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絶対遵守の王様ゲーム(正臣総受け)

※【出会いは悪夢の始まり】の続きです。





「じゃあ、始めようか。王様ゲーム☆」
「「「は……?」」」
「…。」
「ぇ…?」
「臨也さん、クジはどうするの?」

カラオケボックスに姿を消した、青葉も加わり7人。各々に席に座り、臨也の掛け声で始まる『王様ゲーム』。
当然、帝人と正臣は素っ頓狂な声を上げ静雄は怒気を含めた声を上げる。青葉は最早呆れたと言うように澄ました顔で、杏里は純粋な疑問に首を傾げる。一人、臨也の突拍子もない行動には慣れていると言うように沙樹は準備に取り掛かろうとするが流石に道具までは突如用意出来るわけがなく、有無を尋ねた。すれば初めから企んでいたであろう臨也は「問題ない」としてコートのポケットから一つのケースを取り出すと机の上に置く。

「トランプ、これで代理をしょう。使うカードは1〜6とK。王様ゲームだからね、Kはそのまま王様としよう。ルールは通常通り、Kを引いた人が1〜6の数字を引いた人に命令。命令は絶対遵守。王様の絶対制度だ。」
「ちょっと待って下さい、誰もやるなんて」
「ちなみに流石に殺すとか生死に関わるのは止めよう。こんな所で流血沙汰は嫌だからね。まっシズちゃんは構わないけどさ。それでさ、普段出来ないような命令、したいと思わない?」
「…。」

着々と準備を始めていく臨也。トランプを広げては中からスペードの1〜6とKを取り出し後はケースにしまい机の端に置く。カードを裏側に返して適当に混ぜては綺麗に縦2列、横3枚と4枚に揃える。
その間にもルール説明は続き、まだ了解してないと帝人が口を挟むのだが臨也は無視だ。最後乗り気ではない帝人らを挑発するように見つめ、口元だけの厭らしげな笑みを浮かべて尋ねる。思わず帝人は正臣に、と考えてしまい黙ってしまった。

「乗った!臨也さん、覚悟して下さい!」
「え、ちょ…正臣?!」

成る程、と帝人の隣に居た正臣は一つ頷くと立ち上がり、宣言というように臨也を指差して不敵に笑う。日頃の恨み!と言わんばかりに楽しげな笑みだ。
一方、帝人というと臨也のことだ、きっと裏があるに決まっていると心配するが、言い出したら聞かない友人にやるしかないかと溜息をついた。
他の面々も正臣がやるなら、と反論を口にしない。臨也は全員やる気だと分かれば密かに笑みを作り「さぁ、王様を決めよう。」と腕を広げた。



「じゃあ、5番の人はこの服に着替えて?」
「っ!嫌だ!つか、何を持っているんですか!」
「沙樹ちゃんの買った服。」
「変態!」

かれこれ何周目かの王様ゲーム。今回は王様、臨也。命令の的となったのは正臣のようだ。
臨也の命令は正臣と沙樹が午前、ブティックを周り買った新しい服達。臨也はどれがいい?と視線で聞くが中身を知っている正臣は睨むだけだ。正臣の心の中に「スカートだけは絶対嫌だ!」と思うが午前、自分の見立てた服は全てスカート類ばかり。まさかこんなことになるなんて思うわけもなく、助けを求めるように帝人を見るが苦笑で返される。

「さあ、早く着替えてきて?着替え方がわからないなら沙樹ちゃん連れていけばいい。」
「…っの、一人で大丈夫です!」

服を適当に渡され自らゲームに乗った手前、大きなことは言えずに奪い取るように差し出された服を受け取ると部屋を出る。

「正臣くんが帰ってくるまで何か歌う?」

場を仕切るように臨也は曲を入力するリモコンを手に取る。適当に曲を入れていく姿を見ながら帝人はふと先程から引っ掛かりを覚えていた。

(確かに確率的には絶対とは言えないけれど、正臣が当たる確率が高い。臨也さんの時が一番、)

この何周かする王様ゲーム。その命令の餌食となるのが正臣だった。たまたまかも知れないがそうじゃ無いかも知れない。どういうことなんだと臨也を見るがTV画面を見ていて、薄暗さもありその表情は伺うことが出来ない。仕方がなく視線を下ろし、何となくゲームの主役となるカードを見た。まだ準備されている訳ではなく、乱雑に散らばるそれに、帝人は違和感を感じる。

