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紛れる黄色に瞳奪われて(静正)


「そういえば手前、髪染めてんだよな。」

いきなりの雨に適当な店の軒下で雨宿りをしていたら、通り過ぎた静雄さんと目が合った。傘を忘れて雨宿り中だと伝えたら、半ば問答無用に傘に入らされ肩を並べて歩いていた。
仕事中なのに悪いと思いながら久しぶりの恋人との逢瀬に甘え、雨と傘を忘れた過去の自分に感謝をしていると冒頭の言葉を投げ掛けられた。

「え、あ、はい。中学の時にちょっと…」

静雄さんに黄巾賊にいたことは明確には話していない。少し言葉を濁してしまい視線をさ迷わせながらもちらりと静雄さんの表情を伺う。
見える表情に特に変わった様子などなく、「ふーん。」と小さな相槌が耳に届いた。
しかしいきなりどうしてなのだろうか。疑問に思うも口にして良いことかと迷っていると先に静雄さんの口が開く。

「両親に貰った体、あんまいじんなよ。」

ぽんっと効果音がつきそうなくらい和やかに頭上に手を置かれる。足どりは二人とも自然に止まっている。
そのまま手は髪を撫でながら移動していき耳を撫でられ驚きと擽ったさに肩が跳ねる。

「耳も、もう開けんな。」

ゆっくり優しく撫でるものだから余計擽ったく、恥ずかしい。顔に集中する熱がばれないように顔を背けて表情を隠す。本当、いきなりなんなんだ。

「し、静雄さんこそ髪染めてるじゃないですか。」
「あ、…これは一種の目印見てぇなもんだ。」
「…?」

唯一出た言葉に人の事が言えないと納得したのか静雄さんも歯切れの悪い返答。少し気になり横目で相手を伺い、

「俺が直ぐに静雄さんだって分かるようにですか?」

なんて冗談を言ってみたり。
驚いた表情を見せて気さくな笑顔。「そうだ。」と答えられて意表を突かれた。否定はしないだろうとは思ったけれど冗談に付き合ってくれるとも思ってなかった。
それなら、

「この髪の色も静雄さんが俺を見付けてくれるようにっておまじないです。」

いつの間にか止んだ雨に、傘から飛び出ては振り返り笑顔をつくる。
何処にいても貴方の目に入るように、
何処にいても貴方を見付けられるように、
髪を染めた理由は別にあれど、俺は今そう決めた。

「静雄さん、ちゃんと俺を見付けて下さいね?」

笑顔で尋ねれば笑顔で頷く恋人に、一層笑顔を深めた。



‐‐‐‐‐
おかしいな、最後は昔の写真を見に行こうって感じに終わるはずだったのに…?
とりあえず髪を染めた話と静雄に「親から貰った体を大事にしろ」と言わせたかっただけ。
フリリク3つ目、匿名様の『静正、シチュ指定なし』ということで好き勝手、ネタストックの中からこれを使わせて貰いました。
リクエストありがとうございました!
余談、タイトルに特別意味はないです。思いつくままに綴ったらああなりました。




あきゅろす。
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