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続☆胸とフリルと怪しい飴玉(正臣総受け)

臨也さんに女の子にされてからかれこれ1時間程。あまり時間は経っていないはずなのに1時間と言う短い間に色々な事が凝縮されたせいで間隔的にはもう何時間も経っている気がする。
今は黒バイクの後ろに座っている。何処に連れて行かれるのだろうかと思いつつ、これ以上知り合いに会わないことを願う。もう大体知り合いには会い尽くした。そう簡単には会わないだろうと思いながら今日という日を呪わずにはいられない。
連れて行かれたのは西口公園。どうしてこんな所に連れてこられたのかと尋ねるのだけれど、

『済まない。それは話せない。ここで待っていれば直ぐにくる。』

それしか教えてくれない。だけど何となく分かってしまう。黒バイクにこう言うことを頼む人、俺を知っている人、名前を明かせない人。総合して見るとあの人しかいない。物事は何事も悪い方向に想像しよう。
このまま素直に待っていたら折原臨也と言う元凶が来る。

「あれ、セルティさん?」

黒バイクには悪いが隙を見て逃げようとしていた刹那、新たな訪問者。聞き覚えのあるその声にギクリとしてしまう。幼さの残る耳に慣れた声、かつて己も着ていた来良の制服に身を包む未だに童顔な幼なじみ。

「今日和。」

落ち着いた控え目な声、かつて友人と三角関係を楽しんでいた少女。
帝人と杏里が黒バイクに気付きこちらに向かっていた。近くまで来て俺と帝人の目が合う。以前よりは中々会わなくなった関係。4年振りに再会した時もこいつは直ぐに俺だと気付かなかった。ならば今回だって直ぐにはバレないはず。何たって今の俺は声変わりや染色という外見の変わりの範疇を越えているのだから。

「…正臣、何してるの?」
「え、紀田くん?」

淡い期待とは裏腹に人目で俺だと言い当てた友人にどうしてこう言うときの勘は冴えているのだ、と恨めしく思う。ちなみに黒バイクには俺の事は説明済みだ。

「人ちが」
「僕が正臣を間違えると思っているわけ?」

これはもう騙し通せる気がしない。帝人の目がじっと俺を捉えて離さない。
だけどせめて杏里までには知られたくない。これはもう男の意地だ。

「帝人、後で説明するから杏里を遠ざけてくれ。」

ガシリと首を引き寄せて耳打ちをする。何で、という顔を作るがじっと睨んでやったら分かったと頷いた。もう手遅れな感じはするが最後の悪あがきだ。

「あ、ゴメン。正臣じゃなくてお姉さんの臣子さんだったんだ。二人とも似ているから間違えました。」

どーしてそんな嘘をつくんだぁこの幼なじみは。声も上擦って言葉もちぐはぐ。てか臣子って誰だよ、俺か、もしかしなくても俺なのか?!

「帝人くん、流石に弟でも女装癖はないわよ?」

とりあえず話を合わせよう。そして誤解を解こう。後で一発帝人を殴ってやろう。そして何か奢らせてやる。
頭の中でごちゃごちゃ考えながら帝人は「用事がある」とか何とか言って杏里を先に帰らせた。疑問も抱かず素直に帰ってくれる杏里に感謝しつつのけ者にしてしまう事実に気落ちしながらこれも全ては臨也さんのせいだと元凶の始末を考えていると音楽が流れた。俺のかと一瞬考えたが設定音が違う。それは帝人も同じようで。では誰だろうかと音源を探るとそれは黒バイクのものだった。電話らしく耳(辺り)に電話機を当てている。
どうやって会話しているのだろうかとその様子を伺いつつ、一方的な会話だろうそれが終わるとPDAを取り出して何か打ち込んでいる。

『もうすぐ来るらしい。じゃあ私はこれで。』

つまり臨也さんが来ると言うわけですか。ならば今すぐ逃げなければ。
黒バイクに頷き、返事をすれば次の用事があるらしい黒バイクはそのままバイクに跨がり走り出す。それを見送ってから俺も歩き出したが腕を捕まれた。

「正臣、話は終わってないよ?」

無邪気に微笑む友人に、俺は凍りついた。忘れていた。そしてこの笑顔は覚えがある。有無を言わせない絶対的微笑。早くも逃げられないことを悟る。
帝人の馬鹿!と内心怒鳴りながら逃げる事を止めた。それが伝わったのか腕を離しそれで?と目が語っている。

「全ては臨也さんのせいだ。」

無駄な修飾語はいらない。帝人ならこれで伝わるはずだと核心めいたものを持ち帝人を見る。すればいつまの人の良さそうな気弱そうな表情ではなく俺に辛辣なツッコミを入れる時の冷たーい表情を浮かべている。
慣れてはいるけれど久しぶりに見るとこう背筋が寒くなるというか苦笑しか出ないというか、とりあえず心良いものではない。

「正臣、」
「は、はい。」
「どうして君はこうも臨也さんに騙されるかな?」

え、いや、どうして俺がいつもあの人に騙されているような言い振りなのだろうか。確かに過去にあの人の手の平で踊らされたけれど、でも帝人には言った記憶はない。
それならば過去にも一度あの人関連で痛い目に遭ったけれど、あれは騙されたわけじゃなく、気付いたらというやつで。と、そんなこと今の帝人には関係ないだろう。関係あるのは今臨也さんの手により俺の身に降り懸かった災難という事実だけ。

「それで、詳細は?」
「えっとおんな」
「女の子になっちゃったんだよねえ?」

冷たい帝人の視線を受け思わず視線を逸らしながら口を開いた直後、気配もなく後ろから抱きしめられた。しかも胸を強調するかのように上着の前を開けさせられる。

「い、臨也さん!」

羞恥に顔に熱が集中するのを感じつつ飄々狐のようにムカつく顔で笑う臨也さんを睨みつけた。
離せ、そして当然のように揉むな!変態、警察呼ぶぞ。いやむしろ呼んでくれ、帝人。

「臨也さん。正臣から離れて下さい。」
「え、嫌だ。なんで無関係な帝人くんの言うこと聞かないといけないのかな?」

目の前の友人に助けを求めて視線をやれば鞄から筆箱を取り出す帝人。…帝人、帝人さーん?助けてくれようとする意気込みは有り難いんだけど、っさ。ボールペンで何をするつもりですか?!

