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嗚呼、完全に毒された(臨正)

「お姉ーさん。俺とお茶しない?」

後悔は先に立たず。そんな諺があったよな、なんて声を掛けてから思い出した。

学校が休みになる日曜日、帝人と杏里は用事があるらしく、暇を持て余した俺は久しぶりにナンパへと街に出た。道行くお姉さん達に声を掛けてはお茶に誘う。
今もそうだった。一人で公園の噴水の近くに腰を掛ける年上の女性。俯いて本を読む姿に心引かれて声を掛けた。
それが間違えだとは気付かずに。

「…なら、一緒に遊びに行く?」

思いもよらぬ返答にキョトンとしてしまう。ここまで積極的な女性は初めてだった。笑顔を作って頷き名前を尋ねた。

「お姉さん、お名前は?俺は」
「紀田正臣くん。」
「あれ、なんで俺の名前知ってるの?まさかエスパー?それとも能力者とか?」

沙樹に会った時も似たようなことが有ったな、などと当時を思い出しながら首を傾げる。お姉さんは小さく笑って長く細い指を一本立てて口元に宛てて、

「君の事ならなんでも知っているわよ。」

と艶かしく微笑んだ。
そして本を鞄へと終い立ち上がる。そして手を差し出して口を開いた。

「私は甘楽。何処へ行く?」

甘楽、と記憶に引っ掛かり掛ける名前を口の中で繰り返しお姉さんを見た。黒く柔らかそうなセミロングの髪と鮮やかな赤い瞳。
腕へと抱き着かれ、耳元で囁かれる声は低く。

「本当、君は女のコが好きだねえ。」
「は…っ?!」

その声と姿はとても見覚えがあった。

「臨也さん!」
「正ー解♪まさかここまでバッチリ騙されるなんて思わなかったよ。」

該当する人物の名前を叫べは悪戯が成功したかのようにムカつく笑顔を浮かべた。そりゃもう殴りたくなるくらいムカつく笑顔を。
未だ騙されて口説いていた時の事を思い出しているのか小さく笑う姿は本当に女性のようなのに物凄く残念だ。

「それじゃあ行こうか。何処へ、なんて野暮なことは聞かないだろう?デートに誘ったのは君なんだからさ。」

楽しげに笑いながら手を引かれ、返す言葉がなければ従うしかなかった。数分前の自分を呪いながら。

でも、たまにはデートも良いかも知れないと思い始め、直ぐに頭からその考えを追い出した。


【嗚呼、完全にされた】

‐‐‐‐‐‐‐
きっかけを忘れてしまったけれど遊園地デートさせたいと思いネタメモに記入してあった話。
…今思えば帝正の方がすんなり遊園地デートいけるのに何故臨正なんだろうか。
→正解、甘楽ちゃんを出したかったから。
だと思う。とりあえず遊園地デートに続きます。全部書くときっと物凄く長くなるだろうから分割なのさ。


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