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気持ちが分かるからこそ(静正)


どうもおかしい。
最近紀田に避けられている気がする。街中で出くわしてもいつもなら適度に話した後メシに行ったり解散したりするが、最近は挨拶そこそこに逃げるように去っていく。逃げられることに慣れてはいるが、アイツ相手だと傷付くものがある。
仮にも恋人だ。その恋人に避けられることはいい気分がしねぇ。理由も分からねーから余計苛立つ。
理由を確かめるため俺は、仕事の合間に来良の校門へと足を運んだ。



下校時刻、校門の隅にもたれて煙草を啣えた。火を点けようとした所で下校する生徒と目が合い少し躊躇する。
いつもは気にしねぇけど、ここでは止めとくか。
俺が居た頃よりも大分マシになった母校を見つめなんとなくそう思った。煙草を元に戻して空を見る。
あの頃は散々な高校生活だったよな、あのノミ蟲野郎のお陰で。

「よーし、今日もナンパにいっくぞー?」
「はぁ、また?」

荒れた高校生活を脳裏に浮かべていた所で目的の少年の声に現実へと引き戻された。
ゆっくり校門の影から姿を出せば丁度紀田と目が合う。目を見開くその姿は瞬間に踵を返した。

「じゃ、帝人。俺は忘れも、」
「ま、正臣?!」
「待て!」

走り出す前に腕を掴んで引き止める。隣にいる友人が驚いているがこの際知ったことじゃねぇ。掴んだ腕を引き寄せこちらを向かせた。

「何で最近さけ……その顔、どうした?」
「っ!」

理由を問い質そうとし、俯く顔を見る。すると微かに白い物が見えて顎を捉えて俯く顔を無理矢理上げさせた。右頬を覆うガーゼ、額に貼られる絆創膏。一目で察する喧嘩の跡。
確認と言うように聞くがビクリと肩が跳ねた以外行動が見当たらない。

「誰にやられた?」

質問を変えても同じだ。
紀田は沈黙に徹する。

「紀田?」
「……………し、静雄さんには関係ない…っす。これは俺の問題で、てかもう終わったことですし。」
「恋人が怪我負って関係ねぇだと?!」

長い沈黙の後、出てきたのは『関係ない』という言葉。これ以上紀田と話していてもラチがあかねぇ。掴んでいた手を離し背中を向けた。

「…静雄、さん?」
「手前が話さねぇなら分かった。見つけだしてぶっ殺すだけだ。」
「静雄さん!」

紀田に手を出した奴をどんな手を使ってでも見つけ出し殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。
『殺す』が頭を占め始めた所で服を掴まれ一度歩みを止める。振り向けば紀田が引き止めるように掴んでいた。

「んだよ。」
「静雄さんが御礼しなくても相手は俺より酷い」
「手前には関係ねぇ。俺がただ礼したいだけだ。」
「…っ」

同じように『関係ない』と言ってやれば傷付いた顔。そんな顔をさせたいわけじゃねー。そっと肩を引き寄せて抱きしめた。

「相手がどんな奴だろうとな、恋人が怪我させられて黙ってられっかよ。」
「分かります、けど、俺は俺のせいで静雄さんが傷付ける姿見たくないんです。…知れば、絶対そう言うから怪我が治るまで避けてたのに…。」
「んな理由か。」
「…どうせなら俺は…静雄さんが傷付けに行くより傍にいて癒して欲しいです。」

紀田に言い聞かすように言うと「俺も同じことするだろうし、」と呟いた後避けられていた理由も呟く。んな、馬鹿げた理由で避けられてたのかと思うとマジで紀田に怪我を負わせた奴らをぶん殴りに行きたくなった。しかし腕の中で必死に服を掴み引き止めようとする姿と聞き逃してしまいそうな程小さく呟かれた言葉に今はそれを止めた。
ちゅっと額の絆創膏へと口付け

「なら家来るか?」

と囁けば真っ赤になった紀田がいた。


【気持ちが分かるからこそ】


(というかここ、学校なんですけど、正臣、静雄さん。)




‐‐‐‐‐‐
静ちゃんなら人目を気にせず『恋人』発言してくれそう。後そういうような行動(でも無意識)
フリリク8つ目は☆盆☆様リクエスト、『静雄を避ける正臣と不審に思う静雄。』でした。理由は文中通り正臣が喧嘩した傷を見られたくないからと…こんな感じでどうでしょう?
☆盆☆様のみお持ち帰り、書き直し、苦情受け付けております。
企画参加ありがとうございました!
ちなみに最後の呟いているのは目の前で友人のラブラブっぷりを見せ付けられている帝人くんです(笑)




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