だってこっちを向いてくれない(静正)
「静雄さん。」
いつもの仕事の合間、公園で一服していると背後から掛けられる声。俺に掛けられる声としては珍しい明るい声にその主の少年を思い浮かべながら振り向いた。何時もの笑顔を思い浮かべて少年を見るのだが、何か違和感。
いつもと同じように笑顔なのだが、纏う雰囲気が違う。いつもと明るい調子の声音と笑顔だが、手に隠し持つ工具がそれを相殺している。いや、寧ろ浮き彫りにして良くない予感がする。
「一緒に臨也さんを殺りにいきましょう?」
予感ではなくなった。こいつの口から紡がれる不吉な単語に眉を潜めた。そして力強く抱きしめる。
「手前がそんなこというな。」
いつも自分で口にしている言葉。こいつの口から聞くと随分気が滅入るというか嫌な気分になる。
「手前の手をあのノミ蟲なんかで汚させるか!」
行かせない、アイツのところなんかに。汚させない、あんな奴の為に。
力強く強く抱きしめていれば小さな笑い声。そっと力を緩めて腕の中の少年を見ればいつもと同じ笑顔。雰囲気もいつの間にか柔らかいもので、状況が把握出来ない。
「なら、ちゃんと俺を捕まえていて下さい。じゃないと妬いて本当に実行しちゃうかもしれません。」
カランと何かが落ちた。確かめる前に両頬を俺からしては小さな手が包み込み、そして唇を重ねられた。
離れていくその笑顔はまるで悪戯が成功したガキのようで、
「…騙したな。」
「騙してませんよ。本当になるかもしれない…静雄さんの態度次第で。」
悪戯に笑うその頭をくしゃりと乱暴に撫でてやった。
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5000ヒット御礼の【夫婦喧嘩は犬も食わぬ】を書いた後に「静雄は標識、正臣はバール装備で臨也に殴り込みいけばいい!」的なコメント貰い、妄想しました。静ちゃんなら協力するより止めるかなと思いこうなりましたね。でも正臣の本気が分かればきっと協力するであろう…。
6000ヒット御礼になります!
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