちの紀田くんを巡るドロドロの青春ラブストーリー!萌えるよね!本当、ドタチンもちゃんと空気読まないと。」
「読んだから出てきたんだろ!つーかドロドロで青春?…はぁ……それで手前ら、紀田に用なんだろ?」
「そうそう、紀田くんちょい失礼。」

宥める様に正臣の頭を撫でながら門田は暴走していた狩沢と遊馬崎を咎めるが反省の色は無し。深く溜息を付いてから本来の目的を狩沢に尋ねると思い出した、と言う素振りで笑って見せた後、懐から長い紐の様なものを取り出し正臣に当てていく。

「ウエストは…うわっ紀田くんほっそーい。ちゃんと食べてる?」
「えっと狩沢さん?」

どうやら狩沢の持つものはメジャーらしく、正臣の所々を満遍なく測っていく。
脱いで、とはこういうことだったのかと頭の隅で納得しながらあんな方法取らなくてもよかったのではないかと疑問が同時に浮かんだ。しかしそれを聞いたところで「萌え」の一言で終わってしまうことと予想すれば口にすることを止めた。

「あの、狩沢さん。何してるんすか?」
「紀田くんに服作ろうと思って。ほらもうすぐ」
「あー紀田、引き止めて悪かった。詫びに飯でも奢る。」
「あードタチン、まだ途中。そうやって紀田くんのハートをゲットする気だね!抜け目のない!」

狩沢が何か重大なことを言いはじめたその時、門田の表情が曇り、そして隠すように狩沢の言葉に言葉を被せた。これ以上ここにいてはマズイと思った門田は正臣の肩を掴み先ほどの詫びだとワゴンから、狩沢達の前から離れることにした。
違和感を覚えながらも正臣はまた狩沢と遊馬崎の趣味に付き合わされるのかと気を落としながら門田の言葉に甘える事にした。






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