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ウイルスに侵食されました(臨正)


ピピッと無機質な電子音が響く。新しく変えたばかりの携帯だから着信音を変える為の曲が記憶されていない。何にしようかと考えながらアドレスと、電話番号変更のメールを打ち友達に送信している時にメールが届いた。変更メールを送った友達からかと思えば宛先には送った覚えのない人物の名前。

『折原臨也』

そもそもこの人のせいでアドレスだけではなく番号まで変えたと言うのにどうして変えてからまだ1時間足らずの今現在この人が俺の番号を知っているのだろうか。怒りと気味の悪さを抱えながらメールの次には着信。番号まで知られたのかと深く溜息を尽きながら文句を言うために通話ボタンを押す。

『正臣くん?携帯変えたんだね。さっき電話したら使われてないってアナウンス流れてびっくりしたよ。』
「それなのにどうして新しい番号をもう知っているんですか、臨也さん。」
『それは…情報屋だからね。最新の情報ぐらい手に入れて当たり前でしょ。』

あぁ、一回この人を自殺の名所に連れていき崖の上から突き落としてやりたい。
過ぎる殺意を感じながら「ストーカー行為は止めて下さい。」と言葉を返せば暫くの沈黙の後、『そう。』とだけ返って切れた。
一体何だったのだろうか、そんなことを切れて真っ暗になったメインディスプレイを見つめながら考えた。
そもそもあの人は何がしたいのかわからない。以前いきなり呼び出されたと思ったら、

『好きだよ、正臣くん。』

といきなりの告白。今度は何の嫌がらせが始まったのかと思いながらあの人の行動は加速していく。いつの間にか携帯に登録された『折原臨也』のアドレスと番号。そして教えてもいないのにいつの間にかあの人に知られている俺のアドレスと番号。何度変えても今回のように迅速にバレている。本当にストーカーかかよ、と悪態ついた事は何度あっただろうか。今回面と向かって言ってやったんだ、これで改善されることを願いながら、あの人にバレてしまったアドレスを再び変える為に専用のサイトを開いた。



それから数週間は平穏無事にあの人から何の接触もなく過ごすことが出来た。それはもう何か裏があるんじゃないかと言うほど。
とある日、珍しく俺の方から用事が出来てメール画面を開く。宛先に『臨也ストーカー』というアドレスを選び作成していく。

[宛先:臨也ストーカー
件名:無題
本文:
○月×日暇ですか?]

簡単に用件だけ伝えるメールを作ると送信ボタンを押す。あの人のことだからデート?とか言って来そうだけど無視は確定。
そんな対策を考えていると送信完了の画面と共に受信画面が表示された。いくら臨也さんと言えど送って1秒で返信なんて芸当出来ないだろう。ならば別の誰かがタイミング良く送ってきたのかと思いながらメールを開くとそれは携帯会社からのエラーメール。エラーのアドレスは勿論臨也さんだ。
どうして、それが頭を占める。いつもは聞いてもいないのに一方的に教えてきたり調べてきたりしていたのに。試しに電話を掛けてみた。しかし

『現在この電話番号は使われておりません。』

無機質なアナウンスのみが耳に届く。
思わず電話を落としそうになり、慌てて持ち直した。繋がりが消えたのだ、もうあの人に付き纏われなくて済むのだ。ならば喜ぶべきなのだろうが、心を締め付けられ、ズキリと痛んだ。
考えより先に体が動いていて気付いたら臨也さんのマンションに乗り込んでいた。
居なかったらどうしよう、そんな考えはなく、以前訪れた部屋のインターホンを鳴らす。女性の声が聞こえ、部屋すらも引き払ってしまったのかと先程までの勢いがなくなり、恐る恐る尋ねてみた。

『あぁ、居るわよ。開けるから入って来なさい。』

住居者の許しがなければ開かれないドアが開き、あの女性は誰だったのだろうかと考えながら部屋へと向かう。そして鍵の掛かっていないドアを開けて部屋へと上がり込んだ。
リビングに見えるムカつく影に歩み寄っては俺に気付き笑みを深めるその胸倉を掴んだ。

「なんで連絡が取れないんですか!」

自分でもびっくりするぐらい泣きそうで、縋り付くような声だった。

「だって君、新しいアドレス教えてくれなかったでしょ?使ってた携帯シズちゃんに壊されちゃったから番号も消えちゃったからさ。」
「貴方なら教えなくても、」

そこまで言って言葉に詰まる。以前自分で言った言葉。

「『ストーカー行動は止めて下さい。』だったっけ…?」
「っ!」

それを相手の口から言われ「調べて突き止めることなんて簡単でしょう。」その言葉を飲み込んだ。
返す言葉も見当たらず、悔しそうに目の前の、ムカつく笑顔を浮かべる相手を睨み付けた。
そっと手が伸びてきて髪を撫でる。

「連絡が取れなくて淋しかった?」

全てお見通しだと言うような言葉に否定出来ずに更に言葉に詰まった。
髪を撫でていた手で頬を撫でられビクリと体が反応する。
頬に熱が集中することを自覚しながら掴んだ胸倉を引き寄せ顔を近付け言ってやる。

「なら今度からあの手この手使って俺のアドレスとか番号とか突き止めてください!」

だけと教えてはやらない。それが俺の最後の防衛線。

だけどもう既に遅い。
俺は『折原臨也』という


【ウイルスに食されました】


特効薬は残念ながらそのウイルス。




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臨正企画、歪んだ黒とパーカー少年様に参加させて頂きました!
加えこのネタは以前お邪魔したチャットで頂いたネタだったりします。ストーカー臨也さんとそれを拒めなくなっている正臣くん。書けて良かった!長いけれど。




あきゅろす。
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