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堕ちた先は光は無く(臨正)

特に何かをするわけでもなく、臨也はソファーにもたれて暇潰しにと流れるテレビ画面に目を向けていた。画面の中に流れるのは対して興味を引くわけでもない一昔前のドラマの再放送。何が面白いんだと頬杖付きながら見ていると玄関から物音が。しかし臨也は気を止めることなく画面に目を向けたままだ。そうしている内に足音は臨也に近付きトンっと軽い音を立てながら隣に座る。そして軽く重心が掛かった所でやっと興味を持ったというように臨也は訪問者を見た。

「どうしたの、君が甘えてくるなんて珍しいね。」
「…。」
「何も言いたくないなら構わないけどさ、邪魔なんだけど。」
「…少し、こうしてていいですか。」

訪問者、紀田正臣は反論することもなく、ただお願いというようにそれだけを呟いた。その表情は弱々しく、いつに増しても元気がない。正臣の様子が可笑しいと気付く臨也だが、詳しくは聞こうとはしない。それは、どうして正臣がこんな表情をしているのか知っているからなのか。将又正臣がこんな状態の原因であるからなのか。臨也は正臣を甘えさせるように肩を抱きしめた。

「今日は特別だよ。」
「ありがとうございます。」

抑揚のない声。擦り寄る体に臨也は密かに口元を釣り上げる。
正臣の精神は限界だった。黄巾賊とダラーズの抗争間近の雰囲気。切り裂き魔の事件。そしてダラーズのトップは自分の友人である竜ヶ峰帝人。
正臣に突き刺さる現実に普段通りを努めることに、知らぬフリを通す事に正臣は疲れを感じていた。
そう仕向けたのは紛れも無い今、正臣が寄り添う人物だが、あの時と同じく知らず、気付かず、正臣は絡らまる糸に意図に自ら身を寄せる。

「好きなだけ俺を利用すればいい。」

正臣の表情が更に陰る。臨也は依然テレビ画面に目を向けたままで口を開く。

「好きなだけ利用し、頼り、甘え、自分の過去に弱さに逃げればいいさ。俺はそんな君でも受け入れてあげるよ。だから安心して絶望に打ちひしがれればいいよ。君は俺しか頼れないんだから。」

何も言わぬまま、正臣はそっと目を閉じた。




【堕ちたは光は無く】




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…甘い話を目指してどうして正反対になるんだ!臨也に甘える正臣で甘い話になるかなって思ったはずが…どうしてこうなった!?
時間軸的にアニメの20話です、ね。



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