[携帯モード] [URL送信]
祝福をこの身に刻んで(日々デリ)



何もない。
何でもある。
しかし俺が欲しいモノは何もない。
しかし俺が望むモノは何でもある。
何もない。
何でもある。
しかし君は何も望まない。
しかし君は与えてくれる。


存在すら不安なこの空間で、俺は君に何をしてあげるだろうか。

存在を許され認められ祝福されるこの日に俺は。




♂♀




「え、誕生日をどうしたらいいか?」
「そうです。低俗な市民はどう誕生日を祝っているのか……わざわざ俺が市民のレベルに合わせて祝ってあげようとですね。」

誰かを祝う事など初めてで、誰かの為に何かをしようと思ったのも初めてで、何をどうしたらいいのか分からない。
初めて尽くしの事は一人で考えいても打開策が出てこなかった。
だから唯一友達と言えるリンダに尋ねることにした。
リンダの部屋を訪れれば彼は恋人の津軽に寄り添い何かをするわけでもなくそこに居た。
リンダの傍で愛馬の足を止め、降りて簡単に事の説明をするとリンダは首を捻る。

「人それぞれだけど…自分がしたいって思うことをしてやればいいんじゃないか?」
「それが分からないから聞いているんです!」

ありきたりで、要領を得ない返答に思わず叫んでしまえば驚いた様にキョトンと見られた。
それに気も止めず頬を膨らませ恨めしげに見つめる。

「自分が何をしたらいいか分かっているならそもそも聞きませんよ。君は本当お馬鹿さんですね。デリックが何を望んでいるか欲しがっているか…知っていたら聞かせて下さい。あと庶民は何を貰ったら嬉しいなど……そういうことをですね、」
「…なぁ、それでデリックは本当に喜んでくれるのか?他人の意見を聞いたプレゼント、模範解答の様なプレゼント……俺はあまり嬉しくない。どんなものでも好きな人が自分を思って考えて悩み抜いたものなら俺はなんだって嬉しいよ。例えそれが傍に居てくれることだけだとしても。俺は好きな人と一緒に居られるだけで幸せだから。」
「…………本当ですか?君は君でデリックじゃない。あくまでそれは君の考え方であり」
「俺も…リンダが居てくれるだけで幸せだ。手前は違うのか?」
「!」
「手前はあいつと一緒にいる以外に何か望むのか…?」

リンダの言うことは確かに分かるがデリックも同じとは限らない。俺はデリックに喜んで貰いたいんだ。
納得は出来るがそれでいいのかと迷う。
渋っていると今まで黙っていた津軽が口を開く。紡がれる言葉の羅列に目を細めた。
俺はデリックに沢山我が儘を言っている、でも、

「…参考になりました。」

一緒にいるだけで幸せだ。
自分の中で結論が出ると愛馬に跨がり走らせた。
向かう先は勿論デリックの元だ。




♂♀




歩く度、出会う度に増えていく包装された箱。
今日は俺の誕生日らしい。
ないなら作ればいい、そう出会い頭にサイケとリンダに言われ、それから他の面子とも話し合っていたのか祝福の言葉と共に贈られるプレゼント。
今まで日々也しか居なかった世界に増えた友人。祝福に擽ったさを感じながら…この中にないもらえる事すらも望み薄なプレゼントに苦笑した。
日々也がわざわざ用意するわけないよな。つか誕生日すら知らねぇだろう。
諦めていると馬の蹄の音と嘶きが聞こえ振り向くと日々也がかなり近くまで迫っていた。日々也だけが。こいつの愛馬はその後ろに小さくあり、

「デリック!」
「な…わぁああ!!」

文字通り飛んできたと言ってもいい日々也を受け止め反動で押し倒される。
腹の上に乗る日々也に今日はどうしたのだろうかと様子を伺う。

「た、…誕生日らしいですね。おめでとうございます。いきなりなので何も出来ませんが………今晩は寝かせませんよ?」

日々也からの祝福の言葉に期待していなかった分驚きと嬉しさが込み上げありがとうと呟く前に紡がれた言葉にザッと青ざめた。
日々也がこんなこと言う時は本当に寝かせて貰えなくて、足腰も当然立たなくなる。
でも嬉しいのだから結局は受け入れてしまうわけで、

「ではベッドに行きましょう。あ、ここがいいですか?」
「…手前の好きな様にすればいいさ。」

手を伸ばし日々也を引き寄せるとキスをする。






【祝福をこの身に刻んで】








‐‐‐‐‐
前半の乙女日々也のログアウトぶり。だって日々デリだもん。
というわけでデリ、誕生日おめでとう!
何故正臣受けサイトらしくデリリンにしなかったのか書き上げてから疑問に思った。





あきゅろす。
無料HPエムペ!