[携帯モード] [URL送信]
創られたことに祝福を(サイ津リン)



「つーがる!」

一人で唄の練習をしている津軽に後ろから抱き着くとそのままバランスを崩した津軽は俺と一緒に倒れ込み、怒った様に睨まれたが視線が合うとそれも和らいだ。
方向を変え前から抱きしめると優しく宥める様に頭を撫でてくれる。

「vVvV」
「リンダ…」

それが嬉しくてすりすりと擦り寄っていたら吐く息の様に力のない声に顔を上げて首を傾げた。

「…なんでもない。」

何か言いたそうに口を開いた津軽だったが渋い顔も直ぐに笑みに変わり力強く抱きしめられる。

ゆったりとした時の流れ。
静雄が設定した鳥の囀り、水の音など安らぐ音が満ちる津軽の部屋で俺達は何をする訳でもなく体を寄り添い佇む。

しかし画面の向こう側(静雄達)から騒がしい音が漏れ聞こえ顔を上げた。

「津軽…なんだと思う?」
「何かあるのか?」

こちらから向こうはカメラの電源が入らない限り見ることは出来ない。
賑やかな音だけが微かに聞こえてくる向こう側に何かあるのかと津軽に聞いて見るが津軽も知らないらしく首を傾げた。
一度気になりだすと知りたくなる。
津軽に身を寄せたまま上を見上げ静雄に声をかけてみるが反応はない。
向こう側の賑やかな音に忙しいのか単にイヤホン設定のままで声が届いていないだけなのか。どちらにしろ何度か呼びかけても反応は無かった。
つまんねー!俺らも混ぜてくれればいいのに。
PCの住人の俺らがどうやって、と言うのもあるが向こうが見えるだけでも結構違う。
ふて腐れ津軽にぎゅーっと抱き着くと津軽は苦笑して頭を撫でてくれた。

「後で聞けばいいさ。」
「俺はリアルタイムで楽しみてーの!」
「リンダは俺と二人っきりは嫌か?」
「そんなわけねーだろ!津軽と二人っきりも良いの!」

淋しげな問いに撫でられて心地好くなっていた意識がハッキリする。津軽に寄り掛かっていた体を起こして真っ直ぐに津軽を見て否定すると淋しさが浮かんでいた表情が笑みに変わるのが分かり俺も自然と笑みを作る。

「静雄達も何か勝手に楽しんでるし、俺達もデート」
「つ、が、るー!」

デートしよう、そう誘おうとする前に新たな声と共に上から何か降ってきた。
この声は

「「サイケ」!」
「あれ、お邪魔だった?ごめんね??でも俺も早く言いたくって!」

津軽の呆れた声と俺の怒鳴り声が重なり津軽の方を向いていたサイケが振り返る。
いつもながらの無邪気な笑顔に拗ねた様に頬を膨らませているとごめんね?と再度言われてキスをされた。

「な…!」
「サイケ」
「あー津軽怖い顔しないでよ?盗らない盗らない。でね、はい!」

顔を真っ赤にして口をパクパクしていると今度は津軽がかなり低い声でサイケを睨みつけた。
しかしサイケはそれをもろともしないように流すとポケットから明らかに入るはずのないサイズのリボンで包装された箱を取り出した。
二人で何だと見ていればサイケがその視線にどうしたのと言う様に首を傾げた。

「何?ん?ほら、Happy Burberry!だよ??」
「…誰のだ?」
「津軽の。」
「津軽、誕生日なのか?!」
「俺は知らねぇ。」

どう言うことなんだ?
サイケが言うには津軽の誕生日だっていうけど津軽は知らないって…サイケの勘違い??

「おかしいなぁ。今日はシズちゃんの誕生日って臨也が張り切ってたからそのモデルとなる津軽も誕生日ってことでしょ?違うの?」
「そもそも俺達に誕生日っていうのは通用するのか?」

ごもっとも。俺達はプログラムで命があるわけじゃない。個性はあれど魂はない。ただの機械に人間達の理など当て嵌まるはずがない。
そう思うとこの気持ちも予め用意されたものなのかと思うと淋しくなった。

「通用するしないじゃないさ!無いなら作ればいい。俺達は生まれこうやって動いて(生きて)いるのだから!だから今日が津軽の誕生日。大好きなシズちゃん(マスター)と一緒で嬉しいでしょ?」

沈んだ気持ちを慰めるようサイケはいつもの通りに無邪気に明るく言う。
自慢げに俺達を見つめてくるサイケに二人して笑みを零した。

「そうだな。津軽が認めようと認めないとも今日は津軽の誕生日だ!」
「俺の意見は無視かよ。」
「だって楽しそうだし…なんたって創られた(生まれた)事を祝うんだ。津軽、生まれてきてありがとう。」
「…あぁ。リンダもサイケもありがとう。」






【創られた事に祝福を】




「しかし誕生日って具体的に何するんだ?」
「好きなもの食べたりケーキ食べたりプレゼント渡したり…?」
「プレゼント…」

今、津軽の誕生日が今日って決まったから何も用意してない。
ちらっと津軽を見つめ、暫し考える。

「今年はこれで我慢な?」

今直ぐに出来る事と言ったらこれくらいしか思い付かず、俺は津軽にキスをした。

「我慢も何も嬉しいさ。」
「あー津軽とリンダだけ狡い!俺も俺も!」

津軽に抱きしめられているとサイケが津軽にキスをして、それを見た俺がまたキスをして、二人で津軽の取り合いをしていたら津軽が怒ったので二人で津軽を押し倒してそのまま抱き着き擦り寄った。

「「津軽、誕生日おめでとう!」」





‐‐‐‐‐‐
タイトルは思いつかなかっt。
サイ→津リンでサイケは津軽もリンダも大好きなんですよ。
画面の向こう側では静雄がトムさんや正臣や帝人達に誕生日を祝われているに違いない。





あきゅろす。
無料HPエムペ!