「…ぇ、」
「どうしました、帝人くん?」

それが何か気付き帝人は無意識に声を上げてしまう。帝人の異変に気付いた杏里は心配そうに声を掛け、帝人は大丈夫だと笑顔を作る。同時に一枚カードを手に取った。スペードの1と掛かれたカードを裏返し、絵柄を見る。パッと見それは何ともない市松模様の絵柄。しかしよく見なければ分からない、分かったとしても使い込んであるんだろうとしか分からない汚れとも呼べる点描があった。8つのそれはよくみれば何かの形を作りだしている。左上と右下にある黒い升目に3つと白い升目に5つと場所分けしてある点。他のカードも同じ場所にそれぞれ違う点描があった。帝人がそれが点字だ、と気付くのに時間はそう掛からなかった。ハッと驚いた顔を作った後、帝人は臨也を睨むように見つめる。丁度臨也が歌っていたバレンタインキッスの間奏で、視線が合えば「気付いちゃったんだ。」と目が言っていた。
そして臨也が近付き帝人に囁き掛ける。それはまるで悪魔の如く。

「ねえ、黙っていた方が楽しいよ。普段は正臣くんに出来ないお願いとか出来ちゃうんだからさ。ほら、今だって普段ならしてくれない女装もしてくれているだろう?」
「何を…っ!」
「ラブリー紀田正臣登場☆そしてさらば!」
「正臣、逃げるの?」
「沙樹、離せ!罰ゲームはもう終わりなんだ!」
「あ、ダメだよ、正臣くん?王様の命令以外で脱いじゃ。」

帝人と臨也が二人内緒話をしていると部屋のドアが開く。颯爽と、結構乗り気で女装姿をお披露目する正臣。服は露出が多く、春物というよりは夏物の服で、活発げな印象を受ける。正臣が嫌がっていたスカートもかなり短いもので、屈めば下着が見えてしまうのではというくらい短い。
乗り気だと思っていた正臣だが、部屋に入り数秒、じゃぁ、と当たり前の如く部屋を去ろうとするが、それは叶わず、ドア近くにいた沙樹により阻まれる。加えトドメだとばかりに臨也が言葉を加えれば正臣はぐっと悔しそうな表情を浮かべて黙り込む。ゲームが終われば即行脱ぐ、と呟きながら正臣は帝人の隣へと戻った。

「正臣、僕が頑張って脱がせてあげる。」
「…!さすが親友!頼りにしているぞ!」

隣へと座る正臣に流石に不憫に思ったのか帝人は正臣にしか聞こえない小さな声で囁くと正臣はパッと明るくなり抱き着いた。
それから臨也のゲーム再開の声で再び王様ゲームの始まりだ。

そして命令の正臣への被害は大きくなる一方だった。
6番(正臣)が2番(静雄)にビンタ。
1番(正臣)が5番(臨也)にキス。
2番(帝人)が4番(正臣)に暴言、罵倒。
3番(正臣)が猫耳を付ける。
5番(臨也)が1番(正臣)の服を脱がせる。
殆どが臨也の命令で、時折沙樹のも混じる。帝人はなんとかKを引きたいと願うのだが、カードが分かっていても中々引けず四苦八苦していた。勿論臨也も王様になることは多くはないのだが、その分なった時の命令が酷い。

(あれ…?)

しかし王様自身が何かしてもらう命令はあまりない。
そのかわり間接的、沙樹の命令時に臨也は得をすることばかりだ。

(もしかして三ヶ島さんと臨也さんは…)

手を組んでいる?と帝人が感づいた瞬間臨也の口が歪む。まるで「今更気付いたの?」と言うかのように。
それを見て帝人は核心する。それでは正臣の被害が増えるばかりではないか。どうにか帝人は正臣を守る仲間を増やしたいと周りを見るがこのトリックに気付くものはいない。いないと思われた。帝人が静雄を見た瞬間、静雄は何処か笑みを浮かべた、そんな気がしたのだ。

(甘いぜ、ノミ蟲。手前が学生ん時からこのトランプを使っているのはお見通しなんだよ。)
(まさかシズちゃん…君と言う人間は)
(静雄さん!)

「次の王様誰っすか?」
「俺だ。」

(これで手前の天下も終わりだ。)

「4番(臨也)が6番(正臣)に服を貸す。」

(静雄さん!なんでそこで元の服に着替えさせないんですか!)
(アハハッだからシズちゃんは単細胞なんだよ。)

そうして静雄の手で見た目裸にコートな正臣が出来上がった。


♂♀


王様ゲームもかなりの回数を終えた頃、次の王様誰だと皆がカードを手にする中でパラリと一枚のカードが机に落ちる。

「そろそろこんな茶番、止めませんか。折原臨也。」

カードの持ち主は殆ど喋らず、場を楽しむと言うように傍観者を決めていた青葉だ。
青葉の言葉に周りは静まり、自然と正臣、杏里の視線が詳細を求めるように臨也に集まる。対して臨也は差程表情を変える訳でもなく、白々しく首を傾げた。

「どういうこと?」
「トランプですよ。仕掛け、あるんでしょ?」

ほら、と薄暗い部屋の照明を明るくしてから机に落としたトランプを見せる。

「この汚れ、汚れに見えますが、本当は点字ですね。この3つの点はS、つまりSpade。5つの点は数字…これは3だったかな。」
「そうかもしれないし、たまたま汚れがそう見えるのかもしれないだけだよ?」
「たまたまで7枚のカード全て同じ法則の汚れが付くというんですか。」
「臨也さん!」

青葉の説明を聞き正臣がトランプを見る。点字の知識はないが言われれば違和感を感じる汚れだ。詳細を本人の口から求めるように正臣は臨也を睨み見た。
臨也は尚もおどけたように目を見開き、そして高笑いした。

「ハハハッ面白いことを言うなあ。仮にそうだとしよう。だから?これはただのゲームだ。犯罪の命令をされたわけじゃあない。ちょっとした子供のお遊びだろう?」

それに、と臨也は言葉を続けて帝人と静雄を見る。

「このトリック、利用していたのは俺だけじゃない。そうだろう、帝人くんにシズちゃん?」
「「!」」
「え、帝人…に、静、雄さ…ん?」

臨也なら有り得るだろうと怒りを露にしていた正臣だったが帝人と静雄の名を出され、驚くように立ち上がり交互に二人を見た。帝人は図星を突かれ、嘘をつくのも憚れて視線をそらし、静雄は利用していたつもりはないとトリックを知っていたことを話す。

「…最低だっ。」

正臣の肩が小さく奮え、絞り出すように紡がれる声に追い討ちの言葉。

「ただのお遊びに本気になれるなんて滑稽だね。」

臨也の言葉を全て聞く前に正臣は部屋を飛び出した。それを帝人と静雄は追えるはずもなく、追おうとした中途半端な姿で見送る。
すぐに青葉が立ち上がり、ドアを開けて振り返る。

「正臣先輩をそんな輩には渡しませんよ。」

臨也、帝人、静雄の順に青葉は見た後、青葉は正臣を追いに部屋を去っていく。


「正臣先輩!」
「青葉…」

しばらくもしない内に青葉は正臣に追い付き、抱きしめた。信じていた親友に裏切られた気分となっていた正臣は身体を包む優しさを否定することができずされるままとなる。



残されたカラオケボックス内で臨也は心底楽しそうに笑っていた。

(だけど君も知っていて利用していたんだろう?)





「俺が正臣先輩を守ります。」
「あ…ぁ………  。」

青葉の言葉は正臣の耳に親友の言葉とダブって聞こえた。



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ギャグなのかシリアスなのかハッキリしてください、湊!可笑しいな、ギャグの予定だったのに。青葉落ちの予定もなかったのに、何処で帳尻が狂った?
そんなフリリク18つ目は緑様リクエストの『王様ゲーム』でした。
長い上にグダグダで本当に申し訳ありません!
緑様のみ書き直し、苦情、お持ち帰り可能とします。
やっぱり何人か空気…。入れられなかった命令の話はちょこちょこ日記にアップしていきたいと思います!
それでは企画参加ありがとうございました!




あきゅろす。
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