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甘い甘いチョコレートプレイ(帝正)



登校するなりいきなり知らない女子から呼び出され、可愛らしくラッピングされた小さな箱を手渡された。

「あの…き、紀田くん、良かったら…」

これはもしかしなくてもアレ?お菓子メーカーが発案の素晴らしい風習にしてイベント。バレンタインに告白!
顔を赤くしながらこちらを伺う少女、俺は勿論断るはずもなく、

「サンキュー、え、何々手作り?いや、市販でも俺は美味しく頂いちゃうよ?勿論君ご、と!」

手を取り見つめて笑顔を作ると可愛らしく笑う彼女。
それを発端として物陰から次々と女の子達が現れた。

「紀田くん、私も!」
「私が先よ!」
「いいえ私が」
「はいはい俺は逃げも隠れもしないから皆落ち着いて!俺のために争わないで!」

何々これ、俺まさにモテ期到来?





♂♀






「…………と、言う夢を見た。」
「へー正夢にならなくて残念だねー」
「ちょっと待て!今日はまだ始まったばかりだぞ!結論はまだ早くないか?!」

現在8時の登校中。今朝見た夢を帝人に話していると携帯をいじりながらばっさり夢を切り捨てるのは俺の幼馴染みで同級生の竜ヶ峰帝人君。見ての通りバレンタインにモテモテとは程遠い奥手で童貞の高校男子。ふっ、俺のモテ様に嫉妬か?男の嫉妬は醜いぜ!
一切こちらに興味なしの帝人に俺は少しだけ拗ねる様に頬を膨らませた。
んだよ、もうちょっと構ってくれたっていいんじゃねーの、冷てーの。
熱心に携帯を弄る友人の頬をつんつーんと突いて構えコールをしていると視界の端に映った女の子。小走りに俺の方へ掛けてくるじゃないの!しかも手にはチョコレートらしき箱!
え、何あれ正夢?俺ってエスパー??

「朝一に渡した―‥…………」
「ぶっ」

両手を広げWELCOME!で待ち構えているとどこぞの漫才宜しく横を勢い良く通り過ぎられた。後ろでは他の男子と話す黄色い声が聞こえ横では友人の心ない笑い声が聞こえる。

「笑うなんて酷くね!笑うことはねーだろ!」
「だって正臣、貰う気満々で…アハハ…思い出したらまた笑えてきた。」

何この友人!人が傷心中なのにトドメをさすなんて!
帝人の馬鹿!おたんこなす!

「帝人には杏里から『私を食べて?』って言われてもおすそ分けしてやらねーからなー!」
「何その酷く痛い妄想?!園原さんまで巻き込まないであげてよ!」

ベーッと舌を出し帝人を放って置いて校舎へ走り入る。
帝人なんか今年は一個も貰えない決定だ!




♂♀





朝、正臣が馬鹿やっていたのを可愛いと思いながら本気で笑ってしまったら機嫌を損ねたらしい。
昼休み。
園原さんは用事があるらしく今日は別々で昼食を食べることになったんだけど

「……」
「…」

煩いまでに喋る正臣が沈黙を貫いている。
お昼を一緒に食べに来るってことは差ほど怒ってないとは思うんだけどいつもは口から生まれたと思うぐらいとめどなく話題を振ってくる彼が沈黙を貫いているのはおかしい。
あとちらちらこちらの様子を伺っている。
…あ、仲直りのタイミングを見計らってるとか?
正臣も午前の授業で頭が冷えて朝の事をどう切り出すか迷っているのかな。

「…正臣…」
「ご馳走様」
「え、あ、正臣」

僕が悪いんだし謝ろうと口を開いた瞬間正臣が立ち上がる。食べ終わったパンのゴミを近場のごみ箱に捨ててクラスメートに駆け寄っていった。

「なーなーチョコ何個貰ったよ?」
「お、紀田。お前こそ何個だよ?」
「残念!俺は無駄な争いを生まない為に泣く泣く断っ」
「つまり貰ってないと。」
「自称モテ男が泣けるなー」
「あ、紀田君、何、チョコ欲しいの?」
「欲しい欲しい!義理から大本命まで俺の心はまだまだ余裕っすよ☆」
「紀田ァ言ってること矛盾してっぞ!」
「もらわねぇんじゃねーのかよ!」
「ハハハッ!モテないダメンズよ、おこぼれが欲しいか!」

クラスメートとの男女と騒ぐ正臣。ポッキーを貰ったようで一緒に話してる子に見せびらかせて食べている。
楽しそうに騒ぐ。僕を無視して。





♂♀





夢話もダメ。クラスメートとの会話でもダメ。
……

「素直にくれって言うかな…」

帝人にそれとなくチョコレート欲しい、ギブミーチョコレート!コールをしているのだが悉くかわされ、無視される。
素直に言ったところでくれそうにねーし…今年も俺からかな…。
帝人はこういったイベントは結構疎い。今時は逆チョコってのもあって彼氏から贈ることもあるんだからな!
しかし待機せどもそれとなくコールしてみてもダメ。
寧ろチョコ…買ってるわけねっか…。
放課後、帝人の日直の仕事が終わるのを待ちながら鞄の中の自分で買ったチョコを見る。
ま…来月たんまり請求すっか。
今日が過ぎてしまっては元もこもない。仕方がなく折れ、帝人に鞄の中のチョコを渡すことに決め帝人の帰りを待つ。

「正臣、お待たせ。」
「おーぉ…?」

教室に戻ってきた帝人の声を聞いて机に伏せっていた身体を上げ帝人を見て固まる。鼓動が早くなるのを感じ、嫌な汗が流れる。

「帝人…それ……」

知りたい知りたくない。
二つの相反する気持ち。
しかしここで無視するにも後から後悔するだろう。
半ば反射的の言葉ではあったが帝人の持っている可愛らしいラッピングの包みを指差した。
そうすれば帝人はあぁっと幸せそうに笑う。
聞かなきゃ良かった。帝人もそこそこモテるほうなんだろう。きっと誰かからのプレゼントなんだ。

「今日ずっとそわそわしていたでしょ?」
「は…?」
「感謝してよね。今月バイト代まだで厳しい家計をやりくりして買ってあげたんだから。…ハッピーバレンタイン?」

誰かからの、そう思っていたチョコレートを手渡され、頭が真っ白になる。
え、どういうこと?

「正臣?」
「え、俺…に?」
「何を今更…欲しそうにしてたくせに。朝からチョコ貰う夢話してくるし他の子から貰おうとするし昼休みは昼休みで」

文句をぐちぐち言う帝人だが言いたいことは何と無く分かった、てか俺の行動の理由とか気持ちとかモロバレとか何この羞恥プレイ。
照れた様に机に腕を組んで伏せて顔を隠す。
そうすると帝人の気配が近付いて来て耳元で、

「正臣からはないの?毎年楽しみにしてるんだけど……ないなら今年は正臣を貰おうかな?」
「…///」

の…馬鹿帝人ォ…。
返事というように起き上がると帝人の首に腕を回して口付けた。







【甘い甘いチョコレートプレイ】








あぁ、本当、貰えるかなってそわそわしてる正臣は可愛かったな。
朝一で渡して喜ばせようと思ってたのにあんな夢話すし勝手に怒って行っちゃうから渡しそびれてたけど、良いものが見れた。


「ん、…正臣」
「俺からのチョコレート」

口移してくれた甘い甘いチョコレートに驚いて正臣を見れば顔を真っ赤にして視線を逸らしている彼。
んー正臣ごと今ここで貰っちゃ怒るかな。








‐‐‐‐‐
帝人様ムッツリ\(^p^)/
やる気がイベント事当日になって舞い降りてくるミステリー。
元から帝人からチョコほしくてそわそわする正臣が書きたかったわけですが。
ちなみに本来総受け→帝人オチ予定のを帝人オチだけ書いたという。
本当は逆チョコで静雄や臨也や滝口とか色んな人から正臣がチョコ貰ってあげてーするんだけど帝人からは貰えず貰えないのかな?ってそわそわする、そんな話の予定がやる気が逃亡を謀ったんだ。ちなみに臨也はバレンタインなった同時に不法侵入して「ハッピーバレンタイン!」ってチョコ渡してくるのを正臣が帝人式撃退法で追っ払う、そんな冒頭考えていたけど帝人式撃退法が思い出せなくてお蔵入り。

帝人と正臣はもうどっちがどっちか書き分け出来ないっ!どっちも可愛いのが悪い!

一応ホワイトデーはこの話の続き予定だけどネタは思い付いていない。






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