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想いを馳せる(谷田→正)
※中学生黄巾族!



「全く、びっくりさせるなよな。」
「すみません…」
「いや、怒ってるわけでもねぇし、何でもないならそんでいいんだけどな。」

池袋で名前が通り始めた黄巾族。
そのメンバーが屯している廃工場で正臣は仲間の一人が怪我をしている姿を見つけ慌てた様子で詰め寄った。
大丈夫なのか。どうしたのか。何があったのか。誰にやられたのか。
青ざめた表情で詰め寄る正臣に、怪我をした少年――谷田部は場違いにも心配されることが嬉しく思っていた。
しかし勘違いさせたままだと今にも自分の為に喧嘩に出かけそうな正臣に気付くとニヘラと柔らかな笑みを浮かべて安心させる言葉を紡ぐ。

「将軍、落ち着いてください。これは喧嘩とかじゃなくその……暴走した犬に押し倒されただけなんで…」

動物に襲われたということが恥ずかしく、谷田部は顔を赤くし少しそっぽを向いて頬を掻く。
始め正臣はその言葉は自分を安心させる嘘なのかと疑ったが周りの仲間からここぞとばかりに谷田部をからかう言葉が矢継ぎ早に紡がれはじめ嘘ではないことに肩を竦めた。
そして、大事ではないことを雰囲気で感じ取ると「ちょっと待ってろ」と谷田部に声を掛けて正臣は廃工場を後にした。
数分後、ビニール袋を携えた正臣が戻ってきた谷田部はおろか他のメンバーも首を傾げる。
袋の中から消毒液や包帯、絆創膏などが出てきたところで正臣が谷田部を手当しようとしていることに気付く。
テキパキと手際よく準備を始め、消毒液片手に正臣はにっこりと笑った。

「ちょっと滲みるぞ?」
「〜〜〜〜〜!!!!!」

言うやいなや、谷田部の事情はお構いなしに正臣は彼の傷口を容赦なく消毒液を浸したガーゼで撫でる。
不意なことと、走る痛むに声成らぬ声を上げ、悶える谷田部を見ながら正臣はくすくすと笑う。

「おいおい、情けねぇな。」
「せめて心の準備をくださいよ…」

軽く涙目になりながら谷田部は弱弱しく言いながら、間近にある正臣の顔に気付く。
息遣いが聞こえるほどの距離に谷田部は次第に高まる鼓動が正臣に聞こえないかと心配になりながら、当の本人は別の事を考えていた。
――昔もこうやって帝人を手当したよな。あいつドジだから…。
数年前に引っ越しで離ればなれになった友人。
犬に追いかけられて泣いている姿を思い出して正臣は小さく笑った。
その笑みが谷田部には見たことないほど柔らかなものに胸にもやっとしたものが浮かぶ。
――将軍は…今何を想っているだろうか。
自分達以外を想う笑う正臣。谷田部は彼の想い人に知らずと嫉妬をしながら手当を受けていた。
周りの、仲間からの嫉妬と恨みの視線を受けながら。




【想いを馳せる】




「ほら、デコも出せって。」

包帯を巻きながら谷田部のバンダナをほどきとる正臣。
隠していたつもりの谷田部は彼の観察眼に感服しながら胸の想いを持て余す。





―――――
陽斗様のやたまさに滾った結果。
喧嘩の怪我にしてもよかったかなと思いつつ平和な日常にしてみたら、正帝と化した一品。おかしいな?
素敵なやたまさイラストありがとうございました!お礼に捧げます!




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