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胸とフリルと怪しい飴玉(正臣総受け)

「正臣くん。」

警笛警笛警笛。あの人が満面の笑みで近付いてきます。

「そんなに警戒してどうしたのさ?」

警告警告警告。この人、明らかに何か企んでいる。

「ほら、あーん。」
「え、あー…」

と、自分の反射神経を今以上に恨むことはない。口を開く臨也さんの真似をしてしまい緩く口を開いてしまう。直ぐに危険だと思い口を閉ざすも遅し。口の中に何かを放り込まれた。球状のそれからは甘い味がした。

「…飴?」
「そう、美味しいでしょ?」

そんなことを言いながら臨也さんも多分同じ?飴を見せ付けるように口の中に放り舐め始める。また怪しいものかと警戒したがこの人と同じような飴みたいだから安心だろう。そう自己完結して有り難く飴を貰うことにした。


と、数十分前の自分の浅はかな考えを恨むことは言うまでもない。
どうしてかって?それは簡単。

「臨也さん、これ、いつ戻るんですか?」
「え?戻らないよ?」

首を絞めてやりました。

「酷いな、いきなり人殺し?」
「人の性別を了承なしに換える人にだけは言われたくないです。」
「可愛いから良いじゃないか。」

今度こそ確実に息の根を止めてやろうかという殺意を覚えながら抑える、今は。戻る方法を突き止めたら遠慮なく殺ってやるけど。
そんな決意新たに自分の姿を見て深く溜息をついた。
どうしてかって?そりゃ、少しふくよかになった胸、くびれが出来たらしいウエスト、幾分高くなった声を始め、臨也の玩具のように髪にはエクステ、ひらひらとフリルがポイントにあしらわれる服にミニスカートにニーソ、足元が寒い。
勝手に性転換されただけじゃなく近くのブティックに拉致され着飾れました。
俺、女の子になっちゃいました。いや、されたの間違えだけれど。

「で、何時になったら戻るんですか?あとコート貸して下さい、寒い。」

再度同じ問いを繰り返しながら露出が多くスカートも短いから寒くて仕方がない、コートを寄越せと引っ張るけれどそんな俺がこの人の目にどう映ったのか知らないけれど、(寧ろ知りたくもない。)何を勘違いしたかコートを広げて「さぁ、抱き着いておいで!」のポーズ。軽くドン引きしながら後ずさると狙ったかのように臨也さんの真横からコンビニで良く見掛けるごみ箱が衝突した。軽く5m程飛ばされ地面に横たわる姿を見て天罰だな、と冷めた目で見つめた後、ごみ箱が飛んで来た方向を見れば、あぁやっぱり、青筋を額に立てた静雄さんと目が合った。

「臨也!今日という今日は殺す!」

そのままトドメお願いします、と巻き添えを食わぬ様に距離を置いていると静雄さんが近付いてくる。でも臨也さんの方にじゃなく俺の方に。…俺、何もしてません。ガンも飛ばしてませんし静雄さんの邪魔をする気もありません。寧ろ静雄さんを援助します。
そんなことを心に浮かべ少し戦きながら静雄さんを見る。その表情は臨也さんに向けていた表情で人を殺せそうな怒った顔ではなく何処か驚いた表情。

「紀田…か?」
「…は、い。」

あ、忘れていた。今は臨也さんのせいで女装ならぬ女体化していた。この状況をどう説明するか迷い言葉にならない声を上げていると不意に背後に気配。

「正臣くんは俺のお嫁さんなんだよ?だからシズちゃんは勝手に見ちゃダーメ。」
「きゃっ!」

とかほざきながらお、俺の胸を揉んだ。いきなりの事に女の子みたいな(いや、今実質そうだけど!)声を上げて体が跳ねた。そのまま体を抱きしめられればすっぽりと臨也さんの腕の中に収まってしまう。嫌だ、離せと抵抗を試みるが腕力も落ちているのか振りほどけない。(決して元からなんかじゃない!)

