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怪我の功名(静正)



「うわ!!!」
「正臣?!」
「紀田君!」

盛大な叫び声が校庭に響く。同時に派手な物音。更には叫び声の主を心配する呼びかけ。
つまり、校庭にはハードルの下敷きになる少年と、心配するように駆けつけた二人の少年少女がいた。



♂♀




「正臣大丈夫?」
「平気平気。ちょっと手足を擦りむいただけだって。保健室の先生も包帯なんて大袈裟なんだよなぁ。」

体育の時間、ハードル走の練習中に盛大にハードルにダイブした俺は例外なく怪我を負った。単なる掠り傷なんだが血が出ていたこととその量が普通より多いことから帝人がパニックを起こし、杏里に連れられて保健室に行けば保険医に大袈裟なまでに手当をされた。
包帯を巻かれた手に視線を落とす帝人は自分の事の様にその目には悲しみが浮かんでいる。
それを振り払うように俺は大丈夫と繰り返し、手を振り平気だと示せば少しだけ笑う帝人。杏里もその横で心配そうに眉を下げて見ていたがにっこりほほ笑めば笑い返してくれる。二人とも心配性なんだよなぁ。ま、なんか愛されてるって感じで嬉しいけどな。
…愛されていると言えば…問題がもう一つあった。

「正臣?」
「あ、あぁ。んじゃまた明日なー!」
「え、」
「俺はナンパに忙しいのさ。帝人も来るか?」
「うん、さようなら」
「紀田君、また明日。」
「おう、杏里もオオカミ帝人には気をつけろよ!」
「正臣!」

その問題をどうするかを考えていると帝人が覗き込んで来て我に返る。
ボーっとして帝人達の話を無視していたようだ。それが帝人にはこの怪我で俺が無理して笑っているとかそんなことを思ったらしくさっきまで浮かんでいた笑顔がまた消えていた。
本当、昔から心配性で人一倍気にするんだよな。変わってねぇや。
大丈夫だと再度笑い、帝人の頭を撫でて2人とは別方向へ歩き出す。そんな俺に面を食らった帝人は間抜けな顔で俺を見てくる。
理由を簡単に述べれば呆れたような溜息と冷たい言葉。
これがさっきまで自分のことの様に泣きそうになりながら俺を心配していた奴だぜ?何という冷たさ。
ま、こんなやり取りが心地いいんだけどな。
最後に冗談を言って走り出すと後ろから帝人の声が聞こえるが無視無視。
そうして少し走ったところで立ち止まると振り返った。

「それで…いつまでついてくるんすか?」
「手前が逃げるからだろう?!」
「や、そんな怖い形相で睨み付けられれば誰でも逃げますって………静雄さん。」

そこに居たのは帝人と別れたあたりからついてきていたこの池袋最強…恐?の平和島静雄…こと俺の恋人。
そんな彼が睨むだけで人を殺せそうな怖い顔で俺を追ってくるんだ。いくら恋人だろうが逃げたくもなる!
しかし…何となくだが理由は予想出来る。

「その手…どうしたんだ?」

ほら、やっぱり。
俺の手の包帯を見て一層静雄さんの形相が険しくなる。
帝人と同じ様に心配してくれているんだ、この人は。でも怪我の理由がこの人の場合はまず違うことに結びつくだけで。

「誰にやられた?」

喧嘩っ早いこの人から怪我と見ればそういうことなんだろう。
それとも強靭な体を持つこの人には体育で怪我をしたという考えがないのだろうか。
心配されるのは大事にされているとわかって嬉しいけど…今にも誰をか起こしそうな勢いはどうにかならないかな…。

「強いて言うならハードル?」
「ハードル?分かった、殺す。」
「はい、ストーップ。静雄さん?言っておきますがハードルという名前の人ではなく体育で使う器具ですからね?」
「分かった、めきっと壊す。」
「はい、静雄さん。単なる掠り傷なんでやめてください。」

やばい、この人マジに冗談つうじねぇ!
笑いのネタとして言ってみたが今の静雄さんには通じないらしい。いや、どんな時でも通じない気がしてきた。
今にもその人を探して殴りに行きそうな静雄さんに訂正すると今度は学校に行ってハードルを壊しそうな勢いである。
どうしたらこの人を止められるだろう。
悩む反面、愛を痛いほど感じ照れくさくなる。

「とりあえず大丈夫なんで…どっか飯行きましょ?あーんしてください、あーんって。」
「は…何…」
「だってこの怪我じゃ箸とか持ちにくいんっすよ。だからあーんって」
「…家でいいか。」
「お、静雄さんの手料理っすか?」
「コンビニだ。」
「えー」

でも被害が出るのはなるべく避けたいので静雄さんの意識を別方向へ持っていく。
結構初な静雄さんは食べさせてほしいっていうだけで顔を真っ赤にしてきょどった。
うっわ、新鮮!
ついつい悪戯心が芽生えると理由をつけてせがむ。そうすればさっきまでの怒りはどこへやら、照れたように視線を逸らして外でそれをやるのは恥ずかしいらしく家で御馳走してくれること。
でもコンビニ弁当らしく不貞腐れるとデコに手を構えられ黙る。
いくらデコピンでも静雄さんには凶器なんだからな!
わいわいと騒ぎながら静雄さんの家に向う。勿論、静雄さんとご飯を食べるため。




【怪我の功名】






「ほら、」
「あーん。」

そのあと何だかんだ言って静雄さんは俺のリクエストに答えてくれてオムライスを作ってくれた。
俺はその上に『静雄LOVE』って書いたら静雄さんが対抗して自分のに『正臣LOVE』と書いた。
いつもは名字で呼ぶくせにずるい。






‐‐‐‐‐‐
なんか執筆したいってなーちゃんにつぶやいたら「しずまさー。体育の時間に怪我しちゃって帝人に心配される紀田くんー」と来たので書いてみた。おうなろよ、しずまさ要素何処だ?と見た瞬間思ったね。そして書くものが違うのはもはやいつものこと。なーちゃんに押し付ける。




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