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触れる温もりの温かさ(静←正)

「静雄さん、何がいいですか?」
「ん、ならブラック。」

いつからか日常となりつつある静雄さんとの雑談。これと言って場所も日時も示し合わせているわけではない。街で見掛けて、互いに時間があるようならば適当な場所でたわいのない話をする。それが俺の日常で、ささやかな楽しみとなっていた。
今日も公園でばったりと出くわし、休憩中だという静雄さんにくっついている。喉が渇いたと静雄さんの分も聞きながら自販機へ駆け寄る。ブラックコーヒーと炭酸飲料を買い、ベンチに座る静雄さんの隣へと腰を掛け、どうぞ、と缶コーヒーを渡し今日もたわいのない話を始めた。

「ーで、現る、ヒーロー俺☆勿論、女の子を守りながらー」

話すとは言え殆ど俺が一方的に話す事が多い。静雄さんは微笑みながらそれを聞いていてくれるのが主だ。ふざけた話をしているとまるであの時みたいだ、と未だに割り切れない気持ちが浮かんでくる。あいつと会わなく、会えなくなってから結構経つ。会おうと決意したこともあった。しかし結局会うことはせず、連絡もしていない。関わることがあると言えば臨也さんが開いているチャットぐらいか。
そんなことを考えていて、話す口が止まっていたらしい。ハッと気付けばジッと見つめてくる静雄さんと目が合った。そっと伸びてくる手は頬を包み込み、浮かぶ表情は明るくない。

「前より少し痩せたか?」
「…い、え。気のせいですよ。」

心配する、そんな表情で問われた言葉が図星をついて思わず言葉に詰まる。静雄さんの言う通りあの事があってからは体重は一定の数値から増えることがない。現に今も前より減っている。
原因は、まぁ、いろいろだろう。心当たりは幾つかあるし、あまり食べないのも拍車を掛けているんだろう。前は学校帰りによく帝人と杏里と買い食いもしていたからな。今はしなく、出来なくなった分も体重に影響が出ているんだろう。
しかしそんなことを静雄さんに話せるわけもなく、大丈夫ですと、言葉を続けた。多分、静雄さんにはバレているだろう。現に、納得しない表情で俺を見ている。
そして頬を包み込んでいた手が離れたと思ったらその手は背中へ回り、引き寄せられた。
いきなりの行動に抵抗もなく静雄さんの胸にダイブし、そして優しく、強く抱きしめられた。

「あんま、一人でしょい込むな。ガキのくせに大きいもん背負い過ぎなんだよ、手前は。」
「……」

静雄さんには詳しく話していない。俺と帝人のこと、黄巾賊のこと、今、どうしているのかさえ。何も。でも見透かされたように紡がれる言葉に目尻が熱くなる。あぁ、ヤバい。静雄さん、離して下さい。でないと俺、

「ガキはガキらしく甘えてろ。」

背中に在った温もりが頭へと移動する。あぁ、静雄さん、どうしてそんなこと言うんですか。

「…少し、このままで居させて下さい。」

静雄さんに表情がバレないように顔を埋めて俺は静かに泣いた。
何も知らないからなのか、無関係だからなのか、静雄さんには、偽らなくていい、気張らなくていい、そんな気がした。

「あぁ、いつまでも居てやるよ。」

頭の上から降る声はとても優しい声だった。



【触れる温もりの温かさ】




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何気に【小さな優しさで恋は始まる】の続編にあったりします。
あの時は小説読んで思いついて今回はアニメみて思いついて。原点に戻った気がします(笑)
今の正臣に必要なのは「自分の過去も今も何も知らない知ろうとしない人」だと思うんですよ。臨也は論外、帝人は歩み寄れない、門田さんは過去を知っている、すると静ちゃんやろっちーあたりが正臣を幸せにしてくれると思います。どちらも知識程度には知っていそうですが多くは口にしないでしょうから!と妄想全開中。



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