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産まれたことに祝福を(静正)



「静雄さん、27日の夜って仕事っすか?」

数日前、街中で紀田に会った時に突然問われた言葉。何の事だと思いながら予定を思い出し「夕方には仕事が終わるはずだ。」と答えればパァっと紀田の表情が明るくなった。
27日に何かあるのかと首を捻り聞くが紀田は慌て、「何でもない」と言うだけで、詳しくは言おうとしない。力ずくで言わせてやろうかとも思ったが仕事中と言うこともあり断念するしかなかった。

それから、紀田と会ってない。いや、避けられていると言う方が正しいか。



♂♀



そんなやり取りも忘れた27日。
いつもながらに仕事など順調に行くはずもなく、今日もトムさんに迷惑を掛けてしまったと自分を責めながら帰る帰路。
携帯で時間を確認すればもうすぐ0時を回ろうとしていた時間で、終業予定時間を大幅に過ぎている事に苛立ちが沸き上がってくる。
しかしそれが爆発する前に部屋の前に見慣れた姿により鎮まると同時に疑問が浮かぶ。
紀田?どうしてこんな時間にこんな所に。
最近滅法姿を見せなかった恋人が俺の部屋の前でうろうろしながら携帯と睨めっこしている。

「き―…」
「真っ暗か…静雄さんもう寝てっかな……」

こんな時間にどうしたんだと声を掛けようとした瞬間自分の名前が出て来た事に思わず口を閉ざし、曲がり門に身を潜めた。何と無くだが今のあいつに声を掛けるべきじゃねぇと思ったんだ。
身を潜め、耳を澄まし紀田が何をしているのか様子を伺う。
暫く中を伺っていた紀田だが携帯を見た後、肩を竦めて動き回るのを止めた。そして携帯を操作した後、ソレに向かって何やら呟いている。電話をしている訳ではなさそうで、何をしているのか検討が付かない。
その行為も終えると再び画面を見つめ、指を仕切に動かしている。
全ての作業が終わったころ、紀田は淋しげに俺の部屋を見つめ、笑い、立ち尽くす。
やはり声を掛けるべきかと身を乗り出すと携帯が鳴る。その着信音は紀田からのもので、どうしようかと迷った後、携帯を取り出し画面を操作した。
メール着信のようで、その中身を見て俺は首を傾げる。中には何も書かれておらず、添付ファイルがあるのみだった。
目の前の紀田と、携帯を交互に見つめながら携帯を耳に当て、添付ファイルを開いた。音声ファイルのそれからは紀田の声が流れて来る。

『Happy Birthday!静雄さん!ふふふ、零時丁度にメール、愛しか感じないっしょ?何たって愛しかないですからね!プレゼントはも、ち、ろ、ん、お、れ…なんちって!ちゃんと用意してあるので昼間渡しに行きますね!楽しみにしてて下さい!愛に愛を掛けて選びましたから!まさに愛をプレゼント!んじゃ、静雄さん、産まれて来て俺と出会って俺を愛してくれて俺の愛を受け入れてくれてありがとうございます。………………………………………………………………………………………………………………………………………………もし…このメールをリアルタイムで見ているなら』
「紀田!」

紀田が歩き出すのを見て、俺は駆け出した。
まさか本当に出て来るとは思っていなかったのだろう、紀田は振り向き俺を見ると目を見開いた。

「し…」
「サンキュー。俺も…手前と出会えて嬉しい。」
「あ…な……」

立ち止まった紀田を力強く力強く抱きしめ耳元で囁けば赤くなった。ナンパをしたり、あんなこと軽く言えるわりには初い反応に愛おしさが更に沸き上がる。

「なぁ…で、プレゼント…はやっぱり紀田か?」

もっと可愛い紀田がみたくなり冗談を冗談で返せば図星だったのかビクンと体が跳ねたかと思うと上げた顔と目が合い真っ赤だった顔が更に真っ赤になり、終いにはポスンと胸に顔をぐりぐり押し付けてくる。
は……まさか…マジ?
照れたことを隠す様な素振りに冗談のつもりだったのに期待してしまう。
耳元でどうなんだと返答を促せばボソボソと家に入ってからのお楽しみだと小さな声が返ってきた。

「なら部屋入っか。」
「な…だからって期待すんなよ?!いや、何を考えで!いってー!」
「敬語、抜けてんぞ。」
「だからってデコピンはないっしょ?!」

加減はしたつもりだが赤くなる額にごめんと言うようにキスをすればわーわー騒いでいた紀田が大人しくなった。
代わりに熟れたリンゴの様に顔を真っ赤にして恨めし気に俺を見つめてくる。身長差からその視線は自然と上目使いになっていて可愛さが割り増しだ。
思わずぎゅうっと抱きしめると少し屈み、尻と背中に腕を這わせてだっこの要領で抱き上げた。

「な、…静雄さ…!」
「暴れんな。」

驚いた紀田が腕の中で抵抗するように暴れ始め危うく落としそうになる。それを肌で感じ取ったのか紀田はそれ以上は暴れる素振りは見せなかったがしかし照れているのか顔を上げる気配もない。

「…静雄さ………も…!」

しかし諦めたかのように紀田は首に抱きつくと耳元で「誕生日だから特別ですからね。」と囁いてキスをしてくれた。

本当、今までに最高の誕生日だ。



【産まれたことに祝福を】



部屋に紀田を連れ込み、そしてベッドへと優しく下す。そのまま紀田を押し倒すように覆いかぶさり、抱きしめ俺は目を閉じた。

「…って、え、静雄さん!?」
「ん?」
「いや…し…ないんす…か?」
「シてぇのか?」
「あ、や…一応俺がプレゼント…っすし…」
「俺、好きなもんは後から食うんだわ。」
「はい…?」
「今夜、覚悟しとけ。」
「…!!!」






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静雄誕生日おめでとう!
某着うたサイトから正臣の誕生日おめボイスがあるのを見て思いついたという。そして本来は静雄はちゃんと家に居て正臣からの誕生日おめメール見て外でて正臣と会うそんな流れだったのになぜ静雄がストカ状態www
マジ、プロットが意味をなさないwww




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