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近くて遠い距離(臨→正→←帝)


内緒モード 【…正臣?………正臣、なの?】
内緒モード 【何か…答えてくれると嬉しいです。】

♂♀


「…」
「答えてあげないの?バキュラくーん?」

画面に羅列される文字に目を細めていたら、後ろからかかる声。机に片手をついて後ろから抱きしめるかのように顔を近付けるのは今でも許せない人物──折原臨也。人の使うパソコンの画面を覗き込んでは口を開く。

「勝手に覗かないでください。」

相手の所有しているパソコンを使わせて貰っているのはこっちだけれど、関係ない。相手は別のパソコンで"甘楽"を演じているのだから。

「それで、答えてあげないの?」


♂♀


《というか、現実で会ってるんですから、バキュラさんは私の魅力をみんなに教えて上げてくださいよ!》

♂♀


リロードされて映しだされる画面上の文字の羅列。それを確かめ小さく目を見開いた後、横目で背後の存在を睨みつけながらキーボードを叩く。

「ここで言ったら意味ないじゃないですか。」
「ならなんで君はココに来たんだ?」

ピタリと一瞬手を止めてしまう。しかし何事も無かったように手の動きを再開させる。

「……臨也さんが教えてくれたんでしょう。」

♂♀


『そうですねえ、』
『例えば、』
『甘楽さんを点数で表すと──』
『√3点』

♂♀


「でも来ない、という選択肢もあったはずだよ。彼が誰だか伝えたはずだ。」

人の頬を撫で顎を上向かされる。目が合うその瞳は残酷な迄に赤い。薄く細めて笑みを作る。
あぁ、なんて愉しそうなんだ。人を操り、思惑通りに転がして、せめてと思っていた友情すらも踏みにじるこの男が物凄く憎い。
…でも、唯一、あいつとの会話の場面を教えてくれたことに感謝せざるおえない。逃げている俺とあいつの唯一の繋がる場所。



もう一度、睨みつけ、相手を振り払い画面に戻る。退室挨拶だけ書いてパソコンを閉じた。そしてもう用がないと言うように、立ち上がりマンションを後にする。

「………もう帰ります。……このチャット、教えてくれてありがとうございます。」

もちろん、

「…さっさと諦めちゃえばいいのに。」

狩人の目をして小さく呟かれた言葉は耳に入っていない。


‐‐‐‐‐
3巻の終わりを読んだ時から思い付いていた場面。でも全部読んで色々と付け足してみた…とりあえず臨也が正臣の顎を掴んで見つめあうシーンを書きたかっただけという。
ちなみに全部で三部構成だったり。





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