「臨也さん、もう一度言います。正臣から離れて下さい。」
「君も随分粋がるよね。君の持つ力は強大かもしれないけれど君自身は軟弱なただの高校生だ。」
「…確かに私は軟弱かもしれない。けれど、立ち向かう力はあります。右が良いですか?左が良いですか?」

二人の会話を聞いていて気落ちするのがわかる。…ダメだ、お前まで深くまで堕ちることは無いんだ。臨也さんに向けるボールペン。何をするかは想像したくない。
何としてでもこの変態を引きはがさなければ。帝人が人を傷付ける姿は見たくない。それが例えば大っ嫌いな臨也さんが相手だとしても。

「臨也、さん。」
「ん?」
「離して下さい。俺、傷つく姿を見たくないで、す。」
「…それは帝人くんが?」

誰が、とは敢えて言わなかった。言葉だけを取ればこの場合臨也さんになるのだろうけど、臨也さんには俺の考えていることがバレているようだ。事実上傷付けるのは帝人だけれど、根は優しい奴だ、心が傷付く。
臨也さんは本当に何でもお見通しなのかもしれない。
力では敵わない。言葉でも敵わない。このまま帝人が誰かを傷付ける姿を見なければいけないのか、それも俺のせいで。
それ以上何も紡げないでいると背中にあった温度が離れた。何があったのだろうかと振り向けば困ったような顔をした臨也さんと目が合う。この人もこんな顔をするんだと思っていると臨也さんの手が頬を覆う。

「君の泣き顔は好きだけどさあ、他の男のことで泣くのはムカつく。」

覆っていた手で頬を摘まれた。痛いし、泣いてない。
ムカつくけれど、こういう時折見せる優しさに心底嫌いになれない自分が嫌だ。

「正臣!」

何も言わずに睨み付けていれば帝人の声がすると同時に抱きしめられた。
無意識なんだろうけれど、というか男の時と同じ接し方なんだろうけど、女性にいきなり抱き着くなんて大胆なやつだ。などと考えながら帝人が誰かを俺のせいで傷付けなかった事実にホッとしている。

「そうそう、ついでに戻る方法も教えてあげる。」

やけに楽しげに前置きを述べる臨也さんに確実に何かよくないことがあることが分かる。なんだ、前回みたいに『俺を好いているやつのキス』とか言うのか?…あれ、そう言えばあれは門田さんとその、キスして戻ったっていうことは…?

「正臣くんを抱けばいいんだよ。」

門田さんは俺を…ってはぁ?!ちょっとまて、この人今何て言った?物凄くおかしい事が聞こえたんだけど。ちょっとまて、なんだこの二択。女の子のまま過ごすか抱かれるかって究極過ぎる。てか、それなら俺死んだ方がマシだ。

「ちゃんとイか」
「待てそこの変態野郎。そろそろ三途の川渡らせてやる。」

やっぱりこの人は嫌いだ。一瞬でも心底嫌いになれないなんて思った自分を殴りたい。
帝人なんか免疫ないものだから顔を赤くして固まっている。本当初だよな。大丈夫か?
心配そうに帝人を覗き込むように見ていれば目が合い更に顔が赤くなる帝人。というかなんでそこまで意識しているんだ?

「そういうわけで元に戻りたいなら俺の所においで?」
「あんたに抱かれるくらいなら一緒女の子でいた方がマシだ。」

あれ、似たような台詞前にも言ったことがあるような。まぁいいか。
本当かは知らないけれど、元に戻る方法は聞き出した。それならばもう此処にいる必要がないと俺は帝人の手を取り走り出した。

「臨也さん、あんたなんか大っ嫌いだ。」

それだけ臨也さんに言い捨てる。走りながら帝人に暫く泊めてほしいと告げる。
元に戻るまで家に引きこもっているつもりだが家には沙樹がいるし、一人ではいつあの変態が乗り込んでくるか分からない。一番安全な帝人と一緒にいるのが無難だという結論に至りその旨を伝えると、帝人は少し困ったような悲しむような顔をして「分かった。正臣は僕が守るよ。」と返事をした。…やっぱり元は男だとしても女の子と二人っきりになるのは抵抗があるのだろうか。そんな事を考えながら帝人の家に向かった。


正臣は知らない。正臣が元に戻るまでの一日、帝人は理性と欲望と闘っていたことを。
それはまた、別の話。


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終わります!長かった…。後半4人と前半の半分ぐらいしか人数でていないのになぜ同じくらいの長さなんだ!詳しいあとがきはもう日記に書きます、字数が足りない。
フリリク4つ目の後半。ゆきのこ様リクの『にょたor幼児化。オチは臨正か帝正。』ということで帝人くんが勝利です。終始臨也の変態っぷりに殴りたくなる衝動がちらほら…。場面的に入れることが出来なかった没がありますのでそれも日記に載せようと思います。
では企画参加有難うございます!お持ち帰り、苦情、書き直す等ゆきのこ様オンリーで受付ています。





あきゅろす。
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