「臨也さん、離して下さい。」
「いいでしょ、君と俺の仲だしさ?」
「どんな仲だこの変たっ!」

再び胸を揉まれた。そして耳元で「大きくしがいがある。」とか意味分からないこと言われ男の急所を蹴ってやろうかと本気で考えた。しかし実行する前に元からキレていた静雄さんが更にブチ切れた。

「臨也、手前また紀田に手出してんのか!」

近くの標識を引っこ抜き振り回す。いや、俺に当たりますって!
こういうのには慣れている臨也さんに引かれ直撃は免れたが目の前を掠め、本気で生命の危機を感じる。
回避で出来た隙をついて臨也さんから離れた。瞬間臨也さんから舌打ちが聞こえたが臨也さんの手が俺に届く前に静雄さんの振り回す標識が遮り、俺は再び捕まると言う難を逃れた。そのまま二人の非常識な喧嘩に巻き込まれないようにとその場をダッシュで逃げ出した。
後ろで

「え、シズちゃんも触りたかった?このスケベー。」
「いーざーやー!!殺す殺す殺す殺す。」

と言う会話が聞こえた気がする。うん、聞こえなかったことにしよう。
自己完結しては人通りの少ない道を選んで元に戻るまでの時間潰しをすることに決めた。



のが、いけなかったのか。
現在、3人程の野郎に囲まれてます。

「ね、お嬢ちゃん俺達と一緒に遊ばない?」
「勿論、俺達の奢りで。」
「楽しませてやるからさ。」

いかにもナンパ、というにはかなりやらしいこと目的丸出しの野郎が俺の逃げ道を塞いで迫ってくる。今日は臨也さんに変な薬を飲まされるし、喧嘩に巻き込まれるし、野郎にナンパされるし…厄日だ。
はぁ、と相手せずにこっそり溜息をついたことに気付いたのかいきなり右手を捕まれ怒声が飛ぶ。

「聞いてんのかよ?!」
「うわっ」
「可愛いからって調子こいてるとお兄さん達がお仕置きしちゃうよ?」

色々ツッコミたいけれど我慢しよう、女装ならまだしも完璧女の子では聞いてもらえないことは確実。でも敢えていうなら可愛くない。
掴み上げられた腕に下手な抵抗でもして怪我も嫌だし、だからと言って大人しく従う気もない。はて、どうするかと相手の出方を見る。厭らしい目付きで見定めするように見られ、こちらには聞こえないようにというつもりなのか男同士で「誰が先にヤる?」とか下品な話をしている。残念ながら聞こえているんだよな、これが。
本格的にこのまま平行線でもヤバいと悟ると腕に力を込めて掴まれたそれを振り払う。そのまま目の前の男の鳩尾に向けて足蹴りを一発。油断していたこともあるのだろう、蹴られた男は後方に飛び腹を抱えてうずくまる。仲間が蹴り飛ばされたことで出来た隙を見逃さず、走り出す。しかし慣れないヒールの靴。臨也さんを恨みながら足をくじかないように気をつけながら走るが思うようにスピードが出ない。追う男に腕を掴まれもう終わりだと思ったその瞬間男の後ろに影が現れ、それは男の後ろ首に手刀を食らわせ意識を奪った。

「………。」

低い悲鳴と共に俺の腕を掴んでいた男は倒れ、そしてもう一人の男も膝蹴りを受けて地に伏せた。
一瞬とも言える光景に目を見開いて固まってしまう。何が起きたのか、まずそれを確かめる為に攻撃してきた男を見る。ストローハットを目深に被り薄い服を重ね着したカジュアルな服装。細身で顔立ちがよく、先程男達に見せていた冷たい表情とは裏腹に俺には紳士を思わせる柔らかな笑顔で手を差し出された。
この人は、

「お嬢さん、怪我はないですか?」
「ろ、くじょうさん。」

六条千景さん。確か埼玉に戻ったと聞いていたがまたこっちに来ていたみたいだ。
思わず呟いた名前に六条さんは首を傾げた。それもそうだろう。だってこっちは女の子になっている。男の俺とは何度か顔を合わせて一緒にナンパとかしていたが今は違う。思案顔で見られてどう説明しようかと迷う。一言、『女の子になりました。』なんて説明して納得しないだろう。いや、されても困るのだけれど。

「あれ、もしかして以前会ったことありましたか?」
「え、あ…」

ここは別人となってやり過ごすことが一番だろう。結論付ければ六条さんの質問に緩く首を横に振る。

「友人に…貴方の話を聞いてて…。助けてもらいありがとうございます。」
「いいですよ。嫌がる貴女を追い掛けていた報いです。」

本当、六条さんは女の子には優しい。いや、女の子を大事にする人にもそれなりには優しいけれど。
男の中の男だよな、と尊敬の眼差しを送っていると目が合う。

「どうしました?」
「えっと、友達が言っていたように優しい人だな、と。」

優しい紳士スマイルで返され、思わず目を逸らしてしまう。いつもは女の子ばかり見ているから気付かなかったけれど六条さんってカッコイイ。
そんなことを思っていると声を掛けられた。正確には俺じゃなくて六条さんが。

「千景か?何やってんだ?」

二人で同じように振り向くとそこには門田さんがいた。

「あれ、デート中ですか?」
「何々?愛の逃避行?!」
「門田さんと六条さん、謎の美少女の三角関係?!」
「いやいや、そこに紀田くんも入れて四角関係でしょ?」

そして遊馬崎さんと狩沢さんも顔を覗かせるようにひょっこりと顔を見せた。
からかう気、というか妄想する気満々だなというか何故そこに俺の名前が出てくるのだろうか。テンション高めに二人でこうだそうだなどとオタトークをマシンガントークで繰り広げけている。そんな二人に飽きれ顔の門田さん。大変だと思いながら門田さんと六条さんを見た。

「顔見かけたから声を掛けたが…悪い、邪魔したか?」
「ん、あ?別に大丈夫だ。お嬢さんが絡まれてたの助けただけだし。」

あれ、いつもより少しだけ冷たい言い方だ。門田さんと何かあったのだろうか?俺と居るときはもう少し柔らかに話すのだけれど、そんな事を考えながら二人の会話に耳を傾ける。というか俺はそろそろ退場していいだろうか。
六条さんや門田さんだけならバレた時まだ説明しやすい。特に門田さんは臨也さんとは同級生だ。臨也さんのことを言えば納得するだろう。問題は遊馬崎さんと狩沢さんだ。絶対真実を言ったとしても妄想で掻き消されるか後々のネタになる。…それだけはどうしても避けたい。今と言う自体さえ俺の黒歴史なのに、これ以上増やすわけにはいかない。
抜け出す方法を考えていると何処からか馬の嘶きが聞こえた。街中で嘶き?とも思うが心当たりが一つだけある。

「黒バイク?」

首なしライダーとも言われる妖精、デュラハンの姿を思い浮かべながら周りを見渡すと丁度バイクで曲がり角を曲がって来たところだった。そのまま通り過ぎるのだろうと思っていたがどうやら違うらしい。俺達の目の前に止まるとPDAを取り出し何かを打ち込んでいる。

『済まないが正臣君を探しているんだが知らないか?』

打ち出される文字を俺達は揃って目で追う。正臣、と自分の名前が出た所でビクリと反応してしまう。何故俺が黒バイクに探されているのかは知らない、というかこの際どうでもいい。今はどう切り抜けるか、だったが黒バイクと目が合い(実際何処に目があるのかという話だが、)視線を逸らした。それに黒バイクは不思議に思ったようだ、首を傾げてバイクから降り近付いてくる。

『もしかして正お』
「ま、正臣くんなら私が知っているから案内します!」

カタカタと小さなタッチ音に振り向き打ち出される文字を見て冷や汗をかいた。このままじゃ確実にバレる。黒バイクの手を引いて案内役に買って出た。
黒バイクは『なら頼む』と打つと黒いメットを渡され被るとバイクの後ろに跨がった。

「六条さん、門田さん、失礼します。」

走り出す前にそれだけ言うと俺は更なる地獄に向かうこととなった。
後から思うと、まだここでバレていた方がマシだったのかもしれない。


つづく


‐‐‐‐‐
あまりにも長いので此処で切らせてもらいます。連載の1話分よりも長いのはどういうことでしょうか?
多分人物が多いのと書きたいことが多いからだ、きっと!
それではまだ続きますがフリリク4つ目はゆきのこ様リクエストの『薬でにょたor幼児化。』です。今回はにょたで+いつか幼児化も書きたい。詳しくあとがきは後半にて。
まだ続きますがゆきのこ様のみお持ち帰り、書き直し等受け付けております。
企画参加ありがとうございます!後半も宜しければお楽しみ下さい。




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