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そろそろ終わらせよう(静正vs臨)

街中より外れた廃工場。人が宙を舞い、破壊音と悲鳴を奏で、時に赤が彩る。
若い顔触れの青少年は輪を作り、一人の人間を隙間無く囲う。その手には各々に武器を持つ。それはバットだったり角材だったり鉄パイプだったり。
対するバーテン服の男は煙草を啣え、己の周りを囲む若者を高揚とした目つきで睨み笑っている。

事の始まりは数時間前。
バーテン服の男、静雄はいつものように先輩、田中トムと取り立ての仕事をしていた。しかしいきなり現れたやんちゃな若者に喧嘩を売られ、売られた喧嘩を買い、暴力で黙らせて、その場はそれで収まった。だが、それだけでは収まらなかった。その後も普通に仕事に励んでいたが、その最中毎度の事ながら臨也の悪戯に嵌まった静雄はその怒りを当人にぶつけるべく新宿に訪れようとしていた。しかし途中本人からの電話で『本気で喧嘩したいなら街外れの工場においでよ。相手してあげるから。』と言われ素直に静雄は指定された工場を訪れた。だがそこに待ち構えるのは臨也ではなく、先程相手にした若者。それも待ってましたというように人数を集め、武器を手にして。

そうして現在に至っている。

数で勝る若者達だが、相手は喧嘩人形といわれる平和島静雄だ。威勢よく静雄に立ち向かっていた同志は瞬殺と言うように、一瞬で寝かしつけられた。同時に攻撃を仕掛けても差ほど変わらない。静雄は瞬時に避け、同時に攻撃を加え、確実に倒していく。そんな仲間の姿を見た若者達は半ば怖じけづき、一定の距離を保ち機会を伺っている。

「…もう終わりか?」

何も仕掛けてこない若者達に静雄は睨むように見つめて問い掛けた。答えなど返ってくるわけもなく、一人の若者を筆頭にその場の全員が静雄に襲い掛かった。
何十人もいるんだ。一斉ながば勝てると思ったのだろう。確かにその考えは正しかったようだ。5人程度なら対処出来ていた静雄だが、攻撃、攻撃、攻撃。休むことのない攻撃に中々反撃の隙が出来ず避けることしか出来ない。しかしそれも限度があり、死角から狙われれば攻撃を受けてしまう。人よりは頑丈な作りをしている静雄だが痛みがない訳ではない。撲られる衝撃に一瞬気を取られると直ぐにまた撲られる。
服はボロボロになりはじめ、所々に血が滲む。頭を撲られた時に切ったらしく、頬にも血は垂れる。少しヤバいか、と考えた時、静雄を中心として乱闘していたはずが端で悲鳴が聞こえた。
若者達も敵は静雄しかいないと踏んでいた為にいきなりの奇襲にざわめいた。攻撃の手が緩み、悲鳴が聞こえた方を全員でみる。もちろん静雄も例外ではなかった。
そこに見えるのは若者達と同じ年格好の少年。茶髪をなびかせ、手にはバールを持っている。そして静雄と目が合えば微笑んだ。

「お待たせしました、静雄さん。」
「き、だ…?」

紀田正臣。静雄の恋人である彼がそこには立っていた。何故かは静雄には分からない。此処にいることは静雄は誰にも言っていない。ならば残るは一人だろう。この原因となった人物を思い浮かべ静雄は唇を噛み締める。

「さぁ、さっさと終わらせましょう?」

そんな静雄に気付いているのかいないのか、正臣はバールを握り締め直す。
突然の訪問者が自分達の味方でないと知ると若者達は正臣にも襲い掛かった。静雄よりは喧嘩慣れはしていないが、かつて将軍と呼ばれ一つのカラーギャングを纏めていた男だ、攻撃を受けながらも着実に若者を地に捩じ伏せていく。
正臣も加わり、この喧嘩、数十分後には片がついた。

「なんで来た?」
「静雄さんが危ないって知って。」
「手前には関係ない事だ。」
「夫婦は苦楽を一緒にするもんっしょ。」

呻き声が響く中心で背中合わせに座り静雄は静かに問いた。撲られた箇所が痣になりつつあるのか痛いなと思いながらもへらへら笑い正臣はあたかも当然に答えた。確かに今回の喧嘩は正臣には一切関係ないことだ。しかし事を知った正臣は居てもたってもいられずに此処へ訪れた。そっと目を閉じその時の事を思い出す。

♂♀


いつものように喧嘩があると街が噂をしていた。それが静雄だとしてもいつものことだ、と怪我がないか心配していたが強さを知る正臣は差ほど気にも止めていなかった。
しかし耳に留まる噂に一つ気になるものがあった。
『今回の喧嘩、折原臨也も関わっているらしい』
臨也が関わっているとなれば話は別だ。正臣の足は自然と臨也の元へ向かった。

「臨也さん、静雄さんの場所を教えて下さい。貴方なら知っているでしょう。」
「…どうして君に教えないといけないんだ?」
「静雄さんが危ないからです。」
「嫌だと言ったら?」
「…アンタを」
「憎む?」
「……いいえ。嫌いにも憎みもしません。」
「…」
「存在を無視します。失礼しました。」
「…街外れの工場だよ。」
「!?」

ありがとうございます、と言う正臣の背中を見つめ臨也は小さく微笑んだ。

「俺のモノにならないなら一緒に死んじゃいなよ。」

♂♀


去り際に臨也の言葉を思い出した正臣は天井を仰ぎ見る。臨也は本気だった。つまり、これで終わるはずがない。
正臣の考えがそこに行き着いたとき、物音がした。二人同時に物音がした方を見れば新たに武器を持った輩。

「ハハッ、臨也さん。俺達を休める気ないな。」
「大丈夫か?」
「へーきっすよ、これくらい。」

独り言のように呟いていると静雄から労る言葉、緊張感なく笑うと正臣は立ち上がりバールを構えた。

「静雄さんは俺が守りますよ。」
「ハッ、逆だろ。」

背中合わせに二人は集う敵に不敵に笑った。


その二人を見つめる一つの影。彼は無表情に、そして高らかに笑った。

「アハハハハッ!今日は最高で最悪の日だ!大っ嫌いな奴と大好きな奴を同時に失うのだから。……あぁ、これはお祝いだよ、シズちゃん、正臣くん。そんなにも一緒がいいなら、



になよ。」










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静ちゃんと正臣の共闘を書きたくてこうなった。バトルって難しい!
とりあえず今回言わせたかった台詞
「苦楽を一緒にするのが夫婦。」
「存在を無視します。」
「俺達を休める気ないよな。」
「大っ嫌いな奴と大好きな奴を同時に失う。」
このくらいからこの話を妄想。
そこはかとなく正静w



あきゅろす。
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