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寒い冬も愛の暖かさで(トム正)
※学パロ。


鼻を擽る甘い香り。調理室に近付く程食欲がそそる香りに俺は走っていた足を更に早めた。
放課後、調理部が部活をしている調理室。今日は何を作っているのだろうかと校庭側の窓からひょっこりと顔を覗かせる。
中ではエプロン姿の女子が圧倒的に多く、男子の姿は一人しか見当たらない。
その男子生徒こそこの調理部の部長であり、俺の目当ての人物。

「トム先輩!今日は何作ってるんすか?」
「お、紀田。助っ人は終わったべ?」

窓の外から声を掛ければボールを抱えたトム先輩が振り返る。
ボールを置く代わりに何か机から取り、俺のいる窓に近付いてきて予め話していた野球部の助っ人のことを尋ねられると俺は親指を立てグーサインを作った。

「もち、俺のチームが勝ちましたよ!何たって俺が助っ人に入ったんですから!」

俺は何処か部活に所属している訳ではないんだけど運動神経抜群な俺は何処の部活にも引っ張り凧なわけ。ってのは冗談だがでも数合わせに呼ばれたりする。
今日も部員に欠員が出て急遽練習試合にお呼ばれしたわけで、その結果をトム先輩に報告すればお疲れと頭を撫でられた。

「疲れたべ?作ってきたからほれ。」
「?」

差し出されたタッパーに何が入っているのだろうと首を傾げているとトム先輩が蓋を開け中を見せてくれる。甘酸っぱい匂いが広がり自然と頬が緩んだ。

「疲れた時には蜂蜜レモンだろ?」
「流石トム先輩!」

見える艶光りするレモンに普段は見向きもしないのに今は美味しそうに見える。
食べさせて、と催促するように口を開けば苦笑を浮かべながら一切れ摘んで口元にもってきてくれた。
室内と室外で少し段差があり、背伸びしてレモンに食いつくとしっかりと蜂蜜が染み込んだレモンは疲れた体を癒してくれる。
甘さと酸っぱさに頬を緩め咀嚼していく。噛む度に蜂蜜に良く浸ったレモンは甘さを醸し出し口内にレモンの酸味と一緒に広がっていく。

「美味しいっす!トム先輩、俺の嫁になりませんか?」
「それは無理だな。嫁に来るのは紀田だべ。旦那さんにはなってやるよ。」
「…っ!反則…」

何度食べても美味しいトム先輩の料理。冗談半分に言ってみるといつもの爽やかな笑顔でサラリと交わされた。いや、交わさたと言うより予想内で予想外の受け止め方をされ、頭を優しく撫でてくれるから余計恥ずかしくなり言葉を失う。
くそう…かっこよすぎだっての!

「あ、紀田。もう部活も終わっからいつも通り校門で」
「いぃぃざぁぁあやぁぁあああ!!」
「今日は裏門にするべ。」
「…ですね。分かりました。なら先行ってますね!」

言葉を探しているともう部活が終わりらしいトム先輩はこれからの話をする。
特別用がない限り一緒に帰ることに自然となり、今日もいつも通り校門で待ち合わせと言うことになりかけた。
しかしそちらから聞こえてくるこの学校の名物となりつつある静雄先輩の怒鳴り声を聞き、予定変更。
聞こえた単語は一番危険信号で巻き添いを食う確率が跳ね上がるもの。
彼の天敵である折原臨也と今日も仲良く鬼ごっこということか。

「し、静雄せんぱ…」
「ありゃあれは…」

障らぬ神に祟りなし。無視を決め込もうとしているとか細い声と見慣れた姿が走っていくのが見え、この鬼ごっこも直ぐに終わりが見えるだろうと肩を竦めた。

「あれは竜ヶ峰か?」
「そうっすね。飼い主が現れたんで…今日の被害は少なそうですよ。」

トム先輩も気付いたらしく同じように校門の方向を見ている。
いくら静雄先輩でも恋人の言うことには甘いし、帝人は帝人でしっかりしているから騒ぎも直ぐに落ち着くだろう。

「んじゃ、トム先輩、先に行ってますね。」
「ん、おぉ。すぐ行く。」

先ほどより日常的な騒がしさを取り戻した校門を尻目に俺はトム先輩に一言声を掛け、まだ校庭にある荷物を取りに駆け出した。




♂♀



それから20分。
裏門でトム先輩を待つが一向に現れる気配がない。
どうしたのだろうかと携帯を開き見てみるが電話もメールもない。メールはしたが何か用が出来て忙しいのかと思うと電話も躊躇われ、結局ただ待つしかなくなる。
陽射しはあれど冬も絶好調な今の時期に簡単な防寒具だけでは寒く、一旦校舎に戻ろうかと思い足を踏み出すもトム先輩と行き違いになったら嫌だと直ぐに踏み止まる。それを何度か繰り返した時、呼ぶ声に顔を上げた。

「悪い!担任に引き止められちまって」
「…………それなら仕方がないっすね。もういいんすか?」

遅い寒い連絡ぐらいは欲しい。様々な言葉が浮かんだが全てを飲み込み肩を竦めて笑った。
トム先輩はしっかり者だし頼りになる。だから仕方がないんだ。
遅くなった理由はもう大丈夫なのかと確認すれば大した用では無かったらしく大丈夫と返ってきた。一瞬俺のせいで後回しにしたのではとも考えたがそれならそれもいいかもしれない。だって好きな人を独り占めにするのは恋人の特権だろ?
急いで来てくれたらしいトム先輩の呼吸が整うのを待って歩き出す。
するといきなり手を握られトム先輩を見た。

「冷てぇ!こんな冷えるまで待ってくれたべ?本当悪い!」
「あ…や、中で待ってればいいのを勝手に待ってただけなんで…」

かなり冷えた手から伝わる温もりに何故だかドキドキする。手を繋ぐぐらい、初めてじゃないのに。
俺の両手を合わせ、それを包み込む様に握られ鼓動が早くなるのが分かった。

「あ…の……」
「こうするとあったかいだろ?」
「…トム先輩!……は、恥ずかしいので」

確かに温かいのだけど生徒の視線が気になるわけで…。
包み込まれた手を動かし片手を恋人繋ぎに繋ぎ直して伺う様に見つめる。

「だから…これで……トム先輩の家で何か温かいもの飲ませてくださいよ?」
「OK、OK!そうと決まれば行くか。」

一瞬キョトン顔を作るトム先輩だったが直ぐに笑顔を作れば俺の手を引いて歩き出す。

この人は冬でも温かい人だ。




【寒い冬も愛の暖かさで】






「あ、」
「?」

暫く並んで歩いていると急に立ち止まるトム先輩。何か忘れ物でもしたのだろうかと首を傾げていると繋いだ手を解かれ、代わりに首元に触れた温かさ。

「少しはマシになるべ。」
「トム先輩が寒いっしょ?」

トム先輩が巻いていたマフラーを掛けて貰ったのだが俺は既に自分の分を巻いている。これではトム先輩が風邪を引いてしまう。
既製品より長めの自分のマフラーをトム先輩の首にも巻き直して満足げに笑う。

「これでよし!」
「ありがとさん。」

一つのマフラーを二人で分け合う。恋人とする巻き方にトム先輩も笑って受け取ってくれる。

この冬はとても暖かです。






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にいさま誕生日おめっとぉぉおおお!
おかしいな、ネタ請求した手を繋いで帰るあたりのネタがおまけ的な雰囲気?!
物事は予定通りに行かないから面白い!プロット意味ねぇ!!
そういうわけで予定通りならなーちゃんがこのイメイラを書いててくれているはずです、楽しみだなぁ楽しみだなぁ楽しみだなぁ!

にいさま、これからもよろしく!
にいさまのみお持ち帰り、書き直しなどOK。




あきゅろす。
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