[携帯モード] [URL送信]
出会いは悪夢の始まり(正臣総受け)


晴れ渡る空、休日と言うこともあり街は人で溢れ返っていた。

「あ、園原さん。…丁度お昼だし、一緒に食べていかない?」
「え…そうですね。」

しかし休日だと言うのに帝人と杏里は来良の学生服を身に纏っている。2年生に進級してからも二人揃ってクラス委員を勤め、今回もその用事で学校を訪れた帰りだからだ。
用事は朝のうちに終わり、お昼時もあり、帝人は杏里を昼食に誘う。いつも、いや以前ならここに帝人の友人、正臣が居て帝人をからかう姿がよくみられたのだが、その親友は2年に上がる前に姿を消した。一時は連絡すらも取れず帝人も杏里も心配していたが、今は頻繁に会うことはないが連絡は出来るところまで三人の間は修復され始めていた。
修復…三人は三者ともに様々な過去とモノを持っており、1年の終わりにそれが原因で正臣は帝人たちの前から姿を消していたのだった。しかし一ヶ月ほど前のとある騒ぎで正臣は池袋に戻ってきたのだ。そうして帝人との連絡もそこからまた再開した。

「正臣も呼ぶ?久しぶりに三人で会うのはどうかな?」
「そうですね。私も紀田君と会いたいですし。」

帝人と正臣が連絡を取り合うようになったのは杏里も知っていた。しかし未だに彼女は直接会うことはなかった。それは帝人も同じようなもので、正臣が池袋に戻ってきた時に一度だけ再会したそれっきりだ。メールやチャットのやりとりは以前までの雰囲気に戻り、あとは多分、きっかけがあれば会うことが可能になるだろう。帝人はそのこともあり提案してみたところ杏里も会いたがっていると知ることとなる。
そうと決まれば帝人は携帯を取り出し正臣宛にメールを作り、送信した。暫く時間がかかるかと思われたが思いの外早く帝人の携帯にメールが届く。

「あ、えっと…『誘ってくれてサンキュー。だが悪い!俺もデート中なんだよな、これが。いやーモテる男は辛いつーか、ま、そういうことだから』…だって。」
「相変わらずですね。」
「うん。それじゃ…園原さんは何が食べたい?」

返信内容を杏里に伝えるため読み上げるのだが、帝人は最後まで読み上げなかった。メールの最後には『帝人も杏里とのデート楽しんでこいよ!』と応援されたことが書いてあったのだ。正臣は誤解している。帝人は相変わらず鈍い友人に小さく溜息をついた。そして杏里に気付かれる前に帝人はお昼を何処で取るか話合い、無難に近くのファミレスへと入ることにした。

「混みはじめたね。」
「丁度良いときに入ったみたいですね。」

お昼時ともあり混みはじめる店内。帝人達が入った時はまだ店内に空席のスペースが見られたが今では順番待ちにまでなっている。もう少し遅ければあの仲間入りだったのかと帝人はタイミングが良かったと昼食を決める為にメニュー表に視線を戻した。
すると店員が近付いてきた。メニューを聞きにきたのかと思ったが二人は席についてまだ間もない。何か不具合でもあったのかと帝人は店員を見つめた。

「お客様、恐れ入りますが相席でもよろしいでしょうか?」
「え…あぁ、園原さん、いい?」
「はい、構いません。」
「大丈夫です。」
「ありがとうございます。」

深々とお辞儀をする店員の言葉にそれ程混んでいたのかと帝人は再度店内を見渡した。確かに家族連れや団体客が多く店内は賑わっている。これでは4人座りの机にいる自分達は贅沢だと言うこともあり帝人は杏里に確認してから店員に答えた。去っていく店員を見送った後、帝人は荷物を纏めスペースを作り始めた。
そうしている内に帝人たちの前に現れた人影。帝人はその人影が息を飲む気配を感じた。

「…帝、人?杏里?」
「え…」
「紀田…君?」

帝人は聞き覚えのある声に顔を上げて目を見開いた。相手もそれは同じで驚き固まっている。そして帝人は傍にいる女性に彼女がメールでいっていたデート相手なのだろうかと胸の痛さを密かに感じていた。
予想外の再会にその場の空気は凍りつく。先程まで帝人と杏里は正臣に会いたいと願っていた。しかし実際会ってみると何を話していいのか分からず口を開くことが躊躇われる。正臣も同じなのだろう。普段ならからかい含めて一人で話しを始めるのだが今はない。この沈黙を破ったのは正臣と一緒に居た少女だった。

「はじめまして、帝人くん、杏里ちゃん。私は三ヶ島沙樹。よろしくね?」

儚げに微笑みながら「相席ありがとう」と御礼を言い杏里の隣に座る沙樹に、正臣はいつもの調子を取り戻したかのようにニカッと笑みを浮かべた。

「なんだ、帝人と杏里もデートだったのか?邪魔して悪かったな。あれだ、俺らは空気と思っていいからさ。アイアムエアー?いやこれはこれで淋しいか…」

帝人の肩を掴み引き寄せ以前のようにからかってくる正臣に帝人は以前に戻ったような錯覚がし、そしてあの頃から正臣は何かを抱えていたのだと思い知らされた。ギャグが寒いのは昔からだが、元気に振る舞う裏で友人は何を思っていたのだろうか。帝人は考え、そして止めた。代わりに正臣を抱きしめる。

「正臣、お帰り。」
「…ただいま。」

反撃、反論が来ると思っていた正臣は意外な言葉にキョトンとして、それから照れ臭そうに笑う。
そんな二人の少年を二人の少女は微笑ましげに見ていた。


♂♀



それから話が切れることなく場は盛り上がる。殆ど正臣の話ばかりだったがそれは以前と変わりなく、正臣の寒いギャグに帝人の辛辣なツッコミ、杏里の困った笑顔。数ヶ月しか経っていないのに懐かしさが溢れる。
途中デート中ならこうっしょ!と言う正臣の提案で席替えし、そのまま昼食も済ませると、これからどうするかという話が持ち上がる。

「このままダブルデートでもするか?」
「ああ、いいね。この場合俺と正臣くん、帝人くんと杏里ちゃんかな?」
「そうそ…って臨也さん!?」

いつもの正臣の冗談に苦笑を作っていた帝人だが正臣の後ろに突如として現れた黒い影。正臣の座る椅子の背もたれに重心を預けて4人の会話に割り込んできた人物、折原臨也は楽しげに笑みを深めた。
そのままスルーしかけた正臣だがおかしい点と帝人と杏里の視線が有らぬ方へ向いていることから人間の本能というか癖で振り返る。そこに見えた人物に正臣は驚きの声を上げた後、明らかに嫌な顔を作った。

「…何の用ですか。」
「別に?正臣くんが旧友と仲良くしているのが見えたから混ぜてもらおうかなって。」
「臨也さんは臨也さんの旧友と仲良く…あぁ、臨也さんにはそんな友達居ませんでしたね。」
「そうそう。だから淋しがり屋な情報屋さんを慰めて?」
「帝人、杏里。このあとゲーセン行こうぜー?」
「あ、無視は酷いなあ?」

一応、そんな雰囲気で正臣は尋ねたが予想以上にウザい返答に冷たく返した挙げ句無視をした。そうすれば臨也は構って?というように正臣の首に腕を回して後ろから抱き着いてくる。鬱陶しい!と正臣がその腕を離そうとした時、臨也の腕を掠めるようにフォークが飛んできて、そして椅子の背もたれに突き刺さる。

「臨也さん、正臣、嫌がってますよ。」
「帝人くん、フォークは投げるものじゃないよ?」
「いやいや、帝人。帝人の気持ちはすげー有り難い。けど、俺、今生命の危機すら感じたんだけど?!」
「あ、正臣。ゴメン。」
「どういたしまして…じゃなくて軽い、軽いぞ帝人!」

フォークの軌跡を辿ればそれは正臣の目の前に座る帝人からのものだった。あっけらかんと相変わらず飄々としている臨也に帝人は冷たい笑顔を浮かべたままで。そこに水を差すように正臣が叫んだ。フォークは確かに臨也の腕を掠めるような軌跡を描いて背もたれに刺さったが、そもそも臨也の腕は正臣の首を捉えていた。つまり一歩間違えればフォークは正臣の首に刺さっているという事態が予想される。正臣が冷や汗を流していると帝人はそうだね、と言われてから納得するように表情を作った後、形だけでも謝る。相変わらずだ、と帝人の冷たさを直に感じながら帝人の手が今度はナイフに伸びたのを見て正臣は臨也を引き離そうとした。
だが、それが叶う前に、正臣は再び生命の危機を感じることになる。

「うるせーんだよ、ノミ蟲!いい加減紀田から離れろ!」

怒声と共に飛んで来る椅子。それは臨也の体目掛けていたが、臨也は気付くと同時に飛んでくる椅子の延長線上から避難した。宙を移動する椅子はそのまま正臣の背後を通り抜けて壁へと激突し勢いを無くす。

「シズちゃん。居たんだ?君がファミレスなんて似合わなーい。」

いや、それは貴方もです。と帝人と正臣の心が一致した。そんな二人の思いは他所に戦争コンビの喧嘩は今にも火蓋が切って降ろされそうだった。しかしその前に正臣が立ち上がり二人の間に立つ。

「いい加減にして下さい、二人とも!」
「…。」
「!」
「…正臣?!」
「喧嘩するなら外で」
「ならゲームしようよ?」
「は?」
「あ゙?」
「へ?」

危ない、と止めに入ろうとする帝人よりその前に正臣を言葉を紡ぎ始め、ジェスチャーで窓の外を指したその時、臨也が後ろから正臣の肩に手を置いて有り得ない事を言った。
突拍子もない発言に当然、静雄も怒りを忘れ、正臣も帝人もキョトン顔を作る。
その様子も想像通りと楽しげに笑みを作りながら臨也は移動を開始する。

「とりあえず場所移動をしよう。このままじゃ迷惑だからね?」


♂♀



何故ついてきてしまったのだろう。正臣の心は後悔でいっぱいだった。
面白い、と静雄がゲームに乗るのを見て、大喧嘩にならないと思った正臣は帝人らを連れて退散しようとしたがそれより前に臨也に捕まり強制連行。そこには今まで黙り大人しくしていた沙樹の協力も加わり正臣は逃れられぬ運命かと密かに涙した。勿論、帝人も正臣が連れていかれることを黙ってみているわけには行かず、臨也に付いていく。途中杏里に危ないから帰ったほうがいいと諭すのだが、放っておけないと杏里も同行することとなる。
こうして、臨也、静雄、正臣、帝人、沙樹、杏里の6人の大所帯はファミレスから姿を消す。

「…帝人先輩に杏里先輩。紀田先輩もどう……折原臨也。」

手頃な場所はと行き着いたカラオケボックス。何故と疑問浮かぶ面々他所に臨也は部屋を取り向かう途中、廊下で帝人と杏里は聞き慣れた声を耳にする。
向ける視線の先には来良学園の後輩、黒沼青葉が友人らしき柄の悪い連中の中にいるのが伺えた。

「帝人先輩たちもカラオケですか?」
「え、まぁ…。それより正臣とも知り合い?」

このメンバーで、どうしてここにいるかという説明づらさに言葉を濁しながら答えるがふと疑問が。学校を止めた筈の正臣と後輩の青葉がどうして顔見知りなのか。少し前まで池袋を離れていた友人とどういう関係なのだという。
それを聞けば勿体振った笑みを浮かべながら青葉はこう言った。

「まぁ、正臣先輩とは浅い仲じゃないですから。…帝人先輩、俺も混ぜて貰ってもいいですか?」



つづけ



‐‐‐‐‐‐
フリリク18つめに当たる小説です。全くフリリクの内容に絡んでませんけどね!
これから始まります、はい。全く要らない前置きとなりました。…だってこんなに長くなるとは思わなかったんだもん(涙)
アンケはこの小説のメンバーでした、ということで優勝は青葉くんです!どう絡んでいくかこうご期待!
レス⇒こちら